映画「
「宝島」は、戦後アメリカ統治下の沖縄で、米軍基地から物資を奪い住民に分け与えた“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちを描く物語。過渡期を全力で駆け抜けたグスクを
沖縄出身のカビラは、本作に声で出演した縁で登壇。劇中でも描かれるコザ暴動が起きた当時、沖縄に在住していたことを振り返って「両親は『いずれこういうことが起きるかもしれない』と感じていたようです。私もこの映画を観ながら涙が出ました。新しい世代の皆さん、心に刻んでくださいね」と力を込めた。
続いて登壇した大友は「これだけの人数と向き合うのは初めてかもしれません」と驚き、真藤も「映画はすごかったでしょ? 僕も本当にすごいものを観たなと思いました」と続ける。当日は妻夫木からビデオメッセージも寄せられ、「この映画を通して僕は、過去は変えられないけど未来は変えられると思いました。1人ひとりの思いが、希望ある未来を作っていくんだと、僕は信じています。私たちは、先人たちの思いとともに今を生きています。今があるということは当たり前ではありません。なんのために生きていくのか、そして未来に何を託していくのか。そういったことを皆さんに感じていただけていたらうれしいです」というメッセージに学生たちは真剣なまなざしで耳を傾けた。
小説家になる前、学生時代から自主映画を撮っていた真藤は、コザ暴動のシーンの撮影もスタジオで見学したという。完成した本作について「感無量でした」と述べ、「基地問題というセンシティブな物語ですが、見事に映像化していただいて。コザ暴動も飛行機事故も、まったく逃げずに描き切った。本当にすごい映画です」と絶賛する。大友が「僕も含め、メインキャストも沖縄の人間じゃない。当時の沖縄を体験した人たちの声に耳を傾けて、嘘をつかないように精いっぱいやった」と覚悟を口にすると、真藤も「僕も沖縄にはルーツがない。そこで戦果アギヤーという義賊に自分を仮託して、沖縄のリアリティに満ちた話を書き上げました」と説明。さらに真藤は「もしグスクやヤマコが生きていたら、今は80歳か90歳。でも戦争を語り継ぐのは、当事者に頼りすぎるのではなく……僕の場合は小説で。我々が未来へ引き継いでいかなければいけない」と続けた。
学生たちからの質疑応答では「皆さんにとって沖縄とは?」という問いに対し、真藤は「青春と革命の島」と回答。「本作はサンフランシスコ講和条約から沖縄返還までの20年間を描いています。そこには本当に熱い時代があり、我々が忘れてしまった“青春”が凝縮されている。ある種、戦後日本のあるべき姿がそこにあるのではないかと思います」と語る。その後も「コザ暴動のシーンで、本物の車がひっくり返されていたので、リアリティがあってよかった」「俳優さんの迫真の演技、大友監督のこだわりから、教科書だけじゃ学べない沖縄に対する歴史の重みを強く感じられました」などの感想が続々と寄せられ、その言葉に大友は笑顔を見せた。
最後に真藤は「僕は世の中を変えるつもりで『宝島』を書きました。でも実際に世の中を変え、壁を動かすのは皆さんの世代。自分の大事な“宝”を探すように人生を送ってください」とエールを送る。大友は「2度の撮影中断を経て、奇跡的に完成した映画です。あきらめずに一生懸命やると誰かが光を当ててくれることもあると思います。皆さん『宝島』を観て、グスクやヤマコやレイに自分を投影し、当事者になっていただけたら」と学生たちに語りかけた。
「宝島」は9月19日より全国ロードショー。
映画「宝島」本予告
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【イベントレポート】映画「宝島」原作者・真藤順丈が母校へ、監督・大友啓史と学生たちに未来を託す
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主演・妻夫木聡からのメッセージも
「過去は変えられないけど、1人ひとりの思いが、希望ある未来を作っていくと信じています」
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