サバシスターが4月16日に3rd EP「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」をリリースした。
今作にはサバシスターのアイデンティティとパンクスピリットを詰め込んだタイトルトラック2曲「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」「My girlfriend is PIZZA OF DEATH II」と、2025年1月1日に多くの家庭のお茶の間でも流れたであろうau「みんなでハピろー!」編CMソングの「ハッピーなんて」、バンド初のアニメタイアップとなるテレビアニメ「宇宙人ムームー」のオープニング主題歌「ふしぎなきみ」の計4曲が収録されている。
サバシスターが今作で表現したかったことは、単なるジャンルの寄せ集めでも、リード曲を際立たせることでもなく、「同じような曲が2曲入っている」というユニークさを押し出した、彼女たちらしい姿勢そのものだろう。Oi!パンクとスカパンクを軸にした「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」の“I”と“II”で彼女たちは、PIZZA OF DEATH愛と遊び心を爆発させつつ、変わりゆく“彼女”を嘆く男の子の視点を描いている。一方、タイアップ曲では作品に紐づくテーマを生かす形で楽曲を仕上げ、バンドとしての新たな可能性を引き出している。そんなサバシスターの現在地を、なち(Vo, G)を中心に、るみなす(G)、ごうけ(Dr)の3人が語ってくれた。
取材・文 / 小林千絵撮影 / るなこさかい
EPに同じ曲が2曲?
──新作「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」は、1曲目が「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」、2曲目が「My girlfriend is PIZZA OF DEATH II」と、トラックリストだけで興味を引きます。曲名に「PIZZA OF DEATH」が入っているのは、BBQ CHICKENSの「Pizza of Death's Theme」(2002年)以来なんじゃないかと。
なち(Vo) 確かに。
──まずはこの2曲について聞かせてください。基本的な歌詞やメロディは同じで、「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」はOi!パンク、「My girlfriend is PIZZA OF DEATH II」はスカパンクのアレンジになっています。これはPIZZA OF DEATHの曲を作ろうと思って作り始めたのでしょうか? それとも「I」「II」というシリーズ曲を作りたいというところから?
なち これは、Oi!パンクをサバシスターなりにやってみたいというところから始まりました。そこに裏打ちのスカパートも入れたくて、最初は1曲に全部を詰め込もうとしていたんですが、スタジオでいろいろ試しているうちに、同じ曲でバージョン違いが2つあっても面白いよねという話になって。
──PIZZA OF DEATHの社長・Ken Yokoyamaの楽曲にも「Ricky Punks」「Ricky Punks II」「Ricky Punks III」というシリーズ楽曲がありますが、1つの作品に1と2が両方入ることは珍しいですよね。
なち はい。最初はシングルに1つ入れて、もう1曲は次の作品に入れる案もあったんですけど、“1つのEPに同じ曲が2つ入っている”という面白さを大事にしたくて。
Oi!パンクはTHE SESELAGEESで知った
──そもそもサバシスターなりのOi!パンクを作りたいと思ったのは、どうしてだったのでしょうか?
なち Oi!パンクを知ったきっかけはTHE SESELAGEESで、そのバンド以外にも好きなバンドがいっぱい出る「KAPPUNK」というサーキットイベントに1人で遊びに行ったんです。そこにはOi!パンクのバンドがたくさんいて、お客さんはトゲトゲの頭で革ジャンの人しかいないみたいなサーキットで。それこそ「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」のミュージックビデオの格好みたいな人たちばっかり。そういう人たちを見て、サバシスターでもやってみたいなと思いました。
──やってみたいと思ってすぐに作れました? それともいろいろ研究をして?
なち Oi!パンクなので「スリーコードで進んでいく」というところを大事にしたら、わりとすぐにできました。ライブで観た曲のコードが頭の中で鳴っていたので、家に帰ってギターを触りながら「このコードか」ってメモしたりして。
──ライブを観て、頭の中に残っている音や余韻を元に。
なち はい。ライブを観に行くことは昔からずっと好きだし、行くと自分もライブをやりたくなる。そうすると、ライブをやるために曲を作りたいと思う。ライブはインプットするために大事な時間です。
──るみなすさん、ごうけさんは、Oi!パンクの曲を作ると聞いたときにどう思いましたか?
