つんく♂が語る「テクノ歌謡はルアーフィッシング」

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「『テクノ歌謡』ディスクガイド」の内容を紹介する短期集中連載。最終回は、つんく♂インタビューの一部をお届けする。
シャ乱Qのボーカルとして活躍するなか、1998年にモーニング娘。のプロデュースを開始したつんく♂。自分の作り出すサウンドがある種の“本堂”になってしまった反動として、テクノ歌謡の流れに属する楽曲が生まれてきたと語っている。

書籍に掲載されるつんく♂インタビューの続きでは、松浦亜弥「ね~え?」でタッグを組んだ小西康陽のことや、Perfumeについての見解も披露。稀代のアイドル・プロデューサーが語る各楽曲の秘話には一見の価値あり。

書籍に掲載されるつんく♂インタビューの続きでは、松浦亜弥「ね~え?」でタッグを組んだ小西康陽のことや、Perfumeについての見解も披露。稀代のアイドル・プロデューサーが語る各楽曲の秘話には一見の価値あり。

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モーニング娘。をはじめとする女性アイドルへのプロデュース業で知られるつんく♂。彼が手がける膨大な楽曲の中には、テクノ歌謡的要素を感じさせるものが少なくない。自身のテクノ観からYMO、Perfumeまで話は大いに広がった。テクノ歌謡とはルアーフィッシング!?(インタビュー・文/鈴木亮一)

サブストーリーとして生まれたテクノ歌謡

――テクノ歌謡というジャンルは、歌い手がアイドルという要素が大きいと思うんです。つんく♂さんから見て、アイドルがテクノを歌うということはどういうものだと思っているのでしょうか?

つんく♂:「モーニングコーヒー」から始まって、「LOVEマシーン」でモーニング娘。ブームができていったんですけど、何か本道になってしまったわけですよ。女性ポップスグループのサウンドは「LOVEマシーン」のようなものだと。そのちょっと横で「ごめん、ちょっと楽しんでいい?俺?」みたいなものが、プッチモニやミニモニ。、その後の「レインボーピンク」だったりするんです。曲調や歌詞のテーマがぶっ飛んでいても全然セーフみたいな。こう、サブストーリー的なもので、「もしコケても楽曲は褒められるよね、これだけ凝ってたら」とか、「ヒットしなかったけど面白かったよね」というポジションじゃないかなと。それがいわゆるテクノ歌謡と呼ばれているものの原点じゃないかなあという気はしますね。

――その意識は、他のアーティストに提供する場合にも共通している?

つんく♂:そのジャンルのカリスマとされている人たちが、下界に下りてきて、ありえない人とジョイントすることが本来の面白みだと思うんです。「あのYMOが、欽ちゃんと組んで、イモ欽トリオ!?」みたいな。自分たちで模倣品を作って、笑いながら「あー、売れてる売れてる」みたいな。自分たちの音楽をやってコンサートをやれればそれでよいんだというスタイルの人たちが、「ちょっと変えてみたいな、冒険したいな」というときに別物としてやるものですね。

――YMOの名前が挙がりましたが、どのような印象を持っていましたか?

つんく♂:やっぱり「ライディーン」は大ヒットしたものとして記憶にありますよね。それはヨーロッパでも評価されている北野武監督の映画のようなもので、大きな意味で日本の“大衆”を捉えるものではなかったけど、マニアックが裏返って大衆になったというような。なぜYMOにブレイクする力があったかというと、僕の分析だと、曲の持っているリズムが本当にお祭りや音頭なんですよね。「ライディーン」なんかは特にそうだけども、「♪トントントトトーント、スットントコトコスットントコトコ」って。ズッチダッチズッチダッチっていうリズムじゃなくて、ちょっと跳ねているんです。そういうものは非常にうまくブレイクするなあと感じることが多いですね。運動会で聞こえてくるようなリズム。かけっこ競走に似合う曲というんですかね。

つんく♂楽曲の中で発見するテクノ歌謡

――なるほど。他に80年代の曲では、たとえば筒美京平さんの曲についてはいかがですか?

つんく♂:京平先生も時代をすぐ捉えますから、やっぱりうまいですよね。ただ、YMOと逆で、リズムよりも先にメロディーが曲を引っ張っていくんです。イントロとかにスパイスとしてなんとなくテクノっぽいフレーバーを入れていく。この差はすごく大きくて、できあがったものはよく似ているけど、まったく違う種類のものなんです。

――つんく♂さんご自身はどのような作り方をされるんでしょうか?

つんく♂:僕はメロディーが先なので、どちらかと言うと京平さんタイプの書き方をしていると思います。頭の中で鳴っているリズムをアレンジャーに伝えることはありますけど、リズムから作っていくタイプではないですね。だから、リズムがいかにアッパーでも、メロディーが泣いていれば泣いてくる。やっぱりメロディーって大事なポイントだと思いますよ。

――プッチモニの「DREAM & KISS」という曲がありますが、これはYMOを意識されたようなアレンジですよね。

つんく♂:そうですね。高橋幸宏さんが作ったらどうなるかなくらいのイメージで。そのときは、なるべく80年ごろのテクノを持ってきて、レトロ感覚で楽しもうというのがテーマでしたね。編曲をお願いした小西貴雄さんもYMO世代なので、熱く一晩語って「わかったよ」と。楽しそうに作ってきてくれた記憶がありますね。(書籍に続く)

※関連記事:
・[集中連載] あの3人が語る「テクノ歌謡と私」
・鈴木慶一が語る「テクノ歌謡は僕らの砂場だった」
・小西康陽が語る「ベンチャーズとYMOと日本人

本書で紹介している主なつんく♂作品

・プッチモニ。「DREAM & KISS」(1999年11月25日リリース、「ちょこっとLOVE」収録)
・ミニモニ。「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」(2001年1月17日リリース)
・重ピンク、こはっピンク「レインボーピンク」(2006年2月15日リリース、モーニング娘。「レインボー7」収録)
℃-ute「大きな愛でもてなして」(2006年7月9日リリース)
キャナァーリ倶楽部「SWEET & TOUGHNESS」(2007年5月3日リリース)
松浦亜弥「ね~え?」(2003年3月12日リリース)

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読者の反応

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もう、10年前の事だから
現在からみたら、更に加筆する部分とかも有るのかな...

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