雨降って地固まる「YON FES」初日、GENは「みんなの声が聞こえるだけでうれしい」
2023年4月9日 0:02
10 音楽ナタリー編集部
04 Limited Sazabysが主催する野外イベント「YON FES 2023」が4月8、9日に愛知県の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)で開催中。この記事では1日目公演のレポートを掲載する。
「YON FES」は2016年にスタートしたイベント。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年、2021年は開催が叶わなかったが、約3年ぶりに開催された「YON FES 2022」は、声出しなどの制限はあったものの大団円を迎えた。そして今年の公演では、出演アーティストの熱演に負けじとオーディエンスも歓声を上げたりクラウドサーフをしたりとエンジョイ。モリコロパークには昨年に増して解放感のあるムードが広がった。
今回の「YON FES」も昨年同様SKY STAGEとLAND STAGEの2ステージ制で行われ、SKY STAGEでのフォーリミによるにぎやかな開幕宣言でスタート。どんよりと立ち込める雲を吹き飛ばすように4人が場を温めたところで、SKY STAGEのトップバッター・キュウソネコカミが姿を見せた。2018年以来、約5年ぶりの出演となる彼らは、登場するなり栄養ドリンク「メガシャキ」のCMソング「MEGA SHAKE IT!」をエネルギッシュにプレイ。アッパーなキラーチューンで観客を覚醒させ、そのまま人気曲「ビビった」へつなげて切れ味抜群の激しいパフォーマンスを繰り広げた。ハイライトとなったのは「家」の演奏。ヤマサキセイヤ(Vo, G)がフォーリミのHIROKAZ(G)を呼び込んで自身のギターを託し、レアなコラボパフォーマンスで観客を沸かせた。「YON FES」初参加のSee You SmileはLAND STAGEに静かに登場し、Rui(Vo)が清涼感のある「Behind The Wall」をゆったりと歌い上げてウォームアップ。彼らはポップパンクナンバー「Do It」でギアを上げ、客席エリアにクラウドサーファーを続出させた。Ruiは「去年フォーリミのツアーに呼んでもらって一緒にライブして、ブチかましてこのステージまでやってきました。今日もみんなでブチかまして帰ろうぜ!」と意気込み、See You Smileはトロピカルなメロディの「Paradise」や爽快感のある「Superman」で観客を盛り上げた。
「YON FESの“4”は四月の“し”、幸せの“し”、何より椎木知仁の“し”! 俺の『YON FES』だよ! 俺の『YON FES』をくれ!」と冗談交じりに焚き付けたのは、「YON FES」皆勤賞のMy Hair is Bad。バンドは「遊ぼうぜ」としきりに煽りながら「カモフラージュ」「ディアウェンディ」などをパワフルに届けていく。一方で椎木知仁(G, Vo)が「ロックバンドはいつも上からなのにすげー優しい。ロックバンドは誰かを抱きしめてくれる」と穏やかに語ってから始まった「味方」では優しい歌声を響かせ、緩急付けたパフォーマンスを展開。さらに「大好きなものがいつまでもここにありますように」と「YON FES」への願いを込め「歓声をさがして」を演奏し、皆勤賞ならではの貫禄を見せた。Age Factoryは「SKY」で心地よく幕開け。序盤のMCで「ずっとみんなで歌えんかったから、歌いたいなと思って」と清水エイスケ(Vo, G)がこの日を待ち遠しく思っていたことを話していたが、バンドが「Dance all night my friends」や「GOLD」などをプレイすると、清水の期待通り大合唱とともにモッシュやクラウドサーフが発生し、LAND STAGEはライブハウスさながらの盛り上がりとなった。
この日の出演者の中で特に異彩を放っていたのはクリープハイプ。これまでに登場したパワフルさやラウドな音色が持ち味のバンドとは異なり、アカペラアレンジが印象的な「ナイトオンザプラネット」、妖しげなムード漂う「キケンナアソビ」などで、湿度の高い夜のような独自の世界観を提示した。尾崎世界観(Vo, G)は「『YON FES』はしっかり筋が通った出演アーティストの並びだと思う。だからこそ、クリープハイプがいることがちょっと変だなと思います。でもその中に入れてもらえることがうれしい」と喜んだ。その後、この時期にぴったりのナンバー「栞」の演奏が始まるとフォーリミのGEN(B, Vo)が勢いよくステージへ。尾崎とGENは息ぴったりにハイトーンボイスを響かせ、オーディエンスを大いに盛り上げた。続いて「YON FES」皆勤賞のSHANKは人気曲「Set the fire」やコロナ禍に作った「bright side」など、メロコアナンバーを連発。安定感のある演奏で客席エリアの温度をぐんぐん上昇させたところで、庵原将平(Vo, B)が「フォーリミありがとう。最高です毎年」と感謝を述べる。松崎兵太(G, Cho)は「今年も『BLAZE UP』(SHANK主催イベント)誘うんでよろしくお願いします!」とアピールし、庵原はさらりと口調で「こういうの癒着って言うんでみんな覚えといて」と言い添えて2組の関係性をつまびらかにした。
