「秀山祭九月大歌舞伎」で中村歌六、中村吉右衛門との親子役に感慨

2

128

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 41 62
  • 25 シェア

「秀山祭九月大歌舞伎」が9月1日から25日まで東京・歌舞伎座で上演される。公演に先駆けて去る8月5日に東京都内にて取材会が行われ、中村吉右衛門中村歌六が取材に応じた。

左から中村歌六、中村吉右衛門。

左から中村歌六、中村吉右衛門。

大きなサイズで見る(全5件)

「秀山祭九月大歌舞伎」は、初代中村吉右衛門の芸を顕彰し、その当たり役を孫で養子の二代目吉右衛門が演じる毎年恒例の公演。今回は昼の部に「極付幡随長兵衛」「お祭り」「沼津」、夜の部に「寺子屋」「勧進帳」「松浦の太鼓」が上演され、吉右衛門は「沼津」で呉服屋十兵衛を、「寺子屋」で松王丸を勤める。また歌六は「沼津」で雲助平作、三世中村歌六の百回忌追善狂言として上演される「松浦の太鼓」では松浦鎮信を演じる。

左から中村歌六、中村吉右衛門。

左から中村歌六、中村吉右衛門。[拡大]

まず吉右衛門は「沼津」で歌六と親子役で共演することについて、「息はぴったり合っているので、あとはそれをいかに外すか。役者根性で、相手より優れているところをお見せしたいです(笑)」と冗談を飛ばすと、歌六は笑い混じりに「恐ろしい(笑)」と呟き、会場を和ませた。「『沼津』は親子の情を描いた作品」と語る歌六は、「義理と義理のせめぎ合いで、日本人の琴線に触れる部分が多いのではないでしょうか。前半部分ではお客様を楽しませるようなセリフの応酬が続き、その明るさによって後半の悲劇が際立ってくる。吉右衛門兄さんは、私が何をやってもドンと構えていてくださるので、いろいろと試してみたいと思っています」と吉右衛門に信頼を寄せつつ、抱負を述べる。

中村吉右衛門

中村吉右衛門[拡大]

続いて三世中村歌六に書き下ろされたという「松浦の太鼓」に話が及ぶと、吉右衛門は「松浦鎮信というお殿様は、おっとりしたところもあるけれど、気の短い怒りん坊。そして弱い者の味方をする、義侠心の持ち主でもあります。文献を読んだり周囲から話を聞く限り、この役は三世歌六への当て書きだったのではないでしょうか」と分析。「三世歌六が、ある俳優さんから『播磨屋、お前の持っている玉簪は偽物だろう』とからかわれたとき、その場でその玉簪を割って『ほら、本物だろう』と中身を見せたという逸話を聞いたことがあります」と三世歌六の性格を表すエピソードを披露したあと、横に座る歌六に視線をやり、「彼もその血を引いているわけですが……(笑)。三世歌六と同じく、義侠心がとても強いので、ぴったりな役だと思います」とコメントした。

また歌六は、「沼津」で歌六の甥である中村歌昇の長男・小川綜真が初お目見得することについて、「まだ3歳なので、毎日機嫌よく舞台に出てくれればと思います。私が初お目見得のときは、気が向かない日が多かったらしく、月のうち半分も出ていなかったみたいです。記録があるだけで、記憶はないのですが……」と話すと、吉右衛門も「私も初舞台の記憶がない。今もどんどん記憶がなくなっている。子供に返っております(笑)」と冗談めかした発言で、周囲を笑いで包む。さらに吉右衛門は「寺子屋」で共演する自身の孫・尾上丑之助の様子を記者から聞かれると、「先日一緒に食事に行ったとき、七夕の短冊に『(今回の役の)菅秀才ができますように』と書いてあって。ああよかったな、と思いましたね。今のところは気分が乗っているようです」と微笑みを浮かべた。

「秀山祭九月大歌舞伎」のチケットの一般販売は8月12日10:00にスタート。なお8月2日には、吉右衛門の自伝的エッセイ集「夢見鳥」が日本経済新聞出版社より発売された。

夢見鳥

中村吉右衛門「夢見鳥」
Amazon.co.jp

この記事の画像(全5件)

「秀山祭九月大歌舞伎」

2019年9月1日(日)~25日(水)
東京都 歌舞伎座

昼の部

「極付幡随長兵衛」

幡随院長兵衛:松本幸四郎
水野十郎左衛門:尾上松緑
渡辺綱九郎:中村松江
近藤登之助:坂東亀蔵
出尻清兵衛:中村歌昇
坂田公平:中村種之助
伊予守頼義:中村児太郎
舞台番新吉:中村吉之丞
慢容上人:片岡松之助
子分神田弥吉:大谷廣松
子分雷重五郎:大谷廣太郎
子分極楽十三:沢村宗之助
坂田金左衛門:松本錦吾
唐犬権兵衛:中村錦之助
長兵衛女房お時:中村雀右衛門

「お祭り」

鳶頭:中村梅玉
芸者:中村梅枝
芸者:中村魁春

「沼津」

呉服屋十兵衛:中村吉右衛門
平作娘お米:中村雀右衛門
池添孫八:中村錦之助
旅人夫:中村歌昇
旅人女房:中村種之助
旅人倅:小川綜真
茶屋娘おくる:中村米吉
荷持安兵衛:中村又五郎
雲助平作:中村歌六

夜の部

「寺子屋」

松王丸:中村吉右衛門
園生の前:中村福助
千代:尾上菊之助
戸浪:中村児太郎
涎くり与太郎:中村鷹之資
菅秀才:尾上丑之助
百姓吾作:嵐橘三郎
春藤玄蕃:中村又五郎
武部源蔵:松本幸四郎

「勧進帳」

武蔵坊弁慶:片岡仁左衛門(奇数日)/ 松本幸四郎(偶数日)
源義経:片岡孝太郎
亀井六郎:坂東亀蔵
片岡八郎:中村萬太郎
駿河次郎:片岡千之助
常陸坊海尊:松本錦吾
富樫左衛門:松本幸四郎(奇数日)/ 中村錦之助(偶数日)

「松浦の太鼓」

松浦鎮信:中村歌六
大高源吾:中村又五郎
鵜飼左司馬:中村歌昇
江川文太夫:中村種之助
渕部市右衛門:中村鷹之資
里見幾之亟:中村吉之丞
お縫:中村米吉
宝井其角:中村東蔵

全文を表示

読者の反応

  • 2

六条亭 @rokujoutei

【会見レポート】「秀山祭九月大歌舞伎」で中村歌六、中村吉右衛門との親子役に感慨 - ステージナタリー / https://t.co/gX82kyPeAw

コメントを読む(2件)

関連記事

中村吉右衛門のほかの記事

関連商品

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャのステージナタリー編集部が作成・配信しています。 中村吉右衛門 / 中村歌六 / 松本幸四郎 / 尾上松緑 / 中村錦之助 / 中村雀右衛門 / 中村梅玉 / 中村魁春 / 中村歌昇 / 中村種之助 の最新情報はリンク先をご覧ください。

ステージナタリーでは演劇・ダンス・ミュージカルなどの舞台芸術のニュースを毎日配信!上演情報や公演レポート、記者会見など舞台に関する幅広い情報をお届けします