OWV「Supernova」|1万3000字メンバー全曲解説&クリエイターコメントで深掘り

今年4月11日に結成5周年を迎えるOWVが、3rdアルバム「Supernova」をリリースした。

4つの“星”が眩い光を放ち、新たなステージへと向かうさまを表現した本作には、シングル曲「BREMEN」「LOVE BANDITZ」「Frontier」に新曲を加えた全10曲を収録。この作品でOWVは初めて楽曲制作に参加し、スタジオにこもってクリエイターとともにコライトに挑んだ。リードトラック「Supernova」をはじめとした5曲の新曲のクレジットにはOWV、またはメンバーの名前が刻まれている。

OWVのメンバーがクリエイティブ面に深く携わった本作。その全貌を解き明かすべく、音楽ナタリーでは1stアルバム「CHASER」、2ndアルバム「JACK POT」に続き全曲解説インタビューを行った。特集の最後にはアルバムの収録曲の作詞、作曲、振付に携わったRyosuke "Dr.R" Sakai、Yui Mugino、ZERO(YVES&ADAMS)、Joe Ogawa&Marcello Jonno、Ryusei harada、KAITA(Rht.)のコメントも掲載する。

取材・文 / 中川麻梨花撮影 / YURIE PEPE

「Supernova」全曲解説インタビュー

01. Swish

──今作は計5曲のクレジットにOWV、もしくはメンバーの名前があります。どういう流れで皆さんが制作に参加することになったんでしょうか?

本田康祐 アルバムのリードトラック「Supernova」と1曲目「Swish」のプロデュースをしてくださったRyosuke "Dr.R" Sakaiさんが、「曲を作るなら、ぜひメンバーも参加を」と言ってくださって。

佐野文哉 アーティストと一緒に作品を作り上げるのが、Sakaiさんの制作スタイルなんですよね。

浦野秀太 「OWVがこれからアーティストとして活動していくなら、これくらいはやってみたら?」と提案してくださって。僕たちとしてもずっと楽曲制作に携わりたかったので、「ぜひ!」と参加させてもらいました。

浦野秀太

浦野秀太

──では1曲ずつ詳しく聞かせてください。1曲目の「Swish」は、目の前にある壁を切り崩してどんどん前へと突き進んでいくOWVの姿が見えるような力強い楽曲です。最初から「1曲目にしよう」という気持ちで作った曲なんですか?

本田 アルバムの1曲目、ライブのオープニングを飾れるような楽曲をイメージして制作しました。「Swish」はアルバムの中では最後のほうに録った曲だったので、全体を見ながら曲を完成させていきましたね。

中川勝就 Aメロ、Bメロはまさに幕開け感があるというか、フワーッとメロディが広がっていくようなイメージで。サビはフックになる「Swish」というフレーズを繰り返すことで、覚えやすくてノリやすい感じにしています。

──作詞作曲にはRyosuke "Dr.R" Sakaiさん、OWV、そして作曲家 / ボーカリストのDaisuke Nakamuraさん、シンガーソングライターのYui Muginoさんの名前がクレジットされています。コライトはいろいろなやり方があると思うんですが、今回はどういうふうに楽曲を作っていったんですか?

中川 まず、Sakaiさんが一気にトラックを作って。ホンマに早かったです。1時間くらい。

佐野 僕らの目の前で、DTMで打ち込んで作っていくんですよ。「この方向性で合ってる? 何かあったら全然言って」と僕らと会話のキャッチボールを繰り返しながら。

本田 「こっちのほうがいいよね?」って、僕らの反応を見てくれたよね。

中川 それで「トラックができたから、今からちょっと歌ってみて」と言われて、僕たちが歌うみたいな。

──いきなり?

佐野 はい。各々、即興でメロディラインを付けました。歌詞はないから「ららららー♪」って。その中から、よかったメロディを採用して、つなぎ合わせて曲にしていくという流れでした。

本田 1人1ヴァースずつ歌っていったよね。僕らだけじゃなくて、MuginoさんとDaisukeさんもメロディラインを出していって。みんなでオーディションをやってる感じで、すごく楽しかった。

──「歌ってみて」と言われて、すぐメロディが出てくるものなんですか?

本田 「考えないでいけ」ってSakaiさんに言われましたね。

佐野 Sakaiさんが言うには、こういう場合ブースに入って固まっちゃう人もいるらしいんですけど、4人とも粗削りながらある程度は出せたと思います。僕らは日頃から替え歌を作る場面があったり、吉本興業に所属していることもあってか、突然話を振られて返さなきゃいけない場面が多いんですよ(笑)。そういうところで鍛えた瞬発力が生きたところはありますね。

──具体的には誰のメロディがどの部分に採用されたんでしょうか?

