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ぶち殺すぞ!呉弁の怒号飛び交う、役所広司×松坂桃李×江口洋介「孤狼の血」現場レポ

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役所広司

役所広司

白石和彌が監督を務める「孤狼の血」の撮影に、映画ナタリーが密着した。

柚月裕子の小説を映画化した「孤狼の血」は、1988年、暴力団対策法成立以前の広島を舞台に、暴力団系列の金融会社社員の失踪事件を追う刑事たちの姿や、暴力団組織間の激しい抗争を描く作品。暴力団との癒着を噂される刑事・大上章吾を役所広司が、大上の部下・日岡秀一を松坂桃李が演じる。

本作の撮影は主に、舞台である呉原市のモデルとなった広島県呉市にて行われた。5月中旬のこの日は、役所と松坂のほか、大上と親しい尾谷組の若頭・一之瀬守孝役の江口洋介、クラブリコのママ・高木里佳子役の真木よう子、ライバル組織五十子会の組長・五十子正平役の石橋蓮司ら主要キャストが集結。クラブリコ店内で大上、日岡、一之瀬が飲んでいたところ、五十子たちと鉢合わせるという緊迫したシーンが撮影された。

とあるビルの一室を利用したセットにはグランドピアノが設置され、狭いスペースに大勢のホステス役エキストラやスタッフが入り乱れる。熱気がこもる中、カメラが回っている間はエアコンの電源も切らねばならないという過酷な撮影となった。原作者の柚月が「『仁義なき戦い』なくして生まれなかった」と語る本作だが、スーツを着た役所や江口が呉弁で凄味の効いた演技をするさまは、まさに「仁義なき戦い」を彷彿とさせる。大御所に囲まれ、傷だらけのメイクで現場に臨んだ松坂は、休憩中にセリフを暗唱するほか、スタッフや共演者と談笑する姿を見せていた。

中盤に現れた石橋は「こりゃ奇遇じゃのう、びっくりどっきりクリトリスじゃ」とふざけたセリフを発するも、現場の空気はぴんと張り詰める。そこから「なんじゃこのチンピラ、もう一遍言うてみい!」「ぶち殺すぞ、こら!」といった怒号が飛び交い、役者たちが椅子を蹴り上げ、胸ぐらにつかみかかるアクションが続いた。同場面について江口は「ここから戦いが始まるかのような、少しでも引いたら負けという緊迫感がありました。それぞれの組織が対立する縮図のようなシーンでした。『仁義なき戦い』や『ゴッドファーザー』といった名作で見られた人間の生き様が、白石監督の手腕で実に巧妙に、むしろ新鮮に映っていると思います」と述べる。

この日は、脚本家の池上純哉も現場見学に訪れた。ラストには原作と違う展開が待ち受けていることから「原作の一番のミステリー要素はなかなか映像化しにくいので、映画なりの謎解きを入れました。とにかく原作が書こうとしている大上と日岡の関係は外さないようにしました」と語り、「日本で一番悪い奴ら」に続きタッグを組んだ白石に関して「最初にロングプロットを出したときに『エロが足りない』と言われましたね(笑)」と明かした。

ここまでの現場を、役所は「楽しかったですね。白石監督も終盤に差し掛かるにつれて(撮影が)粘り強くなってきて、現場が深夜までかかる日も増えましたけど、ずっといい雰囲気だったし、俳優・スタッフ全員が『これはいい映画になるぞ』と手応えを強く感じられた現場だったんじゃないでしょうか」と振り返る。

「とにかく楽しかったです。これまでなかなか体験することのなかった“攻めた現場”でした。その日の現場がどういう感じで進むのか、想像のつかない日々でした」と語る松坂は、「白石監督とは2作目になりましたが、今回は前作よりもかなりがっつりご一緒することができ、『いやーやっぱり変態だなあ』と思いました(笑)。でもそんな白石監督の“攻める”感じが僕は大好きなので、非常に充実した撮影となりました」と満足気にコメント。江口も「完成が楽しみな現場となりました。シーンすべてが刺激的で『台本を超えているな』という手応えを感じていましたし、すべてのシーンがつながったら『仁義なき戦い』とはまた違った魅力を持ついい作品になると思います。混乱した時代の中で、自分の精神を貫き通す男たちの生き様がどう届くのか、今から興味深く思います」と自信をのぞかせた。

「孤狼の血」はすでにクランクアップしており、2018年春に全国公開予定だ。

(c)2018「孤狼の血」製作委員会

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