マンガ・アニメ・ゲーム・特撮と“東京”の関係を辿る展覧会、国立新美術館で開催

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日本のマンガやアニメを扱った展覧会「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」が、東京・国立新美術館にて7月8日から9月22日まで開催される。開催にあたり、去る2月26日に記者発表会が行われた。

「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」キービジュアル(イラストレーション:吉成曜) (c)Crypton Future Media, INC. www.piapro.net (c)カラー (c)武内直子・PNP・東映アニメーション (c)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (c)創通・サンライズ TM & (c) TOHO CO., LTD. (c)TOKYO TOWER

「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」キービジュアル(イラストレーション:吉成曜) (c)Crypton Future Media, INC. www.piapro.net (c)カラー (c)武内直子・PNP・東映アニメーション (c)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (c)創通・サンライズ TM & (c) TOHO CO., LTD. (c)TOKYO TOWER

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ヨリコ&ヴィッピー (c)2018 OPMA All Rights Reserved.

ヨリコ&ヴィッピー (c)2018 OPMA All Rights Reserved.[拡大]

文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、国立新美術館が主催する「MANGA都市TOKYO」は、2018年冬にフランス・パリのラ・ヴィレットにて開催された「MANGA⇔TOKYO」展の凱旋展示として行われるもの。全93タイトルから500点以上におよぶ資料を横断的に展示し、マンガやアニメといったポップカルチャー作品と都市“東京”との関係を、大きく3つのセクションに分けて辿っていく。展覧会のマスコットキャラクターであるヴィッピーとヨリコは、「MANGA⇔TOKYO」展の開催時に制作されたもの。キャラクターデザインとイラストは吉成曜が手がけ、キャラクター設定とデザインでコヤマシゲト、草野剛、ゲストキュレーターを務める森川嘉一郎氏が協力した。またヨリコの声は船戸ゆり絵が担当。展覧会のキービジュアルにはセーラームーンや綾波レイ、アムロ・レイといったキャラクターたちに扮したヨリコの姿が描かれている。

記者発表会に登壇した国立新美術館の逢坂恵理子館長(左)、ゲストキュレーターを務める森川嘉一郎氏(右)。

記者発表会に登壇した国立新美術館の逢坂恵理子館長(左)、ゲストキュレーターを務める森川嘉一郎氏(右)。[拡大]

「MANGA都市TOKYO」というテーマの出発点について、発表会に登壇した森川氏は「パリで大規模なポップカルチャーの展示を行うことになり、巨大な会場をどう使うかを考えたときに、巨大な模型を中央に置いて、その模型の範囲を舞台にした作品群を取り巻くように展示するというアイデアが浮かんだ」と語る。そして「日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮は、世界的に見たときに、具体的な場所を舞台やモデルにした作品が非常に多いのが特徴。それも単に特定の場所を模して背景が描かれているということにとどまらない、相互の影響関係が見てとれる。それを展示にしたいと考えました」と続けた。

パリでの「MANGA⇔TOKYO」展の様子。(c)MANGA ⇔ TOKYO Japonismes 2018

パリでの「MANGA⇔TOKYO」展の様子。(c)MANGA ⇔ TOKYO Japonismes 2018[拡大]

パリでの「MANGA⇔TOKYO」展の様子。(c)MANGA ⇔ TOKYO Japonismes 2018

パリでの「MANGA⇔TOKYO」展の様子。(c)MANGA ⇔ TOKYO Japonismes 2018[拡大]

その巨大な模型というのが、イントロダクションとして設置される1/1000スケールの巨大な東京都市部の模型。幅約17m、長さ約22mにおよぶ模型では、山手線が収まる程度の都市部が再現されるという。また模型の付近にはスクリーンを併設し、「秒速5センチメートル」「残響のテロル」「ラブライブ!」「STEINS;GATE」などの作品から、実在の東京の各所が登場するシーンを動画で紹介。模型が表す現実の都市と、フィクションの中の都市を重ね合わせるように鑑賞できる。森川氏は「現在の東京の都市風景は戦後に作り上げられたもので、とりわけ繁華街は10年前とは姿がまったく異なっていることも多い。そうなると、マンガやアニメに描かれたその時々の東京の風景が、物理的な都市風景より長生きする可能性がある」と話し、現実とフィクションのハイブリッドによって形成される都市風景のイメージを表現したい、と意図を語った。

