10月25日、新宿・テアトル新宿にて「
「ディアーディアー」は、黒沢や瀬々敬久、石井裕也らの助監督を務めてきた菊地の初長編監督作。かつて山あいの村で幻の鹿“リョウモウシカ”を見つけたことで人生を狂わされた3兄妹の物語を描く。駆け落ちの果てに酒浸りになった末娘を中村ゆりが、精神を病んだ次男を斉藤陽一郎が、古い工場と莫大な借金を抱えた長男を桐生コウジが演じ、劇中では父親の危篤を受けてその3兄妹が再会を果たす。
黒沢の最新作「岸辺の旅」でも助監督を務めた菊地は、この日も客席で本編を鑑賞していた黒沢を、緊張の面持ちでステージに迎えた。「バラバラになっていた兄妹が故郷で再会するって、最初はよくある導入だなあと思ったんだけど、観ているうちにだんだんと『何か違うぞ』と思えてきたんだよね」と感想を述べる黒沢。本作を観るのは2度目とのことで、「よく観ると、いろいろ細かい仕掛けが使われていて、ただぼんやりと人が集まってきたわけじゃないのがわかる。最初観たときは気付かなかったけど、“車”の使い方もそう。“車”、やばいっすよね」と話し始める。黒沢は、例えば妹が不倫相手とタクシーの中で濃厚なキスを交わし、そのタクシーの運転手が別の“車”でのある事件に関わっているなど、本作に“車”が登場するときは必ず何か“やばい”ことが起きている、という持論を展開。それを受け菊地は「車というのはある種の密室なので、乗っている人の組みあわせでいろいろなことができるなっていうのは考えましたね。面白いのは、車って中にいる人にとっては密室なんですけど、窓があるので外から見えたりもする。不思議な空間ですよね」と意図を明かした。
続いて黒沢から「映画を作るにはいろんなレベルがありますよね。脚本からキャスティング、ロケハンだとか……どこが一番こだわるところ?」という質問が。菊地は「ロケハンですかね。脚本作りや音楽は、助監督をやってきた中でそこまで経験したものではないので。ロケ場所っていうのは自分にとって納得できないと嫌だったというか」と、自身の出身地でもある栃木・足利というロケ地へのこだわりを語る。
最後に黒沢は、この日中村・斉藤・桐生のメインキャスト3名も来場していたことから「(劇中で)皆さんなんとなく集まりつつ、多くは“車”なんですが、だいたい何かをきっかけに突然ネジが外れていく感じが強烈でしたね。斉藤さん(が演じた次男)はもとからネジが外れているふうに出てきて、途中『そうでもないのかな?』と思わせるのに、やっぱり外れていたというとても複雑な展開をする。誰がまともになっていくのか、誰が外れていくのかがスリリングでした」と役者陣へ賞賛を贈った。
「ディアーディアー」はテアトル新宿にて公開されており、連日舞台挨拶が開催中。黒沢の監督作「岸辺の旅」も同劇場にて公開されている。
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小暮宣雄 KOGURE Nobuo @kogurenob
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