恐怖と興味の二極化が進むサメ映画界
──ダンキチさんは以前、サメ映画のテーマが恐怖→興味→恐怖と移行していることにTwitterで言及していました。これはどういう意味でしょうか?
ダンキチ 恐怖としての始まりは1975年の「
ルーキー 「
ダンキチ 恐怖→興味→恐怖と来て、今は恐怖と興味の二極化が進んでいるんですよね。
──ルーキーさんがサメ映画の既出ネタをまとめていましたが、今後も新たな興味寄りの作品が生まれていくと。
ルーキー 一発ネタはどんどん増えていくと思います。個人的には日本でちゃんとサメ映画を撮ってほしい気持ちがあって。今のところ邦画でサメ映画と呼べるものは「JAWS in JAPAN」だけだと思うんですよね。短編だと「ダンサー・イン・ザ・シャーク」という作品もありますが、サメは一瞬しか出ない。日本映画でもっともサメ映画らしい撮り方をしているのは「
ダンキチ 確かにないですね。私は邦画のサメ映画にはあまり興味がなくて、アメリカ人の監督に日本で撮ってほしいです。「シャークネード5 ワールド・タイフーン」には東京タワーが一瞬出てくるんですが、日本のいろんな町にサメが出てくるのを観たい。あとはフカヒレだけが襲ってくるとか?(笑)
ルーキー アメリカ以外の国にも作ってほしいですね。僕が一番期待しているのはアフリカで、特に独自の映画の文化圏を確立しているウガンダ、ガーナ、ナイジェリア。例えば今年の6月に公開された「
ダンキチ
ルーキー あははは(笑)。個人的には、リアル志向よりも瞬時にフィクションとわかるようなバカバカしいサメ映画が増えてほしいと思っています。サメを恐怖の対象として描きすぎるのはよくないんじゃないかという声もいろいろなところから聞くので。実際にはコメディである作品を映画会社が恐怖のサメ映画として打ち出すことが、サメへのネガティブなイメージにつながっていることは否定できないと思うので、それを払拭するための取り組みは今後始まるでしょうし、自分でもやっていきたいです。
サメ映画にハマって失ったものはない
──ダンキチさん個人の話で言うと、「えっ?サメ男」というスウェーデン映画の日本での権利を持っているんですよね。どういう経緯で購入されたのでしょうか?
ダンキチ これまでサメ映画に関するいろいろな活動をしてきて、「まだやってないことってなんだろう?」と考えたときに浮かんだのが権利を持つことでした。サメ映画を好き勝手に“Z級”などと評してきたのですが、「自分で買ったらそんなこと言えなくなるぞ」と言われたことがあり、ちょっと引きずっていたんですよね。私もルーキーさんもコンマビジョンという会社の裏方をやっていて、希望するサメ映画を次々と買ってもらうことに成功してるんですけど(笑)、中には「これは買えない」とコンマさんが拒否する作品もあります。実は「えっ?サメ男」はその中の1本で。
──購入してみて、何か心境に変化はありましたか?
ダンキチ サメ映画の権利を持っているという満足感はすごく得られました。ただ満足感だけですね(笑)。金額も相当安価だったので、なんとしても元を取らないと、という気持ちにもならなくて。
ルーキー 「えっ?サメ男」はもともと日本で配信される予定があって、翻訳は僕が担当したんです。そのときに本国側の担当者と連絡を取り合っていたんですけど、いろいろと管理するのが面倒になったのか、音信不通になってしまって。そのあとしばらくして「権利を買いたい人がいる」と連絡したら、すぐに返信が来ました。おそらく即金でお金が欲しかったのかなと(笑)。
──(笑)。日本で配信予定だった際に翻訳を引き受けたのは、「えっ?サメ男」のような作品も広めたいという思いがあったからですか?
ルーキー そうですね。あまりにもバカバカしい作品だからこそ観てほしいという気持ちはあります。自分だけが観るのではなくなるべく大勢の方に観てもらって、作品について話し合えたほうが楽しいですし。名作映画を1人で観て噛み締めるのもいいですが、わけがわからないサメ映画への「どうなってるんだこれ」という思いを観た人同士で共有するのも1つの楽しみ方だと思います。
──そうやって笑い合えるのもサメ映画の醍醐味ということですね。ルーキーさんは過去にTwitterで、サメ映画は基本的に駄作ばかりだがワンシーン、ワンカットはいいところがあって、それを見出すのが自分の楽しみ方とおっしゃっていました。素敵な考え方だと思うのですが、サメ映画を観続けて得たものは多いですか?
