Reolの新作EP「秘色録」が11月13日にリリースされた。「秘色録」にはテレビアニメ「青の祓魔師 雪ノ果篇」のために書き下ろされた新曲「RE RESCUE」を含む、Reolが「泥臭くときに軽快に、それぞれがそれぞれに秘めたる“青さ”を追究してできあがった」と語る楽曲が収められている。
入魂の1作のリリースを記念して、音楽ナタリーではReolと親交のあるLiSAとの対談を企画。お互いを“同志”と認め合う2人に出会いから、仲を深めることになったきっかけ、アーティストとして共鳴することまでさまざまな話題を語り尽くしてもらった。1万字を超えるボリュームの対談を通して、2人の相思相愛ぶりを感じ取ってほしい。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 横山マサト
LiSAは“イマジナリーReol”に会っていた?
──お二人が出会ったのはいつ頃ですか?
Reol 確か2019年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」のバックヤードです。私はBUZZ STAGEでLiSAさんがPARK STAGEだったので、観に行ったんですよ。お昼直後でめっちゃカンカン照りの中、すごいパフォーマンスをしてらっしゃって。
LiSA あったね。
Reol そのときは面識がなかったので「これがLiSAかあ」と。で、LiSAさんがバックヤードに戻ってきたときに「Reolちゃん、写真撮ろ~」って話しかけてくれたんですよ。
LiSA 私はReolというアーティストのことはすでに知っていて。一方的にずっと見ていたから、すでに会ったことがある気になっていたんだろうね。だから、最初から距離が近かったんだと思う(笑)。
Reol “イマジナリーReol”と会ってたんですね(笑)。私はあのときフェスも初出演だったし、対バンもほぼしてこなかったので、現場に知り合いがまったくいなかったんです。今でこそネットカルチャーのアーティストがフェスに出演することも増えたけど、あの頃はほぼ皆無で。しかも被害妄想もすごかったので、「周りからどう思われているんだろうな?」とバリアを張り巡らせていたんですけど、それを解きほぐしてくれたのがLiSAさんでした。……あ、でもそれが2019年だとしたら、その年の4月にLiSAさんの横浜アリーナ公演に行ってますね。そのときは人見知りを発揮しまくって、「ああ、LiSAだ……」って恐れ多すぎてあんまりしゃべれなくて。
LiSA ああ、そうだ! 横浜アリーナ2DAYSに来てくれたんだよね。だからロッキンで話しかけたんだよ。私は最初、「サイサキ」のミュージックビデオを観たのをきっかけにReolちゃんのことを知って、そこからREOL名義で活動していた頃までさかのぼって聴いて。熱量やエネルギーが自分とすごく似ていて、ちゃんと覚悟を持って音楽をやっているなと思ったの。そうこうしていたら、その本人が横アリに来てくれて。
Reol 私はニコニコで配信されていたじんさんのリリイベで、カゲプロ(カゲロウプロジェクト)の「夜咄ディセイブ」で激しく踊りながら歌っているLiSAさんを観たことが出会いで。そこから「Launcher」(2015年3月発売のLiSAの3rdアルバム)で初めてちゃんと曲を聴いたのかな。だからライブのときやフェスのときに、自分のことを認識して話してくれるのが最初は不思議だったし、コロナ禍前ぐらいまではあんまり話しかけられなくて。
LiSA テレビ局でばったり会ったこともあったよね。
Reol 番組は別だったんですけど、テレビ局での楽屋がLiSAさんとUNISON SQUARE GARDENと隣同士で、そのときに私の楽屋前の廊下で田淵(智也)さんとLiSAさんがしゃべっていて(笑)。そのときも、私がトイレに行くときにLiSAさんが「あ、Reolちゃんじゃん~」って言ってくれたんですよ。
LiSA しかも、また「写真撮ろ~」って言って(笑)。
Reol そうそう(笑)。それがあってから「こちらから話かけてもいいのかもしれない」みたいな空気を若干感じ始めて、「遊びましょうよ!」と言えたのが2020年の暮れくらい。確か、最初はうちに遊びに来てくれたんですよね。
LiSA その日初めて2人でちゃんとしゃべったのに、めちゃめちゃ長い時間一緒にいて。
Reol お昼に来て、日付が変わってもまだLiSAさんがいるみたいな(笑)。
LiSA ごはんも振る舞ってもらって(笑)。
Reol 一緒にスーパーに買いものにも行きましたし。とても1回目とは思えない距離の詰め方をしましたね。で、そのときに今のLiSAに至るまでをほぼすべて話してもらって、「肝座ってんなあ。だから先頭を張れるんだよな。なるほど」と実感しました。
LiSA 私もReolちゃんの音楽にぼんやりと感じていた覚悟とか、そこに込める魂みたいなものの根底の部分に触れた気がして、いろいろしっくりきました。
LiSAさん、ずっと怒ってません?