るみなす(G) 「覚悟を決めろ!」では初めてツービートに挑戦したし、ちょっとずついろんなことにチャレンジしていっているので、今回もすごくワクワクしました。Oi!パンクは、聴いてはいたけど、自分では弾いたことのないジャンルだったので、音作りもエンジニアさんといつも以上に相談しました。難しくてずっとやってこなかったピッキングハーモニクスを取り入れたりして、サバシスターなりのOi!パンクができたんじゃないかなと思います。
ごうけ(Dr) あの……Oi!パンクっていうのはジャンルですか? 「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」がOi!パンク? 「My girlfriend is PIZZA OF DEATH II」がOi!パンク?
──「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」がOi!パンクですね。
ごうけ そうなんですね。ごめんなさい。全然通っていないジャンルなので……。だから本当にデモを聴いて自分の中でイメージしたドラムを付けただけという感じで。
──逆に「Oi!パンクだから」みたいなことは意識しなかったということですよね。
ごうけ はい、まったくしていないです。本当に聴いたイメージで。お客さんにも歌ってもらうパートがあったので、そこは「ここで歌いたい」という衝動が生まれるようにドラムを考えたりしました。
「彼女はPIZZA OF DEATH」と言える彼氏は3人
──そんなOi!パンクに乗っているのは、パンクに染まっていく彼女の変化を嘆くという、かわいらしい歌詞です。
なち サバシスターはPIZZA OF DEATH唯一のガールズバンドなんです。つまり「俺の彼女はPIZZA OF DEATHなんだぜ」と言える彼氏って、今この世に3人しかいないんですよね(笑)。そう言える男の子ってカッコいいな、うらやましいなって思って。それを歌詞にしたくて書き始めました。
──「PIZZA OF DEATH」をタイトルや歌詞に入れることに対してプレッシャーみたいなものは?
なち そこはあんまり深く考えていなかったかも。この曲は、PIZZA OF DEATHとかポニーキャニオンでいろいろやらされている彼女と付き合っている彼氏の歌で。そこに染まっていく彼女を遠く感じる、みたいなことを歌いたかったんです。もちろん私たちはPIZZA OF DEATHが大好きだし、リスペクトもしているけど、この曲の本質はそこじゃないので、ラフに使いました。
──一応確認しておきますが、皆さんはこの歌詞のように、マネージメントやレコード会社に無理やりいろいろなことをやらされてはいないですよね……?(笑)
なち ないです。大丈夫です(笑)。
──安心しました。ではこの2曲の歌詞や楽器のフレーズで、特に気に入っているところを教えてください。
なち 私はサビの歌詞です。文字だけで見ると、バカバカしいくらい同じことしか言っていなくて(笑)。曲全体で「!」が10個くらい出てくるところもバカバカしくて、でもカッコよくて気に入っています。1と2で違いが出るように、コーラスもいろいろ考えたし、追いかけるようなフレーズを作ったり叫ぶパートを作ったり。やりたいことを全部盛り込めて、私の中では今まで書いた曲の中で一番好きな曲ができたなと思っています。
るみなす 私が気に入っているのは無印のほう(「My girlfriend is PIZZA OF DEATH」)のBメロ。基本的にロックなサウンドなんですけど、そこだけアルペジオで刻んでいるのがいいなって。セクションが変わった感じがうまく出せたなと思うのでお気に入りです。
ごうけ 私はスカが初めてだったので、スカっぽいところは全部好きです。その中でも特に「My girlfriend is PIZZA OF DEATH II」の最後、IIだけ1行歌詞が多いところが好きです。
るみなす ちょっと戻るんだよね。
ごうけ そうそう、その“戻りスカ”が好き。きっと楽しいからみんなに踊ってほしいな。
──ライブでやっているところを早く観たいですね。
一同 早くやりたい!
なち ライブで同じイントロが2回続いたら面白いと思っているので、基本的には1と2を続けてやりたいです。でもセトリのいろんなところに入り込める曲だと思うので、長く活動を続けていく中で、ライブでどう変化していくのかも楽しみです。
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