雨のパレード|ビルボードライブ横浜公演インタビュー、楽器が“歌う”演奏とは

雨のパレードが4月6日に神奈川・ビルボードライブ横浜でライブを開催する。

昨年9月にHILLS RECORDS移籍後初となるアルバム「Strata」を発表した雨のパレード。今年3月には寺久保伶矢(Tp)をフィーチャーした新曲「Domino feat. 寺久保伶矢」がリリースされた。ビルボードライブ横浜公演には寺久保もゲストとして出演する。

音楽ナタリーでは、雨のパレードのメンバー3人にインタビュー。レーベル移籍に伴う制作環境の変化、それがもたらした「Strata」への影響、ビルボードライブ横浜公演への意気込みなどを語ってもらった。

取材・文 / 森朋之写真 / YURIE PEPE

公演情報

ame_no_parade Special Live 2025 at Billboard Live YOKOHAMA

2025年4月6日(日)神奈川県 ビルボードライブ横浜
[1st]OPEN 14:00 / START 15:00
[2nd]OPEN 17:00 / START 18:00

公式サイト

音楽的な自立

──雨のパレードは昨年9月、レーベル移籍第1弾アルバム「Strata」をリリースしました。フルアルバムは4年ぶりでしたが、前作以降のバンドの状況をどう捉えていますか?

福永浩平(Vo) レーベルを移籍したことで、心境的な変化もあって。自分たちの好きな音楽を追求できたし、いいアルバムができたと思っていますね。以前は「多くの人に届けたい」ということをチームと話して、人の意見を聞きながら制作していた時期もありました。それはそれでよかったんですけど、「自分たちの曲じゃない」みたいな感覚になることもあったんです。まずは自分たちが納得できる、心から好きだと思える曲を作って、それを判断してほしいという気持ちもあって。今はやりたいことを120%やれてる感覚がありますね。

福永浩平(Vo)

福永浩平(Vo)

大澤実音穂(Dr) 今はバンドの活動に関わる人が少数になって、意思疎通がしやすくなりました。浩平が言ったように自分たちが「いい」と思えるものに向き合えるようになったと思っています。

──音楽家として健康的な状況になったと。

山崎康介(G, Syn) そうですね。これまで培ってきた技術や知識もそうだし、音楽的な自立というか、1から10までおおよそ自分たちの手で作り上げられる環境を整えられたのかなと。この4年間は、より自分たちのイメージに近い音楽を作られるようになった期間でもあると思います。

──「Strata」(地層)というタイトル通り、これまでの積み重ねの上に今があると。福永さんの音楽的志向に変化はありましたか?

福永 基本的には変わっていなくて、相変わらず洋楽の新譜を漁っています(笑)。エレクトロの割合がちょっと減って、ヒップホップが多くなったかな。ブラックミュージックがベーシックになっている音楽が中心ですね。

雨のパレード

雨のパレード

打ち込みと生演奏

──「Strata」ではmabanuaさん、JQさん(Nulbarich)がプロデューサーを務めているためか、生楽器の響きが生かされている印象もありました。

福永 実際には、生(演奏)でレコーディングしている曲は少ないいんですよ。ただ、作り方としては生楽器の音を打ち込んでいたり、プログラミングしたドラムの後ろで生ドラムの音が鳴っていたり。“打ち込みすぎない”みたいな意識もあるし、そのあたりを感じてもらえるのはうれしいですね。