ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。
第17回は、
文
“ファイド”の愛らしさに癒されてほしい
みなさん、こんばんは。「今宵も悪夢を」案内人のすいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。
今回ご紹介するのは、私のお気に入りのゾンビ映画「ゾンビーノ」です。
舞台は、宇宙からやってきた謎の放射線によって墓場から死者が蘇り、ゾンビが蔓延るようになった世界。長期にわたる激しいゾンビ戦争の末、ゾムコン社のラインホールド・ガイガー博士がゾンビを従順にさせる首輪を開発。博士の活躍により、人間が勝利を収め、ゾンビと共存する平和な時代が訪れます。
主人公は、いじめられっ子の少年ティミー。彼の暮らす世界では、一般家庭でもゾンビをペットとして飼うようになっています。
と、この設定がまず面白い。ゾムコン社の首輪により管理されたゾンビは真面目でのんびり穏やかな癒し系。色彩もポップで可愛くて、音楽もカラッとしていてお洒落で、他のゾンビ作品ではなかなか出会えない緊張感のなさ、ゆるふわなムードが心地いいです。
ティミーの家にも、ついにペットのゾンビがやってきます。名前はファイド。友達のいない孤独なティミーにとって、唯一心を通わすことのできる、大切な親友になっていきます。
ある時、ひょんなことから首輪が一時的に機能しなくなり、凶暴化したファイドがティミーの家の向かいに住んでいる意地悪おばあさんのヘンダーソンさんを襲ってゾンビにしてしまいます。突然現れた、首輪で管理されていないゾンビの出現により、平和な街がパニックに。そこから物語は思わぬ方向に展開していきます。
ゾンビと人間の友情がテーマのこの作品は、随所にブラックユーモアがちりばめられつつも、とってもハートウォーミングで、泣きたくなるような良さがあります。知らず知らずの内に、登場人物たちに感情移入していて、心底感動してしまうのです。観ると優しい気持ちになれる、老若男女問わずおすすめのゾンビ映画。みなさんもファイドの愛らしさに癒されてほしいです。人と人の間に距離ができて、ぬくもりに飢えているこのご時世に、じんわりと心を満たしてくれますよ。
南波志帆(ナンバシホ)
1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。
「ゾンビーノ」(2006年製作)
過酷なゾンビ戦争に勝利し、調教首輪を付けたゾンビを家で飼うようになった人間たち。少年ティミーは家にやって来たゾンビをファイドと名付け、友情を深めていく。しかし、ひょんなことからファイドが近所のおばあさんを食い殺してしまい……。
監督はアンドリュー・カリー。出演には
「ゾンビーノ」 DVD販売中
税込価格:DVD 4180円
発売元:ショウゲート
販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(※上記は2022年5月現在の情報)
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tAk @mifu75
選者 / 南波志帆「ゾンビーノ」 | ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第17夜 https://t.co/Fv2Nj4cedq