戦後、日本に戻れなかった民間人抑留者の物語が2本同時公開

映画「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」が、12月22日より東京・アップリンク吉祥寺ほか全国で2作品同時公開されることがわかった。

第2次世界大戦後、戦争捕虜としてシベリア（旧ソ連全土）とモンゴルに57万5000人が抑留され、5万5000人以上の人が死去した。だが樺太などの地域に残った民間人で、戦争捕虜としてではなく“いわれのない罪”でソ連当局に逮捕され、強制労働を強いられる政治犯収容所や広大なソ連の僻地で行方不明になった人は2000人以上存在すると言われる。その中でカザフスタンには約20名が送られ、ソ連崩壊まで生き残ったのはわずか4人だった。

「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」は、生還した4人のうち阿彦哲郎と三浦正雄の物語を映画化したもの。「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」は、旧ソ連諸国であったカザフスタンが“日本人の側に立って”製作した作品。ヨシフ・スターリンの政治犯強制収容所に放り込まれた阿彦が「日本に帰って家族に会いたい」という思いを胸に生き抜くさまが描かれる。キックボクサーの小笠原瑛作が阿彦役で映画初主演を果たし、監督は佐野伸寿、エルダル・カバーロフ、アリヤ・ウバリジャノバが務めた。

「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」では終戦直後、疎開していた北海道から家族を探しに行った先の樺太で逮捕され、14歳でカザフスタンに流刑となり、53年もの間をその地で過ごした三浦の子供時代がつづられる。佐野史将が三浦を演じた。監督、脚本、製作総指揮は佐野伸寿。なお阿彦は2020年6月にカザフスタンで、三浦は2022年1月に北海道で死去している。