Bimiのメジャー1stフルアルバム「R」がリリースされた。
「R」は「Reborn」「Restart」「Reply」、そしてBimiの本名「Ryota」の頭文字をタイトルに据えたアルバム。2025年4月28日に27歳の誕生日を迎えるBimiが新たに生まれ変わることをテーマに完成させた。客演としてWhoopee Bomb、呂布カルマ、YUKI(MADKID)、椎名佐千子、Sit(COUNTRY YARD、mokuyouvi)、新藤晴一(ポルノグラフィティ)が参加している。
Bimiにとって、墓石や墓標のようなアルバムになったという「R」。新章への突入も示す本作について、Bimiにじっくり話を聞いた。
取材・文 / 小松香里撮影 / 佐々木康太
理想像を一度破壊して
──メジャー1stアルバム「R」はBimiさんにとって渾身の1作になったのではないでしょうか。
そうですね。やり切った手応えはあるんですけど、かなりいろいろとジャンルレスに詰め込んだので、皆さんの反応が怖いですね。自分の好きな曲だけで構成した高校生のプレイリストみたいなアルバムになりました。
──インディーズ時代からBimiさんのクリエイティブにとって重要な要素であった“27クラブ”をサブテーマにして、27歳の誕生月にリリースすることにした理由は? “27クラブ”は、才能のあるアーティストや俳優が27歳で命を落とすケースが多いことに由来した言葉ですよね。
もともと15、6歳くらいの頃から27歳をひと区切りとして考えてたんですよね。だから墓石や墓標のようなアルバムになったと思います。
──2022年にリリースした「27th」の“味変”(リメイク / リアレンジ)バージョンも最後に収録されています。27歳を節目にするという気持ちはアルバム制作にどんな影響を与えたと思いますか?
27歳まで追いかけてきた理想像を一度破壊して、幅広い音楽に手を出せました。アルバムに入ってる(新藤)晴一さんが書いてくれた「ゴースト」というラブソングや、自分が書いたバラード「Nemo」は昔だったら歌わなかったと思います。27歳までがんばって突っ走ってきた今までの自分も取りこぼすことなく、新しい可能性に賭けることができたアルバムだと思ってます。
──ポルノグラフィティの新藤さんをはじめ、たくさんのゲストを迎えたのはどうしてですか?
自分だけでもいろいろな曲は作れますが、幅広いジャンルの人と組むことで「いろんなガワで戦えますよ」と自分の音楽スキルを提示できるし、Bimiが好きな人にとってはいろんな曲が聴けて楽しいんだろうなと。あと、これだけ名だたる人たちが集まってくれたことは自信にもつながりました。改めて、1人で凝り固まって作る必要はないと気付けて、すごくありがたかったです。
──特に刺激的だったコラボと言うと?
これまで年下と曲を作る機会があまりなかったので、Whoopee(Bomb)くんですかね。レコード会社のつながりで紹介してもらって。Bimiのライブを観てくれたし、俺もWhoopeeくんが出てた「ラップスタア誕生!」を観て「面白いな」と思っていたので声をかけました。タイトルを「百鬼夜行」にして、ヴァース蹴ってフックも入れてデモを送ったら、Whoopeeくんから二つ返事でバースが返ってきたので、それを入れちゃおうっていう感じで。
──人間の欲望にフォーカスを当てて曲を作ってきたBimiさんにとって「百鬼夜行」は魅力的なテーマだったんでしょうか?
