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耳の聞こえない女性ギョンミが連続殺人事件の目撃者となり、殺人鬼ドシクに追われる恐怖の一夜を描いた本作。「リトル・フォレスト 春夏秋冬」のチン・ギジュがギョンミ、「コンジアム」のウィ・ハジュンがドシクを演じ、クォンは本作で監督デビューを果たした。
自ら脚本も手がけたクォンは、カフェでほかの映画のシナリオを書いていたとき、手話で会話する2人の聴覚障害者を見かけたことからアイデアが生まれたと明かす。「騒がしい人々に囲まれた2人をただ見守っていると、不思議とその静けさの中へ吸い込まれるような感覚を覚えました。そして彼らが交わす静かな会話が、ほかの誰よりも強く激しいものに感じたのです。同時に、多くの人々の中で孤立しているようにも見えました」とその光景を思い返した。
演出については「単純に人を殺して、血が乱れ飛ぶ残酷なスリラーにはしないと決めていた」という。一晩のうちにすべてが起こるストーリーのため、緊張感を維持させることに苦労したそうで「特に力を入れた部分は、聴覚障害から派生する緊張感と不安感を観客と一致させることでした。そうすることで、観客は主人公と同じ気持ちで物語の流れについてこられると思ったからです」と説明する。
クォンによれば、本作は「コミュニケーションの意味を込めた映画」でもある。コミュニケーションというと声や言葉を思い浮かべるが、クォンは「真のコミュニケーションとは、誰かの話に耳を傾けること。そこで聴覚障害を持つ母娘を登場人物にしました。聞くことができないというのは、逆説的に考えれば、誰も聞いてくれない。映画で主人公とコミュニケーションが取れる人物は母親たった1人。意思疎通できないもどかしさが、映画を最後まで牽引していきます」と本作のメッセージ性にも触れた。
劇中、ギョンミとドシクは走りながら追跡劇を繰り広げていく。車も使わず「走る」ことに徹した理由については「本作のアクションのコンセプトは、聴覚障害者のギョンミが連続殺人鬼の魔の手から逃れ、突破することでした。『突破』という言葉から思い浮かんだのが『逃げる』と『飛びかかる』。ドシクから逃げる緊迫感、ドシクに向かって飛びかかる切迫感。この2つをうまく表現するには『走る』しかありませんでした」と解説。最後に「スリラー映画の名にふさわしい緊張感と没入感があります。それに残酷すぎない点も長所ではないでしょうか。『私ならどんな選択をしただろう』など、じっくり考えてもらえる内容にもなっています」と作品をアピールした。
「殺人鬼から逃げる夜」は明日9月24日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開。
映画ナタリー @eiga_natalie
残酷なスリラーにはしない、「殺人鬼から逃げる夜」の緊張感を監督が語る
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