「BEYBLADE X」特集|世界的アーティストたちとのコラボに込められた戦略

テレビアニメ「BEYBLADE X」はどうやら相当音楽にこだわっているらしい。

それは一連のテーマソングを提供してきたアーティストたちのラインナップを見れば一目瞭然。ONE OK ROCK、aespa、L'Arc-en-Ciel、Perfume──ワールドワイドに活躍し、幅広い世代から支持を集める人気アーティストたちがテーマソングを提供し、話題を集めてきたのだ。さらに4月4日にスタートする新シーズンでは、TOMORROW X TOGETHERがオープニングテーマを、世界的なヒット曲を持つイギリス出身のDJ / プロデューサーのジャックス・ジョーンズとAdoがエンディングテーマを担当することがアナウンスされ、音楽ファンとアニメファンをざわつかせている。なお「BEYBLADE X」はテーマソングだけでなく劇伴も特徴的で、アニメ全編を通してEDMを使用。劇中で描かれるベイブレードバトルを激しくスタイリッシュに彩っている。

「もう、遊びじゃない。」をコンセプトに掲げ、ベイブレードをスポーツへと進化させるべく、世界的な戦略を打ち立てているタカラトミーとアニメの共同製作者であるADKエモーションズ。そのアティチュードはアニメ、そして使用される音楽にも確かに現れている。この特集では、「BEYBLADE X」の音楽に携わる、音楽プロデューサーの八代富士夫氏(株式会社ADKエモーションズ)、音響監督の山口貴之氏、プロデューサーの篠永恭平氏(株式会社タカラトミー)のインタビューと、新テーマソングの解説を通して「BEYBLADE X」の魅力を紹介する。

取材・文 / 岸野恵加

ベイブレードをカルチャーにしていくために

──まずは皆さんがそれぞれ、「BEYBLADE X」にどのように携わっているかを教えてください。

八代富士夫 僕は音楽プロデューサーとして、主にオープニングテーマ、エンディングテーマのプロデュースや、プロモーション施策などを担当しています。

山口貴之 音響監督として、アニメーションにおける音のすべてを監督しています。セリフと効果音、そして劇伴の舵取りですね。どんな音が必要かをリスト化して、それを制作に渡し、仕上げてもらっています。

篠永恭平 僕はアニメではプロデューサーとクレジットされているのですが、タカラトミーから発売されている商品のマーケティング全般を担当しています。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

──「BEYBLADE X」は、25年の歴史を持つ玩具「ベイブレード」シリーズの最新作として2023年7月にローンチされました。どのようなコンセプトでスタートしたのでしょうか?

篠永 「BEYBLADE X」はベイブレードの第4世代で、「もう、遊びじゃない。GEAR SPORTS BEYBLADE X」というキャッチコピーを掲げてスタートしました。そこに込めたのは、「玩具の枠を超えた『スポーツ』へと進化させていきたい」という思い。もとは子供のおもちゃというイメージが強かったけど、大人も含め誰がプレイしていても自然に感じられるくらい、ベイブレードをひとつのカルチャーにしていきたいと考えています。

──確かに、テレビアニメ「BEYBLADE X」のストーリーや世界観も、今までのシリーズ作品に比べると大人っぽい印象を受けました。

篠永 ベイブレードがプロスポーツとなった世界が舞台なので、より現実的な要素が強いと思います。アニメの音楽についても、そのコンセプトに準じた形で八代さんがコーディネートしてくださっています。

八代 オープニングテーマとエンディングテーマをセレクトする際には、「子供を子供扱いしない」ことをコンセプトにしています。子供たちが少し背伸びして、本格的な音楽に触れられる機会になったらうれしいな、といつも考えていますね。

──そうした思いから、毎回国際色豊かなアーティストにオファーしているんですね。

八代 ベイブレードは世界的に愛されているコンテンツなので、海外へのマーケティングの観点も大事になり、日本国外にも影響力があるアーティストかどうかというのは1つの基準になります。豪華すぎるラインナップで、「いったい何をやっているんだ!?」と驚かれますが、何か特別なことをやっているつもりはなくて(笑)。「BEYBLADE X」が日本でブームになり、世界でも大人気のコンテンツなので、アーティストもタイアップを引き受けてくださるのだと思います。

──テーマソングについて、共通の軸にしていることはありますか?

