れん「ソロ活女子のススメ5」オープニングテーマでメジャーデビュー、サッカー少年はなぜ音楽に目覚めたのか

現役大学生シンガーソングライター・れんが新曲「淡色の幸せ」でTOY'S FACTORYよりメジャーデビューした。

デビュー前から高い歌唱力や端正なルックスが話題となり、SNSの総フォロワー数は150万人、ストリーミングサービスでの楽曲総再生数は1億1000万回を超え、若い世代を中心に人気を集めているれん。音楽シーンに彗星のごとく現れた彼は、江口のりこが主演を務めているテレビ東京系ドラマ「ソロ活女子のススメ5」のオープニングテーマとして「淡色の幸せ」を書き下ろした。

音楽ナタリーでは、メジャーデビューを控えるれんに初インタビュー。サッカー少年だった彼が音楽に目覚めたきっかけや、創作活動で大切にしていること、「淡色の幸せ」制作の裏側について聞いた。

取材・文 / 西廣智一

音楽よりもサッカーに夢中な少年時代

──れんさんの楽曲をいろいろ聴かせていただきましたが、まず声が素敵だなと思いました。昔から歌声を褒められることが多かったんじゃないですか?

ありがとうございます。幼少期から家ではずっと歌っていたみたいで。ちっちゃい頃から家にカラオケ機があったんですけど、歌うと親や親戚から褒められることが多かったですし、童謡の「もみじ」を歌って100点を獲ったことは今でもよく覚えています。

──物心ついたときから身の回りには音楽があふれていた?

そうですね。家族も音楽が大好きだったので、車の中でもいろんな曲が流れていました。母親が工藤静香さんとか、当時流行りのK-POPを、父親はB'zとか氷室京介さんをよく聴いていて。父親の影響で、BOØWYの「MARIONETTE」は今でもたまに聴いたりします。

──ご自身がよく聴いていたアーティストと言うと、どなたになりますか?

小中学校の頃はSEKAI NO OWARIとかゲスの極み乙女とかONE OK ROCKとか、邦ロックをよく聴いてましたが、洋楽もちょくちょく聴いていて。年齢のわりにいろんなジャンルを知っているほうだと思います。

れん

──人前で歌うようになったのは、いつ頃ですか?

中学の文化祭で1回だけバンドを組んで、そこでONE OK ROCKを歌ったのと、親戚の結婚式でONE OK ROCKの「Wherever you are」を歌ったくらいかな。その頃はサッカーばかりしていたので、音楽よりもサッカーに夢中でしたね。

──当時のれんさんにとって、音楽は聴くものとしてそばにあったと。

そうなんです。だから、サッカーの練習に行くときとか合宿の合間とか、完全に移動の時間に聴くものっていう感覚でした。

転機は「ナオトフェス」

──そんな中、れんさんは2021年9月、高校3年生のときにご自身が作詞作曲を手がけたオリジナル曲「嫌いになれない」を配信リリースしています。そもそも音楽活動を本格的に始めたのはいつ頃、どんなきっかけだったんですか?

高校2年の頃にコロナ禍に入ってサッカーができなくなって、家に閉じこもる時間が長く続いて。それで、何もやることがなくなっちゃったからギターを始めてみたんです。で、ギターの弾き語りを続けていたら、ナオト・インティライミさんがコロナ禍に定期的に行われていた「ナオトフェス」という配信ライブに、優里くんと一緒にゲスト出演することになって(2020年10月配信のTikTok LIVE「ナオトフェスvol.4」)。それを観ていた今の事務所の方から声をかけてもらって、本格的な活動が始まりました。

──コロナ禍があったから音楽に夢中になれたと。では、作詞作曲もその頃から?

はい。最初は自分で曲を作るつもりはまったくなかったんですけど、事務所のスタッフさんから「自分の言葉、自分のメロディで歌えるに越したことはないよね。一度チャレンジしてみたらどう?」とアドバイスをいただいて。それまではサッカーしかやってなかったし、ギターも始めてまだ1年ちょっとぐらいの時期だったので、まずは見よう見まねで始めてみました。それで、最初に完成したのが「嫌いになれない」だったんです。

──えっ、この曲が初めて作ったオリジナル曲なんですか? アレンジャーさんの手が入っているとはいえ、とても処女作とは思えない完成度の高さなので、何曲も作ってきた中の1つだと思っていました。

確かに今思えば、自分でもよく書けたなと思います(笑)。でも、それはコロナ禍の自粛期間で家から出られなくて、1日中ギターの練習や楽曲制作に没頭できたのも大きくて。必死にギターを練習してコードを少しずつ覚えていくと、その流れで曲も浮かんでくるようになりましたし。「嫌いになれない」はたまたま好きなコードを弾いていたらあのメロディが浮かんできたので、運がよかったんですよ。歌詞に関しては、高校の2個上の先輩が失恋した話を電話で聞いて、そこでメモしたものを反映させたんですけど、奇跡的にすべてがうまくハマりました。

れん

私のことを歌ってるよね?

──ここまでハイペースに楽曲配信が続いていますが、音楽制作においてモチベーションになっているものは何かあるんでしょうか?

単純に音楽を作ることが楽しいからやっているだけで。ストレスもなく、自分が書きたい曲をただひたすら書いていたらここまで来ていたというだけなので、特にモチベーションとかは必要なかったんですよ。

──先ほど、2つ上の先輩からの電話の際、メモをしていたとおっしゃっていましたが……。

あとでその先輩から「あの曲、私のことを歌ってるよね?」と気付かれました(笑)。最初は「気まずいから(「嫌いになれない」を)聴くのやめる」と言われたんですけど、今では気に入ってくれているみたいです。

れん

──歌詞のモチーフは、れんさんの日常で起こっていることが中心になっているんでしょうか。

そうですね。自分が経験したことや実際に感じたことだったり、「嫌いになれない」のように周りの友達や先輩の体験談だったり。あとはアニメも好きなので、登場人物や物語から受け取った感情をテーマに曲を書いたりもします。基本的には、何かメッセージを届けようとかそういうことよりも、「誰しもこういう経験あるよな」と世代問わず幅広く共感してもらえるような歌を歌っていきたいと思っています。

──だからなのか、歌詞の言葉使いは等身大なんだけど、れんさんよりもかなり上の世代である僕が聴いても親近感を覚えることが多くて。

ああ、それは一番うれしいですね。話し言葉のようにラフなフレーズを使うことがけっこう多いですが、たまたまメロディにハマるワードやフレーズが親しみやすい言葉なだけなので、特に意識しているというわけではないんですよ。