大友克洋「AKIRA」 (c)MASH・ROOM/KODANSHA

大友克洋「AKIRA」 (c)MASH・ROOM/KODANSHA[拡大]

「サクラ大戦」 (c)SEGA

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上條淳士「To-y」 (c)上條淳士/小学館/小学館クリエイティブ

上條淳士「To-y」 (c)上條淳士/小学館/小学館クリエイティブ[拡大]

羽海野チカ「3月のライオン」 (c)羽海野チカ/白泉社

羽海野チカ「3月のライオン」 (c)羽海野チカ/白泉社[拡大]

展覧会を構成する3つのセクションのうち、セクション1では「破壊と復興の反復」と題し、東京の大規模な破壊や、破壊からの復興を描いた作品として、大友克洋「AKIRA」、「エヴァンゲリオン」シリーズ、「ゴジラ」シリーズなどを取り上げる。セクション2の「東京の日常」ではさらに3つの時代に区切り、「プレ東京としての江戸」では杉浦日向子「百日紅」や安野モヨコ「さくらん」など江戸を描いた作品を、「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」では和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」や谷口ジロー・関川夏央「『坊っちゃん』の時代」などの明治期から、高森朝雄・ちばてつや「あしたのジョー」や上條淳士「To-y」といった高度経済成長期までの、豊かになっていく東京を舞台にした作品を展示。「世紀末から現在まで」では浅野いにお「ソラニン」や羽海野チカ「3月のライオン」など、未来に希望を持ちにくくなった時代の作品を例に挙げ、東京の描かれ方の変遷を追っていく。なお森川氏は「あしたのジョー」について、「さまざまなマンガに関する展覧会で展示されている作品ですが、本展ではボクシングのシーンを一切展示していません」と明かし、都市“東京”にフォーカスした本展の特徴が出ている点だと語った。

そしてセクション3「キャラクターvs.都市」では、ここまでとは逆に、初音ミクとNewDaysのコラボ、お台場の実物大ユニコーンガンダム立像といった、現実の都市に現れたキャラクターたちに目を向け、インスタレーションでその様子を再現する。なおセクション3はセクション1の向かいに配置され、虚構の東京の中をゴジラが侵食している様子に対して、現実の東京が虚構の世界に侵食されているさまが対比できるよう構成される。

パリでの「MANGA⇔TOKYO」展の開催時から、東京での巡回を想定していたという本展。国立新美術館主任研究員の真住貴子氏は、会期が東京オリンピック・パラリンピックの開催時期と重なることについて、「海外からいらした方にもお見せできる機会を作れたことはうれしく、身の引き締まる思いもある」と語る。「MANGA⇔TOKYO」展の現地での反響については「いわゆるオタク的な方だけではなく、『なんで若者がこんなに日本のマンガに熱中しているのか、理由が知りたい』という方もかなりいらしていました」と振り返り、「通常マンガやアニメの展覧会では、作品のハイライトになるようなシーンを展示することが多いですが、本展では“都市・東京”をテーマにすることで、こうした分野にさほど興味がない人にも楽しんでいただける内容にしております」と解説した。また国立新美術館の逢坂恵理子館長からは、「虚構と現実のハイブリッドな体験を、今回の展覧会を通して実感してもらうことができれば幸いです」と挨拶が述べられた。

「MANGA都市TOKYO」の前売券は7月7日まで展覧会Webサイト、チケットぴあにて販売される。展覧会Twitterアカウントも開設され、招待券が当たるTwitterキャンペーンが3月12日まで実施中だ。会期中にはコスプレイベントなども開催予定。なお11月21日から2021年1月17日にかけて、大分・大分県立美術館への巡回が決定している。

※5/26追記:新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」の開催は8月12日~11月3日に変更となりました。最新の情報は公式サイトにてご確認ください。

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「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」

会場:国立新美術館 企画展示室2E
会期:2020年7月8日(水)~9月22日(火・祝)10:00~18:00(金・土 10:00~21:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日(ただし7月28日、8月4日、25日、9月1日、22日は開館)
料金:当日 一般1600円、大学生1200円、高校生800円 / 前売・団体 一般1400円、大学生1000円、高校生600円
※中学生以下、障害者手帳をご持参の方(付添の方1名含む)は入場無料
※8月14日(金)~16日(日)は高校生無料観覧日(要学生証)

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