二丁目の魁カミングアウト インタビュー|現体制になって4年半、グループ内で起きた意識改革

「ゲイでもアイドルになれる」をコンセプトに活動しているゲイアイドルの二丁目の魁カミングアウト。今年で結成14周年を迎え、特に女性アイドルシーンで広く名が知られている彼らだが、ここに来てメンバーの意識に変化が起き、その影響がパフォーマンスのクオリティやライブの動員に表れているという。ミキティー本物、ぺいにゃむにゃむ、筆村栄心、日が紅の4人による現体制になって約4年半、今の二丁魁(にちょがけ)はどんなモードやマインドで活動しているのだろうか。グループ結成の経緯から、今年11月10日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催されるワンマンライブ「we are JAPANESE TOP GAYIDOL」に懸ける思いまで、多岐に渡って話を聞いた。

取材・文 / 小松香里撮影 / 藤記美帆

公演情報

二丁目の魁カミングアウト 全国ツアー「JAPAN GAY TOUR 2025」

  • 2025年5月1日(木)東京都 Spotify O-WEST
  • 2025年6月14日(土)愛知県 SPADE BOX
  • 2025年7月5日(土)福岡県 INSA
  • 2025年8月9日(土) 宮城県 darwin
  • 2025年8月24日(日)新潟県 NEXS NIIGATA
  • 2025年9月28日(日)大阪府 ESAKA MUSE
  • 2025年10月25日(土)北海道 函館club COCOA

二丁目の魁カミングアウト ワンマンライブ「we are JAPANESE TOP GAYIDOL」

2025年11月10日(月)東京都 EX THEATER ROPPONGI

今のメンバー4人がそろうまで

──二丁目の魁カミングアウトは2011年、ミキティー本物さんを中心に「ゲイでもアイドルになれる」というコンセプトのもと結成されました。当初はハロー!プロジェクトの振りコピダンスユニット・二丁ハロとして始動したわけですが、当時どんな思いで活動を始めたのか、改めて振り返っていただけますか?

ミキティー本物 最初は新宿二丁目でただ踊っていただけなんですけど、アップアップガールズ(仮)とダンスバトルをするという企画でお声がかかり、そのために1日限定ユニットを組んだんです。それでステージに立ってみたら、自分たちのファンは一切いないのにお客さんがすごく楽しそうに見てくれて、「音楽には性別とか、ゲイかゲイじゃないとか関係ないんだな」と思ってアイドルになろうと決意しました。

二丁目の魁カミングアウト

二丁目の魁カミングアウト

──そこからどうやってメンバーを集めたんですか?

ミキティー 初期メンバーは私含めて5人いたんですが、初ステージのあとに「アイドルとして真面目に活動していきたい」と伝えたら、ほかの4人から「真剣に仕事としてはやっていけない」と言われて。でも「ちゃんとしたメンバーが見つかるまで付き合うよ」と言ってくれたんです。そこから新たなメンバーを探し始め、オーディションをやって、2期メンバーとして出会ったのがぺいちゃん。あとの2人(筆村と日が紅)は5期メンバーのオーディションで加入しました。

──ぺいさんは2013年に加入しましたが、当時どのような思いがあったんでしょうか?

ぺいにゃむにゃむ 生きていく中で「自分って何もない。何かを見つけたい」と思っていて、そんなときに出会ったのが二丁ハロでした。イベントでパフォーマンスを観たらすごくキラキラしていて、もともとアイドルが好きだったので「アイドルになりたい。二丁ハロになりたい」と思ってオーディションを受けました。そして二丁ハロとしての活動が始まり、人に愛されることのうれしさを感じて自分の選択に間違いはなかったなと思いましたね。いっぱいの愛も欲しいし、ずっとの愛も欲しい。この活動でたくさんの人に出会って勇気をもらったり、逆にあげたりできるのが本当にうれしいです。

ぺいにゃむにゃむ

ぺいにゃむにゃむ

──2020年に筆村栄心さんと日が紅さんが加入したのは、どういう経緯で?

筆村栄心 僕はゲイであることをカミングアウトしないまま声優として活動していたんですが、ファンの方がお手紙で二丁魁のことを教えてくれたことがきっかけでライブに行くようになって。二丁魁のライブはメンバーが全員すごくキラキラしていて、どんどん憧れの対象に変わっていきました。「いつか自分もああいうふうになりたいな」と思っていたとき、5期メンバー募集のオーディションが開催されたので、これを機会にカミングアウトしようという決意とともにオーディションを受けました。

日が紅 僕もオーディションを受ける前に二丁魁のライブを観たことがあって、それで興味を持ってオーディションを受けてみました。面接でミキ(ミキティー本物)さんに、「目標はなんですか?」と逆に聞いてしまって。そうしたらミキさんが「二丁目の魁カミングアウトの活動が私にとっての人生。武道館に立ちたいとか夢はたくさんあるけど、何より自分たちの居場所を作っていきたい」と答えてくださり、「この人についていきたい」と強く思いました。そして、ありがたいことにオーディションに合格して加入に至りました。

日が紅

日が紅

結成14年目の意識改革

──筆村さんはカミングアウトをして二丁魁の活動を始めたことで、内面的な部分に何か変化はありましたか?

