「謡かたり 隅田川」“梅若丸の母”を演じる尾上菊之助「情愛を一層深めていきたい」
2022年5月20日 15:52
7 ステージナタリー編集部
能 義太夫 歌舞伎 「謡かたり 隅田川」が、8月13日に東京・すみだトリフォニーホール 大ホールで上演される。これに先駆け、去る5月17日に取材会が行われた。
これは、“隅田川物”のゆかりの地で、「隅田川」を原作とした「謡かたり 隅田川」を、能楽小鼓方大倉流宗家の大倉源次郎、文楽太夫の豊竹咲太夫、そして歌舞伎俳優の尾上菊之助らが立ち上げるもの。公演は3部構成となり、1部では公演解説、2部では 「謡かたり 隅田川」の上演、3部ではアフタートークが行われる。
取材会には、源次郎、森田流笛方の杉信太朗、人形浄瑠璃文楽三味線の鶴澤燕三、菊之助といった出演者に加え、梅若丸の終焉の地とされ、梅若塚のある天台宗木母寺の阿部亮照住職が出席。源次郎は「『謡かたり 隅田川』は、野村幻雪(当時は四郎)さん、豊竹咲太夫さんがぜひ垣根を超えた作品を作りたいとのことで、セルリアンタワー能楽堂で初演され、それ以降、菊之助さんが演じる形式で上演されています」と本作について述べる。また初演版からの変化を「新しく菊之助さんが参加されて違う面が生まれたところ」だと話し、「菊之助さんは、歌舞伎という時間軸の中で、さまざまな経験をされてこの作品に取り組んでいらっしゃる。咲太夫さんは、新しい語りを取り入れ、確立し深化させようとされている。私たち能楽もそれに負けてなるものかと能の時間軸の中でできる限りの演奏を通して、この作品世界を創出していければと思います。それが現代の方たちにどう伝わるか、日本の伝統芸能が、現代の皆様の心の中に息づくような舞台が、すみだトリフォニーホールという新しい空間で臨むことで生まれるとうれしい」と語る。
信太朗は「もともと私は歌舞伎が好きで菊之助さんの大ファンでございまして、今回再演が叶いまして大変うれしく思っております」と語りつつ、「聴きどころは、終盤、菊之助さんが演じる母親が『南無阿弥陀仏』と唱えるところで笛を吹く場面があります。監修の野村幻雪先生から、『ここは、子供の声を表すようにやさしく吹きなさい』とご指導たまわりました。それを胸に、情景が浮かぶように吹かせていただきたい」とコメントした。
燕三は「この曲は全体として非常に緊張を強いられる出来上がりとなっていて、全く気の抜けないものになっています。最後に母と梅若丸の亡霊が出会うところで大盛り上がりとなり、その後にくる緊張の糸がものすごく、倒れそうになります(笑)。その緊張の糸を保ったまま、最後まで続いて幕となります。この全体を通した緊張感の盛り上がり、緊張感の極みで終わるというこの作品の最大の魅力を皆様に感じ取っていただければ、私たちの試みは成功したのではないかという気がしております」と語った。
梅若丸の母を演じる菊之助は「このお話は、平安時代に起きたことですが、母親の情愛は現代においても普遍的なものだと思います。京都から隅田川までたどり着いた道のりを子供に会いたいという思い1つで旅してきた母親の心情を思うと、舞台に立たせていただくという冷静な気持ちではいるのですが、私も実際に子供を持つ親の立場からすると、今から非常に心が痛みます。今回また皆様と舞台を作る上で、新しい発見を得たり、母親の情愛を一層深めていきたいと思っております」と思いを述べた。
能 義太夫 歌舞伎 「謡かたり 隅田川」
2022年8月13日(土)
東京都 すみだトリフォニーホール 大ホール
第1部 公演解説「すみだと梅若伝説」
第2部 能 義太夫 歌舞伎 謡かたり「隅田川」
監修:野村幻雪
作調:大倉源次郎
作曲:豊竹咲太夫、鶴澤燕三
振付:藤間勘十郎
出演:杉信太朗(笛)、大倉源次郎(小鼓)、柿原弘和(大鼓)、豊竹咲太夫(浄瑠璃)、鶴澤燕三(三味線)、鶴澤燕二郎(三味線)、尾上菊之助
第3部 アフタートーク
出演:大倉源次郎、豊竹咲太夫、尾上菊之助
聞き手:小玉祥子
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Sumida Triphony Hall @TriphonyHall
【取材会コメント掲載/ステージナタリー】
謡かたり「隅田川」公演
大倉源次郎、杉信太朗、鶴澤燕三、尾上菊之助、それぞれの立場で語ったコメントが、掲載されました! https://t.co/Kab69h7iz6