PFFアワード最高賞は東盛あいかの「ばちらぬん」、池松壮亮「感銘を受けました」

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第43回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のコンペティション、PFFアワード2021の表彰式が本日9月24日に東京・国立映画アーカイブで行われた。

第43回ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2021表彰式の様子。

第43回ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2021表彰式の様子。

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「第43回ぴあフィルムフェスティバル」フライヤービジュアル

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PFFアワードは多数の映画監督を輩出してきた自主製作映画のコンペティション。PFFアワード2021では、489本の応募作の中から18作品が入選している。表彰式には、最終審査員である高田亮岨手由貴子、柴崎友香、今泉力哉池松壮亮が出席した。

左から東盛あいか、池松壮亮。

左から東盛あいか、池松壮亮。[拡大]

今回グランプリに輝いたのは、沖縄県与那国の持つ記憶や文化を個人の経験に重ねた東盛あいかの監督作「ばちらぬん」。東盛は「『ばちらぬん』という言葉は、私の地元である日本の最西端の小さな島の言語で『忘れない』という意味があります」と紹介し、「この映画のことを皆さんに呼んでもらうたびにとてもうれしく、『忘れない』という思いを少しずつ未来に運んでいけるのではと強く思いました。本来なら島でオールロケをして、すべてフィクションで撮る予定でしたが、コロナの影響で変更せざるを得なくなりました。悩みましたが、“つながりたい”という思いが強く、映画なら実現できるのではないかと思いドキュメンタリー+ドラマという形に挑みました。『ばちらぬん』を一緒に作ってくれたみんな、島にいるみんなに早く受賞を伝えたいです」と喜んだ。

池松壮亮

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プレゼンターの池松は「ばちらぬん」を「素晴らしい映画に出会えた!と思っています」とたたえ、「人の記憶、血の記憶、土地の記憶、そういったことを観るものに感じさせてくれます。私たちは自分たちの短い人生にとらわれがちだと思いますが、もっと長い精神の歴史の上を生きているということを、映画は当たり前のようにわかっているようでした。言葉にならないことをなんとか映像でつかみ取ろうとしている強い意志を感じ、そのようなこの映画の強い精神と技術的なバランスに、とても感銘を受けました」と語った。

準グランプリは中塚風花が自身と家族との関係、就職や上京といっためまぐるしい変化の時期を自ら切り取ったセルフドキュメンタリー「グッバイ!」が受賞。中塚は「賞を獲れるとは思っていなくて、うれしいです。この映画に関わってくださった私の恩師、植松真人先生(ビジュアルアーツ専門学校 / 大阪)にとても感謝しています。この場をお借りてお礼を言わせてください。今後もいい作品を撮れるよう精進します」と抱負を述べる。プレゼンターの今泉は「家族のドキュメンタリーなのですが、登場人物が本当に魅力的すぎて『人物を描くってこういうことか』と勉強になりました。撮影や音に対する意識、編集能力も高くてカットの終わり方、言葉の選び方、ナレーションの入れ方も効果的で面白い。何度も繰り返し観たほど魅力的な映画でした」と賛辞を贈った。

また審査員特別賞は岡田詩歌の「Journey to the 母性の目覚め」、岩崎敢志の「転回」、蘇鈺淳の「豚とふたりのコインランドリー」が獲得。エンタテインメント賞(ホリプロ賞)と映画ファン賞(ぴあニスト賞)には大野キャンディス真奈の「愛ちゃん物語♡」、観客賞には加藤紗希の「距ててて」が選ばれた。

「PFFアワード2021」入選作品

「PFFアワード2021」入選作品[拡大]

なお明日9月25日12時から「Journey to the 母性の目覚め」「愛ちゃん物語♡」「転回」「グッバイ!」、16時から「距ててて」「豚とふたりのコインランドリー」「ばちらぬん」が国立映画アーカイブで上映される。さらにPFFアワード2021入選作18本は、配信プラットフォーム・DOKUSO映画館とU-NEXTにて10月31日まで配信。最終審査員5名による審査総評は下記に掲載した。

