岩井俊二を「式日」主演に抜擢した理由は?庵野秀明・鈴木敏夫が制作当時を振り返る

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映画「式日」の特別上映が本日12月19日に東京・TOHOシネマズ 新宿で開催。トークイベントに主演の岩井俊二、監督・脚本を担った庵野秀明、プロデューサーを務めた鈴木敏夫が登壇した。

映画「式日」トークイベントの様子。左から庵野秀明、岩井俊二、鈴木敏夫

映画「式日」トークイベントの様子。左から庵野秀明、岩井俊二、鈴木敏夫

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岩井の映画活動30周年を記念したレトロスペクティブ企画「IWAI SHUNJI The Film Works 30th Anniversary 1995-2025」の特別企画として行われた本イベント。2000年に公開された「式日」は庵野の故郷である山口県宇部市を舞台にした実写作品で、創作の意味を見失った映画監督・カントクが、孤独を抱え“誕生日の前日”を生き続ける女性と出会うことから物語が展開していく。岩井がカントク、原作を手がけた藤谷文子が“彼女”を演じた。

「式日」特別上映イベントの告知ビジュアル

「式日」特別上映イベントの告知ビジュアル [高画質で見る]

スタジオジブリの第2レーベルとして設立されたスタジオカジノの1作目である「式日」。鈴木は「確か僕の記憶だと、最初は大型の特撮映画を作る予定でした。いろいろやってるうちに変わっていって、最後に『式日』に落ち着いたんです」と回想する。庵野は「(大型な)特撮は作るのが大変そうで、実現しないのではという危惧がありました。現実的な規模の特撮映画にしようとしたら、ジブリで絶対的な権力を持っているMさんが反対して頓挫しちゃったんです(笑)。この映画ではお金を稼がなくてもいいということだったので、アート作品を企画することにして。そのとき藤谷文子の原作を読んで、これなら企画に当てはまると思いました」と振り返った。

鈴木敏夫

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「主役は監督業を経験した人にお願いしたかった」という庵野は、鈴木のアイデアをきっかけに岩井にオファーしたことを述懐。彼は「(岩井に)『ちょっと考えさせてくれ』と言われて、即答じゃなかったのでダメかもと思いました。でもスケジュール調整の問題だったようで、後日引き受けていただけました。僕の中では最初に会ったときに、この役は岩井さんじゃなければ、とピンときたんです」と語る。岩井が「庵野さんが自分で演じるという話もありましたよね?」と話を振ると、庵野は「それは岩井さんがダメだった場合の、最後の最後の手段です。実際に自分に起こったことを映画にしているのではと誤解されるのが嫌だったので」とコメント。また庵野は岩井をキャスティングした理由として「まずはビジュアルです。見た目がかっこいいから」と説明した。

庵野秀明

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鈴木は「脚本を読んで、正直びっくりしたのを覚えています。庵野は『虚実の“虚”を描き、“実”も少しある』と言っていたけど、僕は逆だと思ったんです」と述べる。この言葉を受け、庵野は「当時、僕は『エヴァンゲリオン』を経てとにかく嫌になっていたので、鈴木さんはその気持ちを(『式日』から)強く感じたのかな。僕の本心は松尾スズキのナレーションだけ。(自分の中で)ナレーションでは嘘をついちゃいけないというルールがあるんです。だから鈴木さんはだまされています」と発言し、笑いを誘った。

映画「式日」トークイベントの様子。左から庵野秀明、岩井俊二、鈴木敏夫

映画「式日」トークイベントの様子。左から庵野秀明、岩井俊二、鈴木敏夫 [高画質で見る]

撮影について岩井は「普段は監督をしているので、俳優として挑むと身軽に感じました。監督は(現場で)あっちからもこっちからもスタッフに対応するので」と思い返す。庵野は「ワンシーンだけ岩井さんが監督をしているところがありますよ」と切り出し、「小学生たちが横切るショットがあるのですが、僕は子供に演出しないで『好きなときに行っていいよ』と言っていた。そしたらうまくいかなくて、岩井さんが痺れを切らして子供たちに指示を出したんです)」とエピソードを披露。「そんなことありましたっけ」と笑う岩井に、庵野は「あそこだけ異質で岩井さんの映画っぽいんです。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』みたいな雰囲気になってます」と伝えた。

岩井俊二

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役者としての岩井を称賛しつつ、庵野は「ワンシーンだけ『チッ』と思ったところがあった」と打ち明ける。彼は「川べりを歩いている岩井さんを長回しで追っていたら、たばこの箱をポイっと捨てて。僕はゴミのポイ捨てがすごく嫌いなので、カットしました。あのシーンが短くなったのは岩井さんのおかげですよ」と観客を笑わせる。岩井は「カットがかかったら拾ったと思いますよ(笑)」と弁解。続けて岩井が「(式日は)『この映画のじゃまはするなよ』と自分に対し思いながら観ていました。演技で何かしようとは思っていませんでしたし」と話すと、庵野は「演技をしてるカットはたいてい切ってますから。素に近いところだけ紡いでいます」と断言した。

岩井俊二

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最後に鈴木は観客に向け「この『式日』を観れば庵野秀明の考えていることがよくわかる。秘密がわかります」と呼びかける。岩井は「僕にとっては、宇部の町すべてがこの映画であり、この映画が宇部そのもの。(撮影中は)静止した時間の中にいた1カ月でした。この空気を堪能してもらえたら」、庵野は「100人中3人に届けばいい、でもその3人の心に一生残る作品にしたいという思いで作りました。今日も10人くらいは『すごい』と思ってくれるかな」と口にした。

鈴木敏夫

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庵野秀明

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回顧上映「IWAI SHUNJI The Film Works 30th Anniversary 1995-2025」は、12月26日から2026年4月まで東京・TOHOシネマズ 日比谷ほかで開催。

岩井俊二の特集上映「IWAI SHUNJI The Film Works 30th Anniversary 1995–2025」メインビジュアル ©2001 LILY CHOU-CHOU PARTNERS

岩井俊二の特集上映「IWAI SHUNJI The Film Works 30th Anniversary 1995–2025」メインビジュアル ©2001 LILY CHOU-CHOU PARTNERS [高画質で見る]

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特集上映「IWAI SHUNJI The Film Works 30th Anniversary 1995-2025」特別予告映像

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THE___98TH @the___98th

@eiga_natalie よくできました

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