三途の川が何度も見えました(笑)
──今までにもっとも反響があった刺繍も教えてください。
「ストレンジャー・シングス」の巾着だと思います。刺繍をするうえでは糸を1本取り、2本取り、3本取りにするかで線の太さが変わってくるんですけど、あの作品では1本取りで細かく縫ったうえで、登場人物もたくさん配して電飾の色まで変えました。目と手首が痛くなって、三途の川が何度も見えました(笑)。
──電飾……! よく見ると確かにすごいこだわりですね。
本当に大変でした……。この刺繍をしているときはシーズン1から4を観ながら「この場面縫おう、このシーンも縫おう」と考えて過ごしていました。右上にはイレブン(エル)の好物であるワッフルも縫ったりして。
──制作期間はどれくらいですか?
小さかったりシンプルなものは2週間くらいですが、この刺繍には2カ月掛けました。ときどき気分転換に別の刺繍をやったりして。毎日何かしらを縫ってはいます。
──そうやって長期間作品と向き合えることには、油絵や水彩画を描いていた経験も関係しているんでしょうか?
3、4時間絵を描くことは普通で、手を動かすことが苦痛ではないので刺繍にもハマれたのかなと思います。絵では何も成し遂げることができなくて、創作活動に対するコンプレックスはすごくあるんです。昔は「絵を描くのをやめたら死ぬ」くらいに思っていたんですけど、一時期描くのをやめていたとき、それでも平気なんだと気付いてしまったのがショックで。あ、絵がなくても私の人生は続くんだと。だから今、刺繍に打ち込むことができて毎日楽しいです!
マーベルヒーローの全キャラクター刺繍に挑戦したい
──今取り組んでいるのはなんの作品ですか?
もう完成して乾かすだけなんですけど、Netflixで配信される
──刺繍以外に、アイロンビーズの作品も拝見しました。そもそも何かを作ることがお好きなんですか?
そうですね。刺繍は大好きですが、それだけにこだわっているわけではないので、いろいろなものにチャレンジしていきたい気持ちはあります。
──ちなみに刺繍に関しては「販売してほしい」という声もあると思います。権利の関係があるので難しいかもしれませんが、将来的に販売したいという気持ちはあるんでしょうか?
売ってほしいとコメントをいただけるのはうれしいですし、励みにもなっているんですが、決して手芸が上手なわけではないので今は販売・量産は考えていないです。今の目標は刺繍が上達することなので、手芸教室に通って基礎をきちんと勉強したいですね。
──販売されたら自分も買おうと思っていたので、それは残念です(笑)。最後に、刺繍を始めて変化したことがあれば教えてください。
もともとせっかちな性格なんですが、刺繍って本当に時間が掛かるので気が長くなった感覚はあります。気のせいかもしれないですけど(笑)。
MN(Instagramのペンネーム)
広島県在住の女性。2020年のゴールデンウイークに映画やドラマの刺繍を始め、これまでに50以上の作品を制作してきた。
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