DEZERT初の日本武道館ワンマンライブ「DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN『君の心臓を触る』」がいよいよ1カ月半後に迫ってきた。
DEZERTは昨年9月に開催したLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演で、満員の観客を前に日本武道館でワンマンライブを行うことを告知。今年1月にはメジャーデビューも果たし、その後は精力的なライブ活動を通して経験を積み上げてきた。
バンドにとって一世一代の大舞台を前に、音楽ナタリーではDEZERTの要であるSORA(Dr)の提案で、彼が敬愛してやまない生形真一(ELLEGARDEN、Nothing's Carved In Stone)とのクロストークの場をセッティング。2人の関係が始まった経緯、それぞれのバンドとの向き合い方、Nothing's Carved In Stoneとして武道館のステージに2回立っている生形からのアドバイスなど、さまざまなことについて語り合ってもらった。
取材・文 / 樋口靖幸(音楽と人)
公演情報
DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」
2024年12月27日(金)東京都 日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
プレイガイド先行受付
受付期間:2024年11月13日(水)12:00~11月19日(火)23:00
生形来訪に楽屋で千秋と大騒ぎ
──この取材はSORAさん自ら生形さんにお願いしたそうですね。
SORA ウブさん(生形)には昔からすごくよくしてもらってるんですけど、武道館に向けて力をお借りしたいと思って。「ちょっと生意気なお願いをしてもいいっすか?」みたいな(笑)。
生形真一 SORAとは年に何回か会うような関係で。そのたびにバンドの話とか聞いたりして。初めて会ったのはいつだっけ?
SORA だいぶ前ですね。コロナ禍より全然前です。
──そもそもこの2人がつながっていることに驚く人が多いと思うんですが。
生形 もともとは共通の知人がいてそこからつながったんですけど、それより前にSORAのことを認識したのは武道館のイベント(マーヴェリック主催のイベント「JACK IN THE BOX 2018~LAST BUDOKAN~」)。逹瑯くん(MUCC / Vo)が企画したTHE YELLOW MONKEYのカバーバンドに俺が参加したときで。同じ楽屋にいたよね?
SORA いました。
生形 背がデカくて髪立ててるヤツがいるな、みたいな。誰だろう?と思ってたら、DEZERTっていうバンドのドラマーだと知って。それが初対面。で、その次の年にDEZERTのライブを観に行かせてもらったんですよ。
SORA あれ、マジでびっくりしました。その共通の知人がウブさんを連れてきたんです。その人は、俺も千秋もELLEGARDENが大好きなのを知ってるんですけど、あえてウブさんを連れてくることは言わず。
生形 ゲスト2名でね。
SORA 「誰ですか?」って聞いても「いや、別に」とか言うから「誰連れてくるんだろう」と思ってたんですけど、ライブ終わったらその人とウブさんの写真が送られてきて。楽屋で千秋と大騒ぎですよ。
生形 その日は楽屋には寄らず、すぐ帰ったんです。俺は武道館でSORAのことを認識してたし、共通の知人に「DEZERTのメンバーがエルレ好きなんだけど、一緒に行かない?」って誘われたんで、じゃあ行ってみようかなと。DEZERTがどんなバンドかまったく知らず、あえてその状態のまま観に行きましたね。
SORAを踏みとどまらせた生形の言葉
──逹瑯さんとのセッションもそうですが、生形さんはV系界隈の人とも分け隔てない交友関係をお持ちですよね。
生形 分け隔てはないですね。コロナ禍にはLUNA SEAの配信フェスに出させてもらったり、(有村)竜太朗さん(Plastic Tree)は地元の先輩で昔からお世話になってますから。
SORA 知り合いは俺がエルレもナッシングスも好きなのを知ってて、あえて言わないで連れて来て驚かせたという。
──そのとき観たDEZERTのライブはどうでしたか?