ルーキー 減点方式ではなく「ここがよかった」という加点方式でサメ映画を観始めたことで、ほかの映画も同じような観方をするようになりました。どんなものでも楽しめるようになったんですよね。クオリティが低いものに対してちゃんと苦言を呈さないと、観客に対して作り手が甘えてしまうんじゃないかとも思ってはいるんですが。
──ダンキチさんは、サメ映画にハマって一番よかったことってなんですか?
ダンキチ ルーキーさんのようなサメ映画好きの仲間に出会えたことです。私は何年も前からZ級や未公開のサメ映画を紹介する活動をしていたんですが、イベントを企画しても本当に需要がなくて。お客さんはいつも5人とか10人だったんですが、今は日本でもサメ映画が人気になって、活動を続けることができている。しつこく「サメだサメだ」と言い続けてよかったです。
──逆に失ったものは?
ルーキー 失ったもの……。
ダンキチ 全部じゃないですか?(笑)
ルーキー 時間とお金と……(笑)。でも実際は失ったものはなくて、得たもののほうが多いです。クオリティの低いものがつまらないわけではないことをサメ映画から学びましたし、ちょっとチープで変な作品だからこそ作り手の情熱が伝わってきたりするんですよね。
ダンキチ 真面目に答えると、私も失ったものはないです。強いて言えば全然儲からないので、そろそろ還元してほしい気持ち(笑)。
映画という概念が崩れた「フランケンジョーズ」
──最後に、A級とZ級でそれぞれお薦めのサメ映画を教えてください。
ダンキチ A級に入れたら怒る方もいるかもしれませんが、間違いなくお薦めは「シャークネード」です。なぜかと言えば、「サメ映画って血が出て怖いんでしょ?」と思っていた方も観ることができるようになったサメ映画だから。「ジョーズ」以外の作品の小ネタもたくさん入っていますし、映画好きの方にもお薦めできます。Z級はやはり「えっ?サメ男」ですね。はんぺんのような姿の、ちょっと噛んだらふにゃっとしそうなサメ男が大暴れしますよ(笑)。あとは12月9日にDVDがリリースされる「サメデター」という映画があって。これもかなり強烈な作品なのでお薦めしておきます。
ルーキー 僕はA級だったら「ディープ・ブルー」を挙げます。「ジョーズ」とは全然違っていて、人がサメに食べられるのをエンタメ化したのはたぶん「ディープ・ブルー」だと思います。団結を図るような演説をしているサミュエル・L・ジャクソンが後ろから食われる有名なシーンがありますが、そこからサメ映画のコメディ化は始まっているような気がして。「ディープ・ブルー」を観たら、できれば「ディープ・ブルー2」も観てほしいです。「なぜサメを小さくしたんだ?」とか「これは続編ではなくリメイクではないのか?」という疑問が湧いてくると思うんですが、そういうダメなところも含めてサメ映画における続編の意味がわかるので。Z級は「フランケンジョーズ」ですね。Z級のサメ映画として、僕が最初に観た作品なので。
ダンキチ はははは。「フランケンジョーズ」が最初はヤバい(笑)。
ルーキー 最初に観たときのインパクトがすごくて。「これは映画なのか?」みたいな。次はどんなひどい画が来るのかとか、それまでに感じたことのなかった期待を抱きながら観た作品で、映画という概念が崩れた瞬間でした。今までサメ映画を観たことがない方も笑えると思いますし、Z級な部分もサメ映画の側面として楽しんでほしいです。
中野ダンキチ(ナカノダンキチ)
お宝映画発掘家、サメンテーター、The Asylum Lover。
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サメ映画ルーキー(サメエイガルーキー)
サメ映画専門のバイヤー兼翻訳家。
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そろそろ真剣に「サメ映画とは何か」を考える時が来たのかも知れません https://t.co/Lbcr9BVr0f