新浜レオンが4月16日に7thシングル「Fun! Fun! Fun! / 炎のkiss」をリリースした。
前作「全てあげよう」のリリース記念インタビューで「NHK紅白歌合戦」出場への思いを熱く語った新浜。同作はロングヒットし、昨年末に新浜は有言実行で「紅白」初出場を果たした。
知名度をぐんぐんと拡大し波に乗る彼の最新シングルは、読売テレビ・日本テレビ系アニメ「名探偵コナン」の新エンディングテーマ「Fun! Fun! Fun!」、そして木梨憲武プロデュース、所ジョージ作詞作曲の「炎のkiss」の2曲を表題曲とする豪華な内容に。音楽ナタリーではリリースを記念して新浜にインタビュー。「全てあげよう」の反響に紅白初出場、そして新たな楽曲について、新浜の今の思いを聞いた。
取材・文 / 小野田衛
プレッシャーが原動力に
──前回インタビューさせていただいたのは昨年4月で、6thシングル「全てあげよう」リリースのタイミング(参照:新浜レオン「全てあげよう」インタビュー)。「高校球児が甲子園を目指すように、演歌・歌謡曲の歌手が紅白を目指すのは当然のこと」と野球経験者ならではの野望を口にしていましたが、本当にそれが実現したことに感激しました(参照:「紅白歌合戦」出場歌手発表!ILLIT、ME:I、オモタケ、Creepy、Da-iCE、TXT、Number_iら初)。
あれからもう1年ですか……。今年の5月でデビューして6年目になるんですけど、紅白出場というのはずっと口にしてきたことなんですよ。それを去年の取材のときもお話させていただいたわけですが、ここで実現できていなければ目標だけは大きいことを言う口だけの男になってしまう。そんな重圧はありました。
──そんなプレッシャーもあったんですね。
あれで目標が達成できていなかったら、変な話、こうして音楽ナタリーさんに合わせる顔もなかったです(笑)。「残念ながら紅白には出られませんでした……」とうなだれてみても、演技にしか見えないじゃないですか。ただ、そのプレッシャーが原動力になっている部分はありました。
──紅白出場につながった要因として、前作「全てあげよう」が異例のロングヒットとなったことは大きかったはずです。オリコン週間演歌・歌謡ランキングで1位を7度も獲得。トップ10入りは42週連続という記録を達成しました。
そこは僕にとっても非常に大きな驚きでして。これまでのシングルでも週間で1位を獲らせていただくことはあったんですけど、次の週、その次の週と順位が下がっていくことが多かったんです。それが「全てあげよう」は発売してから紅白出場までずっとトップ10入りしているような状態だったものですから、周りの方からも驚かれました。特に地方に行くと感じるんですよ。例えば北海道の根室みたいな東京から離れた土地だと、「なんかすごい売れっ子が来た!」という感じで、歓迎されることがあるんですよ。実際、僕としてはまだ全然そういう気持ちでもないんですけど……。
──地方に行くと、「有名になった」という手応えが肌感覚でわかるということですか?
昔から変わらずに僕のことを応援してくださっているコアな方々がいて、もちろん言うまでもなくそれはすごくありがたいことなんですけど、それとは別にフリーでのイベントに来てくださるような方が増えてきた実感があります。
──いわゆるライト層と呼ばれるファンですね。
そうなんです。「初見で来ました」「名前だけは聞いたことある」みたいな雰囲気の方が、特に地方だと明らかに増えているんです。「あっ、木梨憲武と一緒にテレビ出ていた人だ!」とか「なんだっけ? なんとかレオンとか言ったよね?」みたいな反応で。
ハト3羽のイベントから始まった僕
──それはそれですごいことじゃないですか。
もちろんとてもありがたい話ですよ。でも僕からすると、急にポンと状況が変わったというわけでもないんです。そもそも演歌・歌謡曲を手がけたことがないレコード会社からデビューしたということもあり、いわゆる普通の演歌・歌謡曲歌手とは違うアプローチを取ってきたんです。例えばサンリオさんにオリジナルキャラクター“れおすけ”を作っていただいたりとか、女性誌やファッション誌で取り上げてもらったりとか、バラエティ番組に積極的に出させていただいたりとか、「どこで何が引っかかるかはわからない。だから、とにかくいろんな球を投げてみよう」という考えで蒔いた種が、ようやく去年、芽になって出てきたんじゃないかなって。
──トライ&エラーを繰り返して今に至ると。
木梨憲武さんや所ジョージさんとの出会い。これは僕にとって本当に大きなチャンスでした。2人との出会いで運命が変わったことは間違いありません。だけど、それだけじゃない部分もあるんですよ。それこそハト3羽のイベントから始まった僕ですし……。
──ハト3羽? なんですか、それは?