佐野 僕らとMuginoさん、Daisukeさんの計6人でバーッと出し合って、それが1曲の中に散らばってるので、どこが誰のメロディというのは明確には覚えていないんですよね。

本田 確かに散らばってるね。でも、サビには文哉のメロディが採用されてます。

佐野 サビのループするメロディね。

──中毒性のあるメロディですよね。

中川 今回の制作で、文哉はフックになるサビを作るのがうまいということに気付いたんですよ。

佐野 それはSakaiさんにも言っていただきました。これからもっとこういう機会を増やしてレベルアップしたいです。

佐野文哉

佐野文哉

本田 あと、2番のAメロは勝就が作って自身で歌ってます。

中川 やっぱり自分が出したメロディが採用されると、シンプルにうれしいですね。

佐野 歌詞に関しては、僕らがワードを出し合ってるのを聞きながら、Muginoさんが横でバーッとリアルタイムで書いてました。

中川 マジですごいんですよ。スーパーコンピューターみたい。

──サビのフレーズであり、タイトルになってる「Swish」というワードも佐野さんからメロディと一緒に出てきたもの?

本田 いや、メロディとは別でした。みんなでワードを出し合ったんですけど、「Swish」は誰の案だっけ?

佐野 実は「Swish」は俺が出したのよ。

浦野 そうだったっけ!

佐野 いくつかサビのフレーズの候補はあったんですけど、最終的にSakaiさんが「『Swish』でいいんじゃない?」って。

──「スイッシュ」という音が、メロディに乗せると気持ちいいですよね。

佐野 僕は英語に詳しいわけじゃないので、音の気持ちよさだけでワードを出しました。あとから英語が得意な勝就に「これ、どういう意味?」って聞きましたね。実は制作の順番的には1曲目の「Swish」よりも2曲目の「Supernova」のほうが先だったので、1回経験してるぶん、コライトの流れ自体は少しわかっていました。

02. Supernova

──リードトラック「Supernova」も、OWVが作詞作曲に携わっている楽曲です。

本田 「Supernova」は僕らが初めてコライトに挑戦した曲ですね。

──結成5周年を迎えた今のOWVの意思表明の曲だと受け取ったんですが、作る前にどういう曲にするか、メンバー間でテーマを擦り合わせたんでしょうか?

佐野 いや、擦り合わせてはいないです。最初に各々が今思うこと、感じている気持ち、歌詞に入れたいワードをざっくばらんに書いて、Muginoさんに送りました。それぞれ送ったので、ほかの3人がどういうことを書いたのかは知らなくて。でも、歌詞を見るとまとまってるので、4人とも向いているベクトルは一緒だったのかなと。

中川 僕らが送った言葉をもとに、最終的にMuginoさんが歌詞を構成してくれて。それぞれの言葉を咀嚼したうえで、ピースとして歌詞にちりばめて入れてくれています。

中川勝就

中川勝就

──それぞれMuginoさんにどんな言葉を送ったんでしょうか?

本田 僕はコラム的な文章を送りました。OWVを作ったときに周りから批判されたこと、そんな声をひっくり返したいと思ったこと……これまでの思いを長々と書いた記憶があるんですけど、実は何を書いたのかはけっこう忘れちゃって。

中川 僕も書いたテキストを探したんだけど、残ってないんだよ。

浦野 各々でバーッと思いを書いたもんね。

佐野 僕は好きな子に対するラブレターを……。

本田 そしたらお前の言葉、多分採用されてないよ(笑)。

浦野 「選ばれ待ち? What you gonna do」のところとか? それは意味が変わってくるわ(笑)。

佐野 もちろん冗談です(笑)。

本田 そうだ、僕はコロナ禍にデビューして、何もできなくなって悔しかった気持ちも書きました。それをMuginoさんが「冷たい静寂の世界に 産声上げた」というフレーズで表現してくれて。表現の仕方がすごくカッコいいなと思いました。

佐野 そういう表現を自分たちで出せるようにならなきゃいけないよね。

本田 コロナ禍を「冷たい静寂の世界」と表現するのは思いつかないな。

佐野 「激しいウイルスの世界」だったよ。

本田 まだ僕らはそう言っちゃうもんね。

──結成5周年ならではのOWVの軌跡を感じるようなフレーズも入っていますよね。例えば、1番Aメロの「Our Way to Victory」という言葉は、OWVというグループ名の起源ですし。そのあとに出てくる「破壊と創造」は、デビュー曲「UBA UBA」のコンセプトでした。

浦野 それはMuginoさんの遊び心です。

佐野 粋ですよね。

浦野 最初の「Countin' 5, 4, 3, 2, 1」も結成5周年にかかってるそうです。

──“超新星”を意味する「Supernova」というワードは、Muginoさんから出てきた言葉なんでしょうか?