「YON FES」初出演となるウルフルズは、登場するなり「バンザイ~好きでよかった~」「ええねん」「笑えれば」と人気曲を連発し、観客をあっという間に自身の世界観へと引き込む。ジョンB(B)とサンコンJr.(Dr)による盤石のアンサンブルに乗せてトータス松本(Vo)が快活に歌い飛ばし、スキルフルな演奏で魅せる。トータス松本が「最高のロケーション!」と初の「YON FES」を味わったあとには、ファンキーな「続けるズのテーマ」や陽気なムード全開の「大阪ストラット」でソウルフルなボーカル、グルーヴィなバンドサウンドを響かせ、ラストナンバー「ガッツだぜ!!」をプレイ。人気曲の連投でSKY STAGEを盛り上げた。同じく「YON FES」初出演となったFOMAREは、終始喜びを炸裂させながらのアクトに。性急なツービートに乗せた「Frozen」でパフォーマンスをスタートさせるとオーディエンスも一気にヒートアップ。「愛する人」ではアマダシンスケ(B, Vo)がフロアにマイクを向け、大合唱が広がった。さらにFOMAREは物足りないとばかりに、最後にフォーリミの「monolith」をカバーし、主催者へのリスペクトも伝えた。
雲の切れ間から青空が覗いたかと思えば次の瞬間には雨粒が降り注ぐ、気まぐれな空模様のもとSKY STAGEに歩みを進めたのはSUPER BEAVER。彼らは「証明」やライブで初披露となる、映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-」の主題歌「グラデーション」などを披露し、人情味あふれる熱いパフォーマンスと言葉で会場の一体感を高めた。「YON FES」初参加のKUZIRAは、眩しいほどの西日が照らすLAND STAGEで、このフェスにかける気概を感じさせる演奏やMCを展開。メロディックパンク色全開の「Backward」で観客のテンションを引き上げたあと、熊野和也(B, Vo)はフォーリミについて「対バンするまでは人柄を知らなかったんですけど、本当にお兄ちゃんみたい。友達も先輩も後輩も大事にしていて、俺たちもそういうバンドになりたいと思いました」と語り、末武竜之介(G, Vo)は「“0.1 Limited Sazabys”とか言われたこともあるけどさ、地道にやってきたら先輩たちが認めてくれるってことを証明したと思います」と笑顔を浮かべた。そして末武が「次の曲はフォーリミに捧げます! 海を泳ぐKUZIRA!」と叫び、3人はフォーリミの「swim」をカバー。末武はキーが高く男性には歌いこなすのが難しいこの曲を難なく歌い上げた。
トリの04 Limited Sazabysは序盤から「Every」「Keep going」「My HERO」とツービートの楽曲群を続け、「YON FES」をさらに勢い付ける。盛り上がるオーディエンスを前に、GENは「ただいま! 『YON FES』が帰ってきました! みんなの声が聞こえるだけでうれしい」と喜びを噛み締めた。また「Galapagos」では、去年モリコロパーク内にジブリパークが開園したことにちなんで、メンバーが順にスタジオジブリ作品のキャラクターのモノマネをする一幕も。この日1日を振り返ったGENは「最近、いろいろ悲しいお別れがあったんですけど、そのたびに何度だって音楽に救われています」と思いを吐露。続けて「未来は不確かだけど、音楽というものがすごい力を与えることは確かなので、少しでも皆さんの荷物を軽くすることができたら」と観客へ語りかけ、“フォーリミ的「笑えれば」”と紹介して「Honey」を温かく届けた。この日、開幕宣言時も自身のライブのMCでも「あの頃に戻るのではなく、新しく作ろう」という意志を示していたフォーリミ。アンコールには「立ち上がり 何度も 変われる 進める」と歌う「Squall」を選曲し、コロナ禍を経て新しく生まれ変わろうとする「YON FES」の初日を締めくくった。
撮影:ヤオタケシ / 日吉"JP"純平 / ヤマダマサヒロ / 藤井拓 / かい
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