第32回東京国際映画祭のコンペティション部門審査委員記者会見が本日10月29日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、審査委員長である
本年度のコンペティション部門では115の国と地域よりエントリーした1804本の作品から、審査を通過した14作品が上映される。日本からは足立紳の「喜劇 愛妻物語」と手塚眞の「ばるぼら」が出品された。
コンペ部門での審査基準について尋ねられた登壇者たち。チャン・ツィイーは「中国、日本、フランス、フィリピンなどから多種多様な映画が選ばれました。合作もたくさんあり、東京国際映画祭における作品の選出視点は非常に幅広いと感じました。表面的な多様性を反映したものではなく、それぞれの地域の文化がきちんと反映された作品が選ばれているかと思います」と作品群に対する印象を述懐する。続けて「審査をするときは立場やメンツを排除することができるのでラッキーです。中国の作品を含め、審査員として公正に審査します」と話した。
「グラン・トリノ」「アリー/ スター誕生」などを手がけた映画プロデューサーのガーバーは「私が意識するのは、どれだけの困難を乗り越えて作品が作られたかという点です。どんなふうに役者から演技を引き出したのか、過酷な環境で作られたのか。映画作りにはさまざまな障害が立ちはだかりますし、努力の結果としてできあがるので、持久走のようなものだと思っています」と製作者としての思いを語る。
また、アニエス・ヴァルダの言葉を引用して答えたのは「エイト・タイムズ・アップ」で第22回東京国際映画祭の最優秀女優賞を獲得したガイエ。「『映画は問いに対する答えを呈するものではない。映画はポエトリーであり、詩による暗示なのだ』と。私もその意識を持って感情の赴くままに作品を堪能し、ユーモアがちりばめられた部分も観ていきたいと思っています」と彼女が笑顔を見せると、廣木も「その言葉の通りですね」と同意した。「氷の季節」で第31回東京国際映画祭の審査員特別賞を受賞したノアーは「監督やプロデュ―サー、役者、脚本家たちが何年もかけて作品に打ち込むつらさを重々知っています。敬意を持ち、目と耳を見開いて作品を観ていきたい」と述べる。
会見では「本映画祭の発信力や影響力が低下しているのではという声もあるが、どうやって周知していくべきだと思うか」という質問も飛び出した。審査員唯一の日本人である廣木が「東京はビッグシティでいろんなイベントがあり、この映画祭もその1つです。国が口を出さず、もっと文化に対してお金を出してくれればと考えています」と答えると、隣のガイエが廣木に対して拍手を贈る。
チャン・ツィイーは「例えば5月にカンヌ国際映画祭で韓国の『パラサイト 半地下の家族』がパルムドールを獲り、アジアをはじめ各地でこの作品についての議論が起こりました。前年は是枝裕和監督が受賞しましたね。このように作品がよければ、映画関係者だけでなく観客も映画祭について話すようになると思います」と回答。「ただ、この映画祭の発信力が低下しているというのは杞憂ではないでしょうか」と彼女が付け加えると、ガーバーも賛同する。続けてガーバーは「映画祭によっては選出の指標が存在するものもあるかもしれませんが、東京国際映画祭に関してはインターナショナルで広範囲な作品群から選ばれているとお見受けしています。アメリカの映画関係者からも『参加したい、参加するのを楽しみにしている』という言葉を聞いています」と明かした。
第32回東京国際映画祭は東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、EX THEATER ROPPONGIほかで11月5日まで開催。コンペティション部門の結果は、11月5日のクロージングセレモニーで発表される。
チャン・ツィイーの映画作品
リンク
- 第32回東京国際映画祭(2019)公式サイト
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【イベントレポート】チャン・ツィイーら、東京国際映画祭コンペ作品を語る「表面的な多様性ではない」
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