現在公開されているフランス映画「
中絶が違法だった1960年代のフランスを舞台に、望まぬ妊娠が発覚した大学生アンヌの葛藤と孤独を映し出した本作。「ヴィオレッタ」の
音楽を手がけたのは、フランスを拠点に活躍するロシア出身のアーティスト、エフゲニー・ガルペリンとサーシャ・ガルペリンの兄弟。これまでに「エール!」「ラブレス」「聖なる犯罪者」「GAGARINE/ガガーリン」などの音楽を手がけてきた。音と音楽が孤独なアンヌの体験に観客を深く没入させる役割を果たしており、ディヴァンは「彼らの曲はとても精神的です。私たちは感情を裏付けたり、決めつけたりするメロディを探してはいませんでした。心の内なる言葉遣いとでも呼ぶような、言葉のように機能する音色、ミニマルなコードが欲しかったのです」とコメント。ヴァルトロメイも「物語が進むにつれて、アンヌの孤独感が増し、音も変化していきます。とても詩的なアイデア」と語っている。
アンヌの息遣いも重要な音響の要素となった。ディヴァンは「この作品は、実は“呼吸”で演奏をしている部分が多い。そこには、アンヌの内面に飛び込みたいという思いが込められています。安堵のため息は、彼女の感情を肉体的に映しとったものです。アンヌは我慢するたびに、息を止めたり、息切れしたりします」と細かな演出に言及。映像には、不安定なピアノの旋律が流れる中、病院で妊娠を告げられたアンヌが、鏡の前で自分の呼吸とともに動くおなかの膨らみを見つめる場面が収録された。
「あのこと」は東京のBunkamura ル・シネマほか全国で順次公開中。
※「あのこと」はR15+指定作品
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「あのこと」が深い没入感を生み出す理由は、監督が語る音楽と息遣いのこと(動画あり) https://t.co/YaMnVrPrs6