八代 どのアーティストにも、ベイブレードのギアのスピード感やバトルのイメージを歌詞に反映してもらうようにお願いしています。「高みを目指す」「スピード」「Extreme」などがイメージできるフレーズを入れていただいていますね。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

ONE OK ROCK、aespa、L'Arc-en-Ciel、Perfumeによるテーマ曲へ込められたメッセージ

──では、これまでのテーマソングについて、1曲ずつご紹介をお願いします。シリーズ最初のオープニングテーマは、世界で活躍するロックバンド・ONE OK ROCKの「Prove」でした。

八代 「Prove」はアルバム「Luxury Disease」の収録曲でしたが、歌詞が主人公のバードが何回負けてもチャレンジする姿にぴったり重なって、とてもマッチしていたと思います。ONE OK ROCKにとって初のテレビアニメのテーマソングだったので、非常に多くの人に注目をしていただいて。映像も、制作チームが音ハメやスポーツ感のあるカメラワークをしっかり意識してくれたので、いいスタートを切れました。

──エンディングテーマは、4人組グローバルグループ・aespaの「ZOOM ZOOM」。aespaとして初の日本語歌詞を使用した楽曲ということでも注目を浴びました。

八代 「ZOOM ZOOM」には、先ほど申し上げたように「スピード」や「Extreme」という単語を歌詞に入れてもらって。ネオンのような映像もいい意味で子供向けアニメのエンディングらしくなくて、とてもカッコよく仕上がっていると思います。とにかく世代を問わず体がノってしまう曲なので、非常に好評でした。

──そして2024年10月からは、オープニングテーマにL'Arc-en-Cielの「YOU GOTTA RUN」、エンディングテーマにPerfumeの「Cosmic Treat」が使用されています。

八代 「YOU GOTTA RUN」は、登場人物や子供の成長を見守って応援する大人の視点のように描かれた歌詞になっていて、最初に読んだときに「さすがhydeさん」と思いました。デモの段階から少しテンポを上げるリクエストをしたのですが、イントロなどもよりバトル感のあるアレンジに仕上げてくださって、素晴らしい楽曲をいただけたと思います。視聴者の子供たちの親御さんはラルク世代の方が多いので、「子供と一緒にラルクを聴けてうれしい」という声もいただきましたね。家庭内コミュニケーションの一端になれていたら本望です。

──Perfumeの「Cosmic Treat」は、エンディング映像でキャラクターがダンスをする姿も印象的でした。

八代 ご存知の通り、Perfumeさんはどの曲も振付が素晴らしいですよね。「Cosmic Treat」も“無重力ダンス”が話題になりました。アーティストと同じそのダンスを、七色マルチというキャラクターが踊るアニメーションMVを制作したんです。プロデュースは振付師のMIKIKOさんにお願いしました。アニメとアーティストによるコラボプロモーションのひとつの形として、新しいトライができたのではと思います。

全世界の子供たちを対象とした劇伴

──劇伴については、どのようなコンセプトで制作していますか?

八代 最初に山口さんと相談して、エレクトロを基本にする方向性に決めました。制作はハリウッドのCutting Edgeという音楽制作会社に依頼しています。山口さんは音楽への造詣が深く、音源のトラックデータをいじって、より合う形にミックスしていただけるんです。まるでDJのように(笑)。バトルシーンは特にエッジの効いた音楽でバシッと決めたいので、ドラムンベースやエレクトロの要素がより濃くなっていますね。

山口 最初は「全世界の子供たちが同じ感想を持てる音楽とはなんだろう?」というところから考え始めました。EDMはアゲるために作られている音楽なので、全世界の子供たちが同じ印象を持つと思いましたし、今の子供たちが一番馴染んでいるのは、クラブミュージックやEDMだろうと。今後のクラブミュージックを背負う世代にとっての入門編と英才教育になればいいなと思いながら、あらゆるジャンルの音楽を用いて表現しています。そもそも20年くらい前は、クラブミュージックはアニメの劇伴に合わないと言われていたんですけどね。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

テレビアニメ「BEYBLADE X」より。

──確かにひと昔前のアニメでは、EDMが使われていた印象はあまりないですね。

山口 この20年間、クラブミュージック界の皆さんが一生懸命に種を撒いてくださったことで、ようやくエレクトロで心情表現をするところまでたどり着いたと思います。Cutting Edgeのプロデューサーはスポーツが好きなので、よくサッカーのチャンピオンズリーグやF-1の音楽をイメージソースとして共有したりして。狙いをよく汲み取ってくれています。

──いつか子連れOKの「ベイブレード」音楽フェスを開催してほしいですね。

八代 僕もめちゃくちゃやりたいんですよね。どこかのクラブでクラブミュージックをガンガンにかけて、大人たちが酒を飲みながら「ゴーシュート!」するという(笑)。

山口 かけたい曲が山ほどありますね(笑)。篠永さん、ぜひお願いします!

篠永 基本的に子供が参加するイベントがほとんどなのでお酒などは無理ですが、大人のみのイベントなら可能性はありそうですね! まずはスタッフだけで開催してみましょうか(笑)。