本田 「Supernova」はそうですね。みんなの思いをまとめた結果、「Supernova」という言葉がハマったんだと思います。今作の制作や新しい出会いを経て、ここからまた進んでいって、いつかOWVに「Supernova」になってほしいという思いもあるのかもしれません。

──Muginoさんからのメッセージですね。

本田 MuginoさんもSakaiさんも、OWVのことを変えようとしてくれてるんですよね。「OWVをもっと上のステージに立たせたい」ということを、たくさんおっしゃってくれる。それがすごくうれしい。

──楽曲を提供するだけじゃなくて、OWVに対して「進化してほしい」「成長してほしい」という思いを持って一緒に曲を作ってくれたということですよね。

本田 本当にそうです。ダメ出しもたくさんあったんですけど、作詞作曲を一緒にやってくださる方の言葉は心に響きます。レコーディングに関しても、新曲はディレクションを作詞作曲をしてくれた方々にしてもらってるんですよ。皆さんの中に「自分が作った曲をこういうふうに歌ってほしい」というイメージがあって、その思いが直に伝わってきたのがアツかったです。

本田康祐

本田康祐

佐野 「Supernova」は1人あたり8時間くらいレコーディングしました。

──8時間も。それはどういうところに時間がかかったんですか?

佐野 Muginoさんからのニュアンスに関する指摘ですね。

中川 多分Muginoさんの中にみんなの声を入れた完成形のイメージがあって、それが形になるまでずっと歌い続けました。

浦野 Muginoさんは正解が出たあともレコーディングを続けますから。「まだいける!」「もっといい正解もあるかもしれないから、ほかのパターンも見てみたい」という。

本田 ワンフレーズを50回録ったりしました。いい修行でしたね。

中川 でも、もちろんテイク数は減らせたほうがいい。すぐに正解にたどり着ける表現力を身につけること。これからの目標はそこですね。

──「Supernova」のミュージックビデオでは、20人のダンサーと共演しています。ダンスの振付は「BREMEN」でもタッグを組んでいたKAITAさんですね。

佐野 今回はミュージックビデオ用とライブ用で2種類の振付を覚えたんですよ。サビの動きは一緒なんですけど、Aメロ、Bメロは全然違います。MVのダンスをそのままライブでやるとなると、毎公演20人ダンサーさんに来てもらう必要があるので(笑)。MVの撮影現場にはSakaiさんも来てくれました。

浦野 地方での撮影で遠かったのに。

中川 撮影がひと区切りつくまでいらっしゃいました。「Sakaiさんが作ったグループかな?」と思うぐらい愛を感じたよね。

本田 しかも、Sakaiさんは衣装やMVのディレクションの打ち合わせにも自ら参加してくださったんですよ。

──Sakaiさんとの出会いは、OWVにとってターニングポイントになるような、大きな出来事だったんじゃないでしょうか。

佐野 本当にそうですね。デビュー5周年というこのタイミングでSakaiさんに出会えてよかったです。

03. BREMEN

──「BREMEN」はオリコンのデイリーおよび週間チャート1位を獲ったシングルですよね。デビューシングル「UBA UBA」の売上枚数記録も更新しました。1位を獲ったときの心境はいかがでしたか?

本田 「BREMEN」はスタッフ陣も変わり“OWV第二章”というイメージで出した曲で。そのタイミングで1位を獲れたのは、今の自分たちを認めてもらえたような感じがしてうれしかったです。

佐野 僕ら3人(本田と浦野を指差して)はうれしかったんですけど、勝就に関してはどうかな……“アヒージョ事件”があったので。

中川 僕もすごくうれしかったよ! ただ、「BREMEN」=アヒージョの記憶があるのも確かです。

佐野 オリコンのデイリーチャート発表の夜は、4人一緒の仕事ではなかったので、それぞれ家や仕事の現場にいたんですよ。

本田 僕は30分前から「オリコンの結果、どうだろう……?」って、ずっとスマホを見ていました。もちろんほかのメンバーとスタッフさんもチェックしていたので、1位の結果が出て「やったね! じゃあ集まりますか!」という話になり、急遽インスタライブをやることになったんですよ。でも、1時間経っても、誰も勝就と連絡が取れなくて……「どうしよう? このままじゃ3人で配信することになっちゃう」とみんなで焦っていたときに、やっと連絡が取れたかと思ったら、「アヒージョを作ってました」ってのんきに言われて……。

中川 いや、僕たちはそれまでオリコン2位と3位が多くて、期待するのが少し怖かったところがあったんですよ。オリコン発表の日はたまたま1人で家にいて、いつも通り過ごしてたんです。それで、「アヒージョを食べたいな」と思って……。

佐野 まあ、そういうときもあるよな。

中川 家でアヒージョを作ってたら、着信がたくさん入っていて。「1位だよ!」って言われて、急いでみんなと合流しました。

──アヒージョは無事食べられたんですか?

中川 そのあと帰ってから食べました。もちろん冷めてましたけど、1位を獲ったあとのアヒージョは、人生で一番おいしかったです。今でも忘れられない。星の付いたお店でも、あの味は超えれないだろうな。