生形 すごい世界観を持ってるバンドだなって。俺らとは真逆というか、自分たちの世界を完全に作り上げていて。例えばヴィジュアル系の中でも俺らとカラーが似てるラフな感じのバンドもいるけど、DEZERTはちゃんと独自の世界観を持ってて、それがよかったですね。
──イベントとかフェスで絡むようなバンドじゃないですよね。
生形 そこはやっぱり界隈が違うから。でもそういうバンドの後輩とここまで仲よくなったのは初めてかもしれない。
──今みたいな関係になったきっかけは?
生形 やっぱり人柄ですね。LINEで「相談があるんです」って連絡が来て、それでいろんな話をするようになったんですけど、すごく真面目だし、いつもバンドのこと考えていて。あと男らしいというか、まっすぐなところもいいですよね。例えば俺が「ライブ来る?」ってエルレのライブに何回か誘ってるんですけど、どうしても自分でチケットを買って行きたいからって、まだ一度も観に来てないんですよ(笑)。
SORA ELLEGARDENの活動休止の新木場公演のチケット取れなくて、音漏れを聞きに行った17歳の頃の自分を裏切ってしまう気がして(笑)。申し訳ないです。
──相談というのは、やっぱりバンドにまつわる悩みごとですか?
SORA そうですね。
生形 「ちょっと話したいことがあるんですけど」みたいな連絡が来て、アドバイスじゃないけど、俺の経験してきたことで話せることがあれば話す感じですね。
──ちなみにSORAさんは、普段からいろんな先輩にかわいがってもらってますよね。
SORA はい、そうですね。ありがたいです。
──そういう先輩がたくさんいる中で、あえて生形さんにバンドのことを相談するのはどうしてなんですか?
SORA それにはきっかけがあって……世間話のノリでバンドの近況を話したことがあったんです。それがちょっとバンドに対する愚痴みたいな内容だったんですけど、それをボソっと言ったら、そこでウブさんから返ってきた言葉がすごく響いた。そのあと俺にバンドで悩みまくる時期が来るんですけど……メンバー、というか千秋と意見が合わなくて、どうしていいかわかんなくて。これはもうウブさんに話を聞いてもらうしかないと。
──まずは生形さんに相談したと。
SORA や、最初はSATOちさん(MUCCの元ドラマー。2021年に脱退)に相談したんです。もっといろんな人に話を聞いてもらいたくて、ウブさんのことが頭に浮かんだんです。
生形 最初に連絡が来たときは「何かな? バンドがうまくいってないのかな?」とは思った。そのときにSORAに話したことはよく覚えてますよ。まず、SORAがすごく暗い顔をして「バンドのことで悩んでます」と。話を聞くと、メンバーと自分の意見がとにかく合わない、それでメンバーのことを悪く思ったり、自分がこのままDEZERTをやってていいのか悩んでしまってると言い出した。
SORA 辞めることも考えるぐらい悩んでました。
生形 で、そのときは「メンバーと意見がぶつかるのは、4人がそれぞれのスタンスで一生懸命考えて、バンドをどうにかして成功させようと思ってるからじゃない? それぐらいみんなバンドのことを考えてるってことだと思う。だから意見が食い違っても思いは一緒なんじゃないかな」みたいなことを言ったと思う。
SORA うん、そうです。あと、「みんながバンドを守ろうとしてるんだと思う」とおっしゃっていて。ウブさんにそう言われたとき、すごく心が楽になったんですね。で、次の日スタジオでメンバーと顔を合わせて「ウブさんの言う通りだな」と思えた。みんなバンドを守りたくて、いろんな意見を持ってる。じゃあ俺と同じなんだなと。もしあのときウブさんの言葉がなかったら、耐えられなくて本当にバンドを辞めてたかもしれない。そのぐらい救われました。で、ついこないだ「実はあの頃こんなことで悩んでて、人に相談したんだよ」と当時のことを千秋に話したら「そうだったんだ~」って。ただ、その相談した相手がウブさんだってことは言ってないです(笑)。
次のページ »
みんな根本は同じ、バンドのことを思ってる