本作は江戸時代末期を舞台に、わびしくつらい日々を懸命に生きる庶民の姿をモノクロで描いた青春時代劇。原田が発起人となって日本の製作チームと世界の自然科学研究者が連携し、さまざまな“良い日”に生きる人々の物語を映画で伝える「YOIHI PROJECT」の劇場映画第1弾となる。黒木が武家育ちだが今は長屋で質素な生活を送る主人公おきくを演じ、寛一郎、池松壮亮が脇を固めた。英題は「Okiku and the World」。
ロッテルダムでは、一般の映画ファンから選ばれた審査員によってアワードを選び、受賞作はオランダでの劇場公開やテレビ放映も見込まれるビッグスクリーンコンペティション部門に選出される。映画祭のプログラマーを務めるクリスティーナ・アシェンブレネロヴァは本作を「武士の時代の終わりを舞台に、環境および階級問題を背景に描かれたロマンス。この映画には、ほかの時代劇にはないすべてがある。阪本順治監督は、汚物のユーモアと鋭い視点を完璧に取り入れることで、特有の大胆さを時代劇に反映し、観客に驚きと大きな喜びを与えている」と評した。
初上映では約300人が映画を鑑賞。翌2日の上映はチケットが完売した。上映中は何度もクスクスという笑いが起きたそう。没落した武家の娘と糞尿の処理に携わる人々の視点から世界を捉えた本作。阪本自ら「糞ったれ青春時代劇」と名付けており、Q&Aでも「なぜ糞尿をテーマに?」「映画の中の糞尿は何でできているのか」といった本作のモチーフについての質問が続いた。
「糞尿が多くを占めているのにとても美しく、そして、かわいらしい映画でした。なぜこれを描こうと思ったのか?」という質問に、阪本は「原田プロデューサーから、江戸の食のサイクルをやろうと。循環を見せるには糞尿を覆い隠しては撮れないと思いました。多すぎましたか?」と返答して笑いを誘い、寛一郎も「たくさんうんちが出てくると、スタッフのテンションが上がっていました。劇中の血や雨、雪は映画を助けてくれるアイテムの1つだと思いますが、そこにうんちも加わったと思います」と付け加える。観客からは「こんなに匂いを感じる映画は初めて(笑)」という感想も。劇中の糞尿の素材について、阪本が「最初は段ボールをちぎって作っていましたが、改良を重ね、残飯などを使って顔にかかっても大丈夫な素材になってます」と明かす一方で、寛一郎は「実際、少し臭かったです」と話して笑いを取った。
公式上映を終え、阪本は「温かく迎えてもらえてほっとしています。最初から海外の方が観るという前提で作っているわけではなかったので、思ってもみない反応があって新鮮でした」と吐露し、寛一郎は「日本の江戸という文化、美徳をどうオランダの人たちが受け取って解釈してくれたのか気になりますが、今の僕らと通じる何かは確実に伝わっていると思うので、まずは『観てくれた』ということがうれしかったです」と話す。また原田は「この作品を観た海外の方々が、何を思い、どう感じるのか、それが不安でしたし、興味がありました。結果は、受け入れられたと思います。海外の映画人からいろんな意見も聞けました」と振り返った。
「せかいのおきく」は4月28日より全国ロードショー。ロッテルダム国際映画祭は現地時間2月5日まで開催される。
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