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第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で金熊賞を受賞した本作は、パリ・セーヌ川に浮かぶデイケアセンターの船アダマンに集う人々を追ったドキュメンタリー。アダマン号では精神疾患のある人々を無料で迎え入れ、創造的な活動を通じて社会と再びつながりを持てるようサポートしている。配給会社ロングライドが日仏共同製作として参加した。
会見が始まるとフィリベールは「東京にいることを心からうれしく思います。今回の日本滞在は2日と半日。本当に短いけれど、作品をお届けできることをうれしく思います」と挨拶。続けて「精神医療を扱うのは、『すべての些細な事柄』以来の2作目です。実はこの作品は3部作の第1弾。このあと第2弾、第3弾とパリの精神医療について紹介していくつもりです」と明かした。
フランスでは公開初日に4万2000人を動員した本作。この吉報にフィリベールは「まだ公開からあまり日が経っていないので今後の行く末を想像するのは早計な気もしますが、ドキュメンタリーでこの動員数は素晴らしい幸先だと思っています。フランスでは新作が週に20本ほど公開されていて、競争が激しいのです」と喜びを伝えた。
ベルリン国際映画祭での受賞に関して彼は、「コンペティションに選出されただけでもご褒美だと思っていました。最高賞は、私自身の喜びとともに、ドキュメンタリーのジャンルにとって、喜ばしいことです。また商業的にヒットしにくいジャンルで、職人的な映画の手法が認められたことがうれしいです」と語る。
会見には、ロングライドの代表・波多野文郎も参加。波多野は「日本が外国語映画に出資するなど、コラボレーションすることは重要だと思います。反対に海外の資本が日本に入ってきて盛り上げるということも大切だと感じています」と見解を述べた。
「なぜ精神医療に関心があるのか?」と尋ねられたフィリベールは「わかりません」と回答。さらに彼は「説明するとけっこう複雑なのですが、おそらく私の心を動かすものなんです。精神医療は、自分の中に押し込めているか弱いものや、傷を照らし出すことがあるからなのではと思います」と説明した。
実際にアダマン号で働いているジテール。彼女は「本作のロケをするということで、現場は生き生きとしていました。とりわけケアスタッフは喜んで、やりがいを感じてくださいました。患者にもいい影響を与えたと思います」と笑顔を見せる。
会見では最後に、控室でフィリベールとジテールが書いたメッセージが紹介された。フィリベールは「ここにいて、なんて幸せ」という意味のフランス語を記入。2人のメッセージが掲げられ、会見は幕を引いた。
「アダマン号に乗って」は4月28日より、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国で公開。
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