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“2人の師匠”是枝裕和&西川美和と広瀬奈々子がトーク、「夜明け」制作を振り返る

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「夜明け」公開前夜祭の様子。左から是枝裕和、広瀬奈々子、西川美和。

「夜明け」公開前夜祭の様子。左から是枝裕和、広瀬奈々子、西川美和。

夜明け」の公開前夜祭が本日1月17日に東京・新宿ピカデリーで開催され、監督の広瀬奈々子が師匠である是枝裕和西川美和の2人とトークイベントを行った。

柳楽優弥と小林薫が共演する「夜明け」では、ある秘密を抱えて逃れてきた青年シンイチと彼を偶然救った哲郎が親子のような関係を築いていく。本作で監督デビューを飾った広瀬は制作者集団・分福に所属し、是枝の「海よりもまだ深く」や西川の「永い言い訳」で監督助手を務めた。

広瀬はまず分福に入った経緯を説明。「就活をちゃんとやっていなかったもので、そのまま卒業してしまいまして。半年くらい経ったときに、是枝さんが助手を募集してることを友達に教えてもらって。是枝さんに卒業制作を提出したんですけど」と振り返る。是枝は面接を回想しながら「(ディスクが)割れちゃっててまだ観てないんだよねって伝えたら『ああ、そうなんですか』という感じで。『観てくれたら私のことをわかってもらえるはずなのに』みたいな(笑)」と言い、「相当自信があるんだろうなと思って観たら、素晴らしかったんです。それですぐ決めました」と述懐。作品については「場所をよく選んで撮っていて、1つひとつの風景がないがしろにされていない。それと、描かれてる子供が素晴らしかったんだけど、大人はいまひとつだった」と解説。面接時に広瀬に対し、自分で感じる優れた部分とそうでない部分を聞いたことも明かし「真っ先に『大人の描写がうまくいかなかった』と言っていて。ちゃんと分析できていたのも(採用の)決め手の1つでした」と語った。

西川は「永い言い訳」の撮影を振り返っていく。広瀬が撮影助手として参加したことに対し「助かったけど、非常に混乱しました」と述べ、「映画の撮影現場って監督の発言力、決定権がすごいんです。それまで10年以上1人で決めてきたのに、『こういうのもやってみませんか?』って言ってくる人がいることが初めてで」とコメント。「でもそれって映画には必要で、うるさく言ってくれる人がいるのは豊かなこと。その考えに行き着くまでは苦しみましたけど(笑)。でもみんなが監督の意見を絶対としている中で、ちょっとすみませんって入ってくるのは大変だったよね」と広瀬をねぎらった。

是枝が自身の作品に監督助手を付けたのは、2008年公開作「歩いても 歩いても」の砂田麻美が最初だという。西川の話を時折うなずきながら聞いていた是枝は「(砂田は)思ったことをストレートに言う性格で、言われた瞬間はムッとすることもありました。でも言ってることがだいたい正しくて。『昨日のあのシーンなんですけど……』とバスの中で言われたこともあって、『なんで昨日言わないの』ってところから朝が始まったり(笑)。結局撮り直すんですけど、それで作品はよくなるんですよね」と笑いながら回想。「脚本、監督、編集までやってると、何がいいのか自分ではジャッジできなくなるときがある。外側の視点で『おいおい』って言ってくれる人がいたほうが作品のためになるんです」と持論を明かす。

続いて話題は「夜明け」の制作過程へ。広瀬は脚本の執筆にもっとも苦悩したと話し、「途中、小林さん(演じる哲郎)に気持ちが寄っちゃって主人公が逆転しそうになったこともありました」と振り返る。未完成の脚本を読んだ西川からは「回想シーンを入れてもいいのでは」と提案を受けたという広瀬。「すごく響いて、どうしたら回想を使わず今に表出できるかを考えました。それはセリフの反復だったりするんですけど」と演出の工夫に言及した。また、観客から手持ちカメラを多用した理由を問われると「撮影の高野(大樹)さんがドキュメンタリーを撮られている方なので持ち味を生かしたいなと。被写体に対して畏怖があって、その距離感がいいんですよね。カメラをまなざしに配すると言いますか、舐め回すようなちょっと気持ち悪い感じに撮っています」と返答。子供をどう演出したのか是枝に聞かれた際には、「基本的には是枝さんと同じように口伝えで。ただ、柳楽さんが子供と接するのが上手なのでお任せすることも多かったです」と述べる。是枝は「僕にとって特別な役者だから冷静に見られない。身内が大きくなって出てるなっていう感覚」と柳楽への思いを吐露し、「自分の助手だった奈々子さんのデビュー作に優弥が出てるのは、感慨深いですね」とほほえんだ。

明日1月18日に封切りを迎える「夜明け」。広瀬は「本当に緊張していますが、楽しみです。違和感を感じるところがけっこうあると思うんですが、そこに映画の本質があると思います。なんでこの人物はこんな行動を取ったんだろうとか、シンイチと哲郎の関係性はなんなんだろうとか、いろいろなことを家に帰って考えてみてほしいです」と思いを伝えた。

「夜明け」は新宿ピカデリーほか全国でロードショー。

(c)2019「夜明け」製作委員会

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