そうですね。ラッパーとかカウンターカルチャーに触れてる人たちは世間からは好まれなかったりもするので、例えるなら妖怪みたいだなと思ってて、ラッパーとマイクリレーをしたらこうなるんじゃないかなと想像しながら作りました。この曲は今後プロジェクトのようにもっと広げていきたくて、ビートと俺のヴァースは変えずに、いろんな人をフィーチャーして展開していきたいなと思ってます。
俺はこのまま輝き続ける
──一方、上の世代のラッパーとして呂布カルマさんを招いた「無敵」が「百鬼夜行」の次に収められています。
呂布さんとはどっちもSNSで炎上しているという共通点があって(笑)、悪ふざけもしながら曲を楽しく作れましたね。クラシックの「ボレロ」をサンプリングしていて、もともと「ボレロ」は発表された当時「これはクラシックじゃない」ってけっこう叩かれたそうなんですけど、今は幅広く愛される曲になった。「無敵」は「ボレロ」のトラックに乗せて、2人でインターネットにこもってる人たちの痛いところを突いていった曲です。こっちは顔も名前も出してるのに、ネットで誹謗中傷してくる人の大半はどっちもさらしてないわけだから、同じ土俵に立ってると思わないほうがいいですよっていう。
──4曲目のMADKIDのYUKIさんをフィーチャーした「Bright」はメロディアスなラップからポエティックなラップに展開します。
YUKIくんとは俳優の仕事で一緒になったんですけど、マインドが似てるなと思って「一緒に曲をやろう」と誘ったら「やりたい」と言ってくれました。せっかく2人でやるからには、YUKIくんが普段出していないようなダーティな部分も表現したいなと思って、「マジごめん。敵作るかもしれないけど、赤裸々に汚いとこも見せたラップしてくれない? 俺もそういうラップ書くから」ってお願いして。そうしたらドンピシャなリリックを書いてくれました。タイトルは「Bright」だけど泥臭くて汚れてるイメージの曲になりましたね。
──かなり赤裸々に生き様が書かれてますよね。
ダイヤモンドのブリリアントカットみたいに傷が付けば付いた分だけ光輝くっていう、No Pain No Gainみたいなものを題材に作りました。俺は反省や傷を自分の中でポジティブに変換できてるから、「俺はこのままステージで光り輝き続けます」みたいな、決意も込めた曲ですね。
──YUKIさんのリリックによって、YUKIさんへのイメージは変わりましたか?
一緒になった現場で彼なりの反骨心を感じていたので、イメージ通りでしたね。彼もこういう気持ちを吐き出す場所を探してたんだろうなって。最初YUKIくんのリリックはもうちょっときれいにまとまりすぎていたんです。でも俺のバースを送ったら「刺激受けたわ、書き直すわ」と言ってくれて、こうなりました。おそらく彼も、俺がどれぐらいのさじ加減のメッセージを書くか探ってたと思うんです。結果、自分がイメージしていた通りの曲に仕上がってよかったです。
銚子の先輩を呼んで
──2022年にBimiさんが発表した「軽トラで轢く」は演歌調の楽曲ですが、演歌歌手の椎名佐千子さんを呼んで「軽トラで轢く-味変- feat.椎名佐千子」としてリリースするのには驚きました。
これは完全にレコード会社の力を使わせてもらいました。スタッフに「アルバムに入れる味変は『軽トラで轢く』がいいんじゃないですかね。演歌歌手の方を呼んで」と言ったら、本当に椎名さんをブッキングしてくれたんです。あとから発覚したんですが、椎名さんは俺の地元の銚子にある高校の先輩だったんですよね。芸能科もないし、しかも当時は全校生徒300~400人ぐらいしかいない高校だったので驚きました。
──すごいですね。
タイトルにも歌詞にも「軽トラ」って言葉が出てきますが、銚子は軽トラがめっちゃ走ってるんです。だから椎名さんも想像して歌いやすかったんじゃないですかね(笑)。もともとの「軽トラで轢く」は演歌風に歌ってましたけど、椎名さんのおかげで本物の演歌になった。さらにゴージャスになって、夢を見てるみたいな感覚でした。
──「All the things」ではCOUNTRY YARDのSitさんをフィーチャーしています。
音楽をやり始めた頃にハマってたのがメロコアなので、そのジャンルのレジェンドであるSitくんが参加してくれたのはすごくありがたかったです。プライベートでつながりがあって、お互いのライブを行き来する関係性なんです。Sitくんが「Bimiくん、一緒に曲を作ろうよ」と言ってくれて、「アルバムまで待ってください」と伝えていたのがやっと叶いました。高校時代に「バンドで有名になってやろう」と思ってた気持ちがよみがえってきて、かなり熱中しながら作りましたね。だからBimiとしては珍しく一貫して前向きな曲になりました。
──曲もさわやかですし、歌詞も前向きですよね。
もう青春ですね。部活の準備体操とかで流してほしいです。
次のページ »
ラブソングは歌わないけど、晴一さんの曲なら