※岩﨑敢志の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記

PFFアワード2021受賞結果

グランプリ

東盛あいか「ばちらぬん」

準グランプリ

中塚風花「グッバイ!」

審査員特別賞

岡田詩歌「Journey to the 母性の目覚め」
岩崎敢志「転回」
蘇鈺淳「豚とふたりのコインランドリー」

エンタテインメント賞(ホリプロ賞)

大野キャンディス真奈「愛ちゃん物語♡」

映画ファン賞(ぴあニスト賞)

大野キャンディス真奈「愛ちゃん物語♡」

観客賞

加藤紗希「距ててて」

審査員5名による審査総評

高田亮(脚本家)総評

昔、自主映画を作ったこともあり、PFFに応募もしましたが入選はしませんでした。今回多くの作品を拝見し解釈はそれぞれですが、映画は観た人のモノ、皆さんの作品たちも僕のモノにさせていただいてます。本当にいろいろな刺激をいただきありがとうございました。

岨手由貴子(映画監督)総評

私も10年以上前にPFFに2度入選していて、一度目は賞を何ももらうことが出来ず、二度目は準グランプリを頂きましたが、受賞できなかった気持ちも受賞できた喜びも両方分かります。監督人生は続けてさえいればずっと続けることが出来ます。賞をもらった、もらえなかったに関わらず、皆さんにはぜひ次も続けて作って欲しいと思います。また、私が入選した頃はまだ少なかった女性監督が今年はすごく多く、今回の受賞監督がほぼ女性、という結果も、とても嬉しく思います。
審査会ではどの作品も魅力的なので白熱しましたが、処女作でしか作れない良い意味で野心的な作品に出会うことができ、何て楽しそうなんだろう!と羨ましく思うこともありました。皆さんの素晴らしい作品に出会わせて頂きありがとうございました。

柴崎友香(作家)総評

私は高校の時映画部に入っていて、同じ部にPFFに入賞した先輩がいて「PFFはすごい」とさんざん聞かされていたので、今回このような機会を頂けてありがたいです。
その頃と違い、今は映画を撮ることが身近になって、色々できるようになったんだな、というのが素直な感想です。
どの作品も本当にレベルが高く、審査を忘れて楽しんで観ました。作品のタイプも色々あって、どういう基準で賞を決めたら良いか悩みましたが、その幅広さがPFFアワードの懐の深さ、今までたくさんの人に注目され長く続いている意味だなと思います。
映画と小説の違いは、映像か文字かという事よりも一人で作るか、たくさんの人と関わって自分以外の要素と折り合いをつけながら、話し合いながら作っていけるのが一番の違いだと思いました。
自分以外の人、天気、場所、思い通りにならない要素と関わりながら作っていく。そこでしか生まれないもの、だからこそ生まれてくるものがあるのが映画の面白さ。小説家としては大変そうだけど羨ましいな、という気持ちを持っています。

今泉力哉(映画監督)総評

映画は自分だけじゃなく、スタッフに何か賞を持ち帰りたいという気持ちがありますが、489本の中から入選するってことは誰かの目にとまりこの場所に来たということ、その中で、好みや出会いもあり、選ばれなかった作品にもすごい作品もあった気もし、一本一本に差はなく生まれてきていると思います。
自分も五、六回応募して、入選できず、一時審査を通過したことを自信に悔しさをバネにして映画を続けています。
入選や受賞することがゴールではないし、映画を続けていくかいかないかを自分で決めていい、映画以外のことに今回の受賞や悔しさを活かして生きていくことが大事だと思います。

池松壮亮(俳優)総評

ここの作品についてたくさん語りたくなるのでここでは控えておきます。
とにかく素晴らしかった。映像に残そうとする、自分の内外にあるものを切り取ろうとする気迫にとても刺激を受けました。489本の応募作、今年選ばれた入選作、審査員として優劣を付けてしまいましたが、映画に対する愛情を共有している、という一点においては全く優劣はなく素晴らしいものばかりでした。
コロナ禍で大変な状況、不確かな時代にみんなが不安を抱え、私たちの未来はお先真っ暗だとも言われています。でも、そんなもん知るか!です。心の奥底の声に忠実に、自分と対峙する世の中に向き合って、自分自身のクリエイティビティを探究しながら、映画を共に分かちあっていけたら、僕自身も嬉しいなと思います。また皆さんと映画を共有できることを楽しみにしています。

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