筆村 自分の中ではカミングアウトをする前とあとで内面的に何ひとつ変わってないと思っているんですが、もともと僕のことを知ってくれている方からは「表情がすごく明るくなったね」とか「楽しそうに活動していてうれしい」と言ってもらえるので、知らないうちに変化できているのかもしれません。

筆村栄心

筆村栄心

日が紅 僕は加入前、自分から周りに「ゲイです」と言っていたわけではないんですが、自然体で生活してたので、大きく変わったことは特にないですね。でも、以前は物事が円滑に進むことを意識して、何かと遠慮しがちな性格だったんですよ。二丁魁の活動をしていく中でファンの方からいろんな言葉をかけてもらったり、ミキさんに「あなたが先頭に立って幸せをつかみ取らないでどうするの。そうじゃないと人に幸せはあげられない」と言われたりしたことで、もっと欲張りに生きようと思うようになりました。

ミキティー でもまだ遠慮してるよね。もともと私たち4人は「自分が一番人気になりたい」とか「目立ちたい」というライバル心みたいものが全然なくて。それってたぶん、プロデューサーである私がそういう性格じゃないからなんですよね。たとえ「このパートが歌いたい」と思っても、メンバーみんなその気持ちを押し殺してるようなグループだった。でも、メンバー全員が「別に私は後ろのポジションでいいや」って考えてるグループなんて売れないよなと気付いて、1年くらい前にみんなで朝まで話し合いました。そこで「本当にアイドル界のトップをつかみに行きたいんだったら、まず4人の中で一番になるという気持ちを持ってないとダメだよね」という話になり、意識が変わっていったんです。結成14年目にして初めてシングルを出したり、新しい挑戦をどんどんやっていきました。実は、2人(筆村と日が紅)が加入して4年半ぐらいライブの動員がずっと変わらなかったんですよ。減らないのはいいことだけど、増えないのもよくないじゃないですか。でも、今年2月のZepp Shinjukuワンマンは動員がかなり増えたんです。目標の1200人には届かなかったんですが、約1000人のお客さんが来てくれて。それは私たちの意識が変わったことが大きかったのかなと。

ミキティー本物

ミキティー本物

筆村 自分はもともと「一番になりたい」とか「売れたい」という気持ちが強いほうだったんですが、二丁魁の居心地がすごくいいから安心しきっていたんです。でも、みんなとの話し合いの中で「限りある時間の中で最大限のことをしないとダメだ。この居場所がずっとあるのが当たり前じゃないし、この居場所を守っていくのもよくしていくのも、新しく加入した僕でありたい」と強く思いました。

日が紅 みんなで話し合う中でミキさんから「もっと意識改革しなきゃ。あなたが引っ張ってかなきゃダメだよ」と言われたときに、「僕がもっと前に出なきゃいけないんだ。このままだと僕にしかできない表現が見つからないまま終わってしまう」と思ってギアを上げました。

ミキティー みんなの意識が変わると、まずパフォーマンスに変化が出るんです。私自身で言うと、プロデューサーだし事務所の社長だし振付も作詞も作曲も自分でやってるから「別に四番目の人気でいい」みたいな気持ちがあったんです。でもリーダーがそういう姿勢だとほかの3人も「一番になろう」とは思えないよなと気付いてからは、「がんばって一番人気になろう」と考えるようになりました。私はみんなより声のキーが低いから目立たないパートを担当することが多かったんですが、ボイトレに通って高いキーも出せるようになって。自分のよさをもっと出していこうと意識しています。そうするとステージに立つ姿勢も表情もパフォーマンスも何もかも変わるんですよね。メンバーそれぞれが変わっていくことで、とても自信にあふれた二丁目の魁カミングアウトになりました。そしてライブの動員もちょっとずつ増えていっています。自分たちでも、昔と比べてかなりライブがよくなったのがわかるよね?

二丁目の魁カミングアウト

二丁目の魁カミングアウト

ぺいにゃむにゃむ わかりますね。みんなの意識が変わって前よりプラスのパワーが強くなっている気がします。陽のパワーを感じることが多いですね。