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ツァイ・ミンリャン5年ぶりの監督作「あなたの顔」4月に公開、音楽は坂本龍一

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「あなたの顔」

「あなたの顔」

「愛情萬歳」「河」などで知られるツァイ・ミンリャンが監督したドキュメンタリー「あなたの顔」が、4月より東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。

2013年製作の「郊遊(ピクニック)」を最後に商業映画から離れることを宣言し、近年は舞台演出やアートインスタレーションなどを制作しているツァイ・ミンリャン。5年ぶりの映画となった本作は、常連俳優のリー・カンションと台湾に暮らす市井の人々の顔を極端なクロースアップで捉えた作品だ。カメラの前で自由に話す人々の目や口元、しわが洗練されたライティングによって細部まで映し出されていく。

映画は2018年のヴェネツィア映画祭でワールドプレミア。その後、台北映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞、監督賞、音楽賞の3冠、台北金馬奨でも最優秀ドキュメンタリー賞に輝いた。国内では2018年の第19回東京フィルメックスで上映されている。

「愛情萬歳」以降、既成楽曲のみを用いてきたツァイ・ミンリャンだが、本作では坂本龍一が手がけたオリジナル劇伴を使用した。坂本が「あなたの顔」に関わった経緯や「このように幸福な映画音楽プロジェクトは人生で度々あるものではない」と制作過程について明かしたコメントは下記に掲載している。

坂本龍一 コメント

3年前のある日、僕はヴェニスの浜辺をぶらぶら歩いていたのだが、遠くで「サカモトー」と呼ぶ声が聞こえた気がして、ふと振り返るとツァイさんが満面の笑顔でこちらに手を振っている。警戒心の微塵も感じられない、なんと親愛に溢れた表情なんだろうと、なかば呆気にとられる。その時、この人のためなら何でもしてやろうと思ったのだった。

それから数ヶ月後にツァイさんのオフィスから連絡があり、新しい映画のために音楽を作ってくれと。ぼくはすぐにもちろんと返事をする。音楽の方向性はと聞くと、何もない、好きにやってくれという答え。

送られてきた映像を見、早速いろいろな音を試してみる。いわゆる「音楽」は似合わない。音と間が必要だ。あのミニマルな映像に適切な音、間とはなにか。最初にピアノで試し、それを映像に合わせてみると、非常にせわしない。だめだ、忙しすぎる。音楽独自の時間が映像の邪魔をしてしまう。今度は映像を見ながら、音を出していく。そういうプロセスを繰り返しながら、納得のいく間をとっていく。この作業にはどんな理論も役に立たない。ひたすら感覚の命ずるところによって決めるのだ。

数日して、音と間による12のピースができ、それを監督に送る、「自由にお使いください。切り刻んでも、全く使わなくても自由です」というメッセージを添えて。

完成した「あなたの顔」を観て、特に嬉しかったのは、最後の室内のシーンのために作った音を、ツァイさんはやはりそのシーンに使っていたことだ。言葉を交わさず、映像と音だけで意思が通じたと確信できる出来事だった。このように幸福な映画音楽プロジェクトは人生で度々あるものではない。

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