本作は、2023年にこの世を去った坂本の最後の3年半をたどるドキュメンタリー。坂本が目にしたもの、耳にした音を多様な形式で記録し続けた「日記」を軸に、遺族の全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレートを1つに束ね、その軌跡をたどっている。Yellow Magic Orchestra(YMO)などでともに活動した盟友・高橋幸宏との知られざる交流や、最後の作品となった未発表曲の制作過程など、「理想の音」を最後まで生み出そうと情熱を貫いた坂本の姿がスクリーンに刻まれた。生前坂本と親交のあった田中泯が日記の朗読を担当している。
坂本と何度か会ったことがあるというコムアイは「数年前の冬に表参道でライブがあって、そのときちょうど仲間の1人が坂本さんとやり取りをしていたんです。病気の治療がつらくて、とにかく体が痛いと聞いて。みんなで歌を歌って贈ろうよということになって、夜の屋上で歌いました」と回想。本作の感想に話が及ぶと「亡くなる場面はすごく泣いてしまいました。でも映画を観終わって残ったのは生きるってこんなに楽しいことなんだという感覚でした。と同時に、“生きるのが楽しい”ということには条件もあると感じたんです。それはさぼっちゃいけないということ。坂本さんは生きるってことを1秒たりとも休まない人。みんな生きていると、“今、生きているな”ってものすごく熱量高く感じることがあると思うんですが、そういう“生きる”を坂本さんはまったくさぼらない。音楽に献身的で、作るだけでなく、誰かと分かち合ったり、残したり、そういうことをなんであんなにできたんだろうと思ったら、そういうことだったんだなと思いました」と語る。そして「坂本さんは亡くなる直前まで、心を動かしていた。雨とか雲とか、満月とかいろんなものを見逃さないで感動してましたよね。私ももっと知的好奇心を働かせて、感動して生きてやるぞ!って気持ちになりました」と伝えた。
これを受けた大森は「おそらく、この映画を観終わったとき、どう言葉にしていいんだろうか?と思われる方もいると思うんです。あえて言葉にしようとしたときに、元気になったというのがコムアイさんらしくて新鮮です。いろんな方にいろんな感想を与えられる映画なんだと改めて思いました」とほほえむ。司会を務めた奥浜レイラは「この映画を前にすると、どんな言葉を持ってきても偽物みたいでなんにも言えなくなる。でも坂本さんの生き方はちゃんと継承していかなければいけないもの。何かしらの言葉で伝えていかなきゃいけないと思います」と言葉に力を込めた。
坂本の日記すべてを日にちも言えるほど何度も読み込んだという大森。坂本から受けた影響を問われると「こういう場でお話しさせていただいていることも、大きなギフトだと思っています。自分が日記を書くときは、起きたことを淡々と書いていくタイプなんですが、坂本さんの日記を読みながら、感情も書かないと、飛んでいくなと。忘れないと思っていたことも、忘れていくものだと思いました」と言い、「僕は坂本さんにお会いしたことがないけれど、いろんな方の協力を得て、後ろ姿から、少し顔を見ようとこの2年半努力しました。こういう形で携わらせていただいて、1人の人を知ることの難しさと尊さを受け取りました」と言及する。
コムアイも坂本から受けた影響に触れ、「坂本さんが亡くなったあと、神宮外苑の樹林伐採に反対する集まりに行ったんです。坂本さんはそこにいなくても、坂本さんが率いて人が集まってきているように感じました。坂本さんは1人の世界を持っている方だけど、それと同時に、人と分かち合おうとする感覚、欲望なのかな?も強いと思っていて。それを自分も意識していきたいです」と言及する。奥浜も「坂本さんは被災地支援や、平和活動などにも強い影響力を持っていて、そこにいなくても、意思みたいなものは引き継がれていると感じます」とコメント。大森は「僕が病気に直面したなら、もうちょっとエゴイスティックになっちゃう気もしますし、おいしいものを食べて静かに暮らしたいと思うかもしれない。坂本さんは社会に関わり続けた。映画では事実だけを乗せるよう意識しました。どう思っていたかを深く掘るよりも起きたことだけで、観ている人に感じ取っていただけると思ったんです」と語った。
最後にコムアイは「この映画を通して、坂本さんと向き合えました。この世にはもっと感動できて、楽しめることが実はたくさんあって、心を開く、感覚を開くことを教えてもらえました。この作品はこれからの生き方について考えるきっかけになる映画だと思うので、大事な人に広めていただけたらうれしいです」と呼びかける。そして大森は「(坂本から)自分が受け取ったものを今生きている方、そしてその先の世代にも伝えていくんだという気持ちでこの2年半駆け抜けてきました。映画の性質的に、言葉で伝えるのは難しいと思いつつ、皆さんがこの映画を誰かに橋渡ししてくださると幸いです」と口にした。
「Ryuichi Sakamoto: Diaries」は、11月28日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。
映画「Ryuichi Sakamoto: Diaries」本予告
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11/28公開の映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』試写会にご招待頂きました。
坂本教授最後の3年半の日記と映像によるドキュメントなので全員が結末を知っているけど、日記の何気ない言葉や残された映像のパーツが繋がる悲しいだけじゃない映画でした、ぜひ。
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