──そういう会話を通じて、お互いの共通点やシンパシーを感じる点、逆にここは違うんだなという部分も認識できたのでしょうか。
LiSA 音楽性とか表現方法はちょっと違うし、育ちや背景も全然違うけど、音楽として表現している根底のところや温度感、覚悟は同じ。自分が好きになった理由は間違ってなかったと思ったし、自分が好きなものがこれでよかったと再認識できて自信を持たせてもらったところもあったから、違うという感覚はあまりなかったかも。
Reol 私は変な感覚かもしれないですけど、ようやく同志に会えたみたいな感じがしました。
LiSA でしょ?(笑)
Reol 通ってきたカルチャーは全然違っているけど、似ている景色をずっと見ていたみたいな感じ? その答え合わせができたような気がして、その後も定期的に会って話すようなベストフレンドになれました。リスナーとして聴いていた頃から感じていたことですけど、私がLiSAさんを好きだなと思っていたところは、怒っているところ。
LiSA えっ?(笑)
Reol その怒りの対象は世の中だったり、現状の自分だったりもする。とにかく怒りのボルテージがすごく高くて、それがピュアな状態で歌詞に、歌に乗っている気がして。慈愛に満ちた歌詞も誰かを背中を押して励ますセンテンスも、「絶対にこれで終わらせないからな!」っていう裏付けされた怒りのパワーを感じるんです。それって、活動を続けていくうちにどんどん失われてしまうものだと思うんですよ。でも、LiSAさんはずっとそれを持ち続けていて、だからこそすごく好きで尊敬できるし、自分もこうあらねばと思う部分ですね。怒ってません?
LiSA あははは! 怒ってるけど、そこは私がReolちゃんに感じていることにもちょっと似ていて。私は怒っているというより満足していないの。自分にもそうだし周りにもそうだし、もっといいものを求めるために戦い続けているし、そのために歌っている。そういうことが好きなんだと思う。それってReolちゃんも同じじゃない? 私はそこが似ているなと感じていて、すごく誇らしいんです。
Reol うれしい。
長野と岐阜のヤンキーが東京で出会った!?
──そういう感情を表現として届けるときのステージングだったり、ライブにおける演出や見せ方に関するこだわりも、お二人は強い印象があって。
LiSA そこは直結しますもんね。だってReolちゃん、あれだけ動いてあれだけ歌ってあれだけ叫んで……こないだの武道館、29曲だっけ? 3時間ぐらいやってたでしょ?(参照:Reolが一世一代の初武道館ワンマンで最高のライブ更新、一夜限りREOL復活にファン驚喜)
Reol そうですね(笑)。
LiSA ヤバイですよ。
Reol その言葉をそのままLiSAさんにお返しします(笑)。
LiSA いやいや(笑)。
Reol ちょうど先日、LiSAさんの横浜アリーナ公演を観てきたばかりなんですけど、私の気持ちは「ありがたい」のひと言に尽きます。ファンもいろんな感情を持ちながら、ステージ上にいるLiSAさんを観ていたと思うけど、これだけの頻度で10数年間ステージに立ってくれることはマジ感謝だなと思うんですよ……ちょっとヤンキーマインドみたいですけど(笑)。
──尊さがありますよね。
Reol そうそう。だって、10数年間という時をずっと観続けているのってLiSAさんだけなんですよ。リスナーって流動的だから、昔ライブに来ていた人でもちょっとライフスタイルが変わって一時抜けてまた戻ってくることもあるかもしれない。でも、LiSAさんがここまでひたむきに音楽を続けて、「もういいかな」と思ってマイクを置くことがなかったから、また戻ってくることができるわけで。そこに震えたというか、初めてライブを観て泣いちゃいましたから。
LiSA でも、それはReolちゃんも一緒じゃない? 形を変えても仲間が変わっていっても、いろんなものを背負い続けてずっと走り続けてくれるReolちゃんがいて、それを全部連れて武道館に行ったじゃん。私は直接会場に伺えなくて、あとから映像で観させてもらったんですけど、いろいろてんこ盛りで、Reolちゃんの覚悟が全部詰まってた。全員連れていくって思ってたでしょ?
Reol そうですね。私の中にはデビューした当時の、全然満足していない自分が今も生きていて。これはアーティストあるあるな気がするんですけど、常に自分の曲に対してベストアクトをやってあげたいんです。いろんな状況がそれを許さなかったりしても、私はマイクを通して歌だけでもベストアクトにしようという気概でやっていて。「あのときの自分、報われてほしい」みたいな気持ちが常にある。だから歌うことをやめられないんです。
──今のお話、昔のLiSAさんとイメージが重なりました。
LiSA あははは! わかります(笑)。
──LiSAさんもそういう思いをずっと抱えながら、孤軍奮闘してきたじゃないですか。そんなLiSAさんの背中を、ReolさんはReolさんらしい形で追って、同じところを見て戦っているんだなと感じました。
LiSA そういう意味では、私はReolちゃんって全然後輩な感じがしなくて。
Reol 本当ですか?
LiSA 別の場所から同じ頂上を目指して登ってきた友達というか。長野と岐阜のヤンキーが東京で出会った感じ?
Reol あははは! 私、ヤンキーじゃないですよ!(笑)
LiSA じゃあ地区予選を勝ち抜いて、全国大会に集まったような感じかな(笑)。
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人とだから見られる夢がある