ちょうど今日も上野でイベントがありまして。あのあたりに「おかちまちパンダ広場」という場所があるんですよ。松坂屋上野店のすぐそばなんですけど。新浜レオンとして初めてイベントをしたのが、その「おかちまちパンダ広場」。そのときマネージャーさんに言われたのが、「レオン、ごめん。お客さん誰もいなくて、いるのはハト3羽だけだわ」ということで……(※ここでスタッフが当時のイベントの様子を写真で取材陣に見せる)。
──これリハじゃないですよね? 本当に誰もいないじゃないですか。
この写真を撮ってくれたスタッフさんも言っていました。「いつか絶対この写真がネタになる。そう思って俺はカメラを構えたんだ」って。実は今日の上野のイベントも、同じスタッフさんが来てくれたんです。正確には同じパンダ広場ではなかったものの、近くでやった会場はお客さんでパンパンに埋まっていました。ハト3羽から、よくここまで来たなって自分でも感慨深かったですよ。
──めちゃくちゃいい話ですね。
たまに「レオンくん、順風満帆だよね」と言われることがあるのですが、何もないゼロの状態からスタートしたと自分では思っているんです。歌える環境があるんだったら、お客さんが3人でもハト3羽でも歌うということの積み重ねで今があるといいますか。本当に皆さんに感謝しかないと思っています。
やっぱり最後は曲
──長きにわたって売れ続けているというのは、話題性だけではなく、純粋に曲がよかったという面も決定的にあったと思うのですが。
本当にそうなんです。やっぱり最後は曲なんですよ。そこは僕も痛感しています。特に「全てあげよう」は西城秀樹さんがテーマになっています。きっかけになった木梨さんのラジオ番組出演でも「レオンって秀樹さんの曲を歌っているよね」という会話をきっかけに盛り上がり、番組に出演していた所さんに秀樹さんをオマージュした曲を書いて頂けることになりました。それでイントロからサビまで秀樹さんを連想させるフレーズが随所に出てくるんです。だからこそ、秀樹さんファンの皆様にどう思われるのか、最初は不安だったんですよ。
──不安とは?
パロディみたいに捉えられないかという不安ですね。もちろん僕は100%心の底からリスペクトしていますけど、もともと秀樹さんのイメージが強烈すぎるから、本当にギリギリの領域になってくるんですよ。「傷だらけのローラ」などをカバーしていても、紙一重だと感じます。単なるモノマネになってもいけないし、かといって自分らしさ全開にすればいいというものでもないですし。
──なるほど。中途半端な真似はできないですね。
そこでうれしかったのが、秀樹さんのファンの皆様が温かく認めてくれたこと。最近は僕のイベントに来てくれる方も多いんです。「レオンくんのカバーしか聴きません」と言われたこともあって、そのときはさすがに背筋が伸びましたね。やっぱり本当に好きな人にはわかってしまうので。僕も大好きだからこそ、軽はずみなことはできないとわかっていました。秀樹さんのご家族や、当時から支えていらっしゃるスタッフの方々も応援してくださっているので、その期待に応えたいという気持ちも強いです。
“甲子園出場”がゴールなんていうことは全然なかった
──さて、「NHK紅白歌合戦」出場についてです。レオンさんにとって初の“甲子園”はいかがでしたか?
僕は今まで人生で“何かを成し遂げたこと”がなかったんです。野球は本気で打ち込んでいたけど、結局甲子園には行けなかった。それがバットをマイクに替えて、今度は歌の世界での甲子園に出場したわけですけど、最初に感じたのはステージに立つことの重み。夏の甲子園に関して言うと、(出身地の)千葉だけで150校くらいあるんですよ。その中で実際に甲子園に出られるのは1校だけ。「紅白」は演歌・歌謡曲に限らず歌をやっている人ならみんな出たい場所なのに、149校は行きたくても行けないんですね。それを考えると、恥ずかしいパフォーマンスはできないですよ。
──なるほど。
実際に“甲子園”に行ったら、想像と違う部分も大きかったですね。初戦を突破したら、次に2回戦、3回戦と続くから、そうなると「甲子園で優勝したい」という気持ちにもなるし、「春の選抜にも出たい」という新たな目標も出てきた。その先は「プロに入りたい」とか「大リーグで勝負したい」と夢は広がりますし。やっぱり歌手でいる限りゴールはないんですよ。甲子園出場(紅白出場)がゴールなんていうことは全然なかったです。
──含蓄のある言葉です。
いざステージに立ったら「来年の12月31日もここに立つんだ」という感情が強く湧いてきました。なにしろ横を見たら福山雅治さんがいて、前に石川さゆりさん、右側に郷ひろみさん、その横にCreepy Nutsさん……みたいな世界ですからね。そういう中にいると「演歌・歌謡の世界で一番になる」とかじゃなくて、「こういう広い世界で一番を獲る」という気持ちでいないとダメだなって気付かされたんです。
──今は音楽の世界もジャンルが細分化していますが、レオンさんが狙っているのは“国民的歌手”ですからね。
そうですね。そこを目指さないことには一歩先に出ることができないというのは、自分にとってすごく大きな発見でした。甲子園も一緒ですよね。右を向いたら大阪桐蔭、左を見たら智弁和歌山みたいなことですから。
──いちいち野球で例えるのが最高です(笑)。紅白では、前半1部の最高視聴率(31.7%)も獲得したようですが。
もうびっくりしちゃいましたね。普通に考えたら、アーティストの知名度順で高い数字が出そうじゃないですか。でも結果的には、かねてから僕が言っている「演歌、歌謡を知らない世代にも届けたい」という目標に少し近付けたのかなと。思えば父の影響で大好きになった演歌や歌謡曲ですが、その素晴らしさを共感できる友達なんて周りに1人もいませんでした。それがすごく悔しかったし、自分が絶対に演歌・歌謡を広めるきっかけになるんだという気持ちで今までやってきましたから。
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小学生の“膝スラ禁止令”