東京藝術大学大学院で
父・芳郎とその不倫相手である瞳子が別れることを手伝う羽目になった高校2年生・萩が、少しずつ大人の事情に気付いていく本作。萩をドラマ「3年A組 ―今から皆さんは、人質です―」の
西川は「“そんなこともあるさ”と笑い優しく寄り添ってくれる存在が必要な誰かに、この作品が届く事を願います」とコメント。彼の師である黒沢は「これは決して単純な“ひと夏の経験もの”ではない」「西川のストーリーテリングは実にしたたかと言っていいだろう」、諏訪は「この薄っぺらな世界を生きる術はまだある、という強い意志がこの喜劇を輝かせている」と述べている。
「向こうの家」は東京のシアター・イメージフォーラムほかでロードショー。
西川達郎 コメント
今まで知らなかった事を知り、これまで見えなかった事が見えるようになる事で、人は一歩成長していく。初めて触れた出来事に反発したり、やがて受け入れたりしながら少年が変わっていく時、周りの大人達も彼らを自分達の方へ迎え入れながら、また少しずつ変わっていくのだと思います。そんな成長の物語を家族の中に描きました。“そんなこともあるさ”と笑い優しく寄り添ってくれる存在が必要な誰かに、この作品が届く事を願います。
望月歩 コメント
劇場公開していただけること、とても嬉しいです。撮影中も共演してるみんなと「色んな人に見ていただけたら嬉しいね」なんて話していたことがまさか現実になるなんて。色んなところに広げてくださった監督含むみなさんに感謝してます。皆さん、是非「向こうの家」に遊びに来てくださいね! 待っています!
大谷麻衣 コメント
私が演じた瞳子は、無邪気でありながら優しく、時に意地悪で、芯の強さと、そして弱さも持つ女性です。彼女は、主人公・萩の父親の愛人ではあるけども、決して嫌われない存在として、皆様に届くことを願い、大切に演じさせて頂きました。瞳子に出会うことで、萩がこれまで知らなかった大人たちの側面を知り、自身の心を通して、少しだけ成長する。その機微を楽しんで頂けたらなと思います。
黒沢清 コメント
夏のある日、男子高校生が訪れた坂の上の一軒家には、妖艶な美女が囲われていた…というあまりにも危険な匂いのする設定から映画は始まる。しかし、これは決して単純な“ひと夏の経験もの”ではない。奇妙な学友たち、どこかネジの外れた家族、見るからに胡散臭い釣り人…といった人々の登場によって、物語はじわりと常軌を逸していく。西川のストーリーテリングは実にしたたかと言っていいだろう。
諏訪敦彦 コメント
ここではむしろ、見せかけの世界、演じられる家族、非現実的な演技というものが積極的に取り入れられて、喜劇的な呑気さとともに小さな世界が形作られてゆく。しかし、「よく話すことで、互いをよく理解できる」という母親の価値観に牛耳られている家族世界とパラレルに、父親によってもうひとつの家が作り出されていることが発覚する。世界から遊離したような高台にへばりつく「変な家」に暮らす女の暮らしは、長男ハギの見せかけの世界を決定的に崩壊させるのだが、地に足のついた女の暮らしが、逆に彼の世界を再生してゆく。登場人物ひとりひとりの世界は実は断絶しており、みながバラバラの世界を生きているのであるが、映画は誰かを告発することも、否定することも、利用することもなく、救いのない世界を深刻に嘆くわけでもなく、彼ら全ての人に生起する感情を肯定しようとする。やがて女とともに向こうの家も消え去り、ハギの唯一の世界との繋がりも失われるのだろうか。いや、それでも海は輝いている。この薄っぺらな世界を生きる術はまだある、という強い意志がこの喜劇を輝かせている。
内田英治(映画監督)コメント
家族・友達・恋人って10代の頃の三大日常を見事に切り取っている。
80年代を思い出させる、どこか懐かしく、どこか痛い思春期の物語。
カンパニー松尾(AV監督 / 映画監督)コメント
ホント、この手は苦手なはずなのに、最後までニヤニヤ見ちゃった。
普遍的で、絵作りも落ち着いてるけど、ちょっと破城してるホームドラマ。
お話が、建前じゃないのがよかった。
派手な展開はないけど、僕みたいなひねくれたおじさんにも、ちゃんと届く青春映画でした。
瞳子(トウコ)さん、気になる。
森谷雄(プロデューサー / 映画監督)コメント
20代にしてこの映画をしっかりと撮った西川達郎監督の眼差しは「家族」とは何か?を静かに問い続ける。また、家族とは別の関係性を望月歩と大谷麻衣が見事に演じている。若き才能たちによる今観るべき傑作である。
杉田協士(映画監督)コメント
思い返せば、あのときがあの人に会えた最後だった。顔を思い出そうとすると滲んでしまう。それがたとえ叶わなくても、二度と会えないあの人の姿を残すために映画はあると「向こうの家」は教えてくれる。
衿沢世衣子(マンガ家)コメント
不登校に父親の不倫発覚、愛人に立ち退きを迫る任務など、穏やかでないはずの毎日が、高校生萩くんの類まれなるのんびり力で、ことは進まず優しい時間が広がる。高台の家に、海辺の散歩、一日サボって好きに歩いたような爽快さを作品から感じた。
松崎健夫(映画評論家)コメント
瞳子の家は丘の上にある。そこには気ままな暮らしがあり、悠々な時の流れもある。天界のごとき丘の上からは下界の街や海を見下ろせるが、険しい石段を登らないと瞳子には会えない。つまり、なかなか手の届かない存在のようなのだ。少年は父親の不倫相手である瞳子に絆され、信頼し、やがてふたりは疑似家族のような奇妙な関係を育んでゆく。寛容さは優しさを生み、現代社会の渇きを潤すのだ。
ミヤザキタケル(映画アドバイザー)コメント
理想と現実のギャップに慄いても、それを咀嚼したり納得させて貰えるだけの時間は中々与えて貰えない。
割り切るか、受け流すことでしかやり過ごせない。
だけど、誰もがそんなに器用じゃない。
時間をかけないと乗り越えられないことが、世間はそれを良しとしないけど、人生のズル休みや寄り道をしないと気が付けないこともある。
そんな不器用で面倒で愛おしい人達の心の機微に胸打たれた。
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森谷雄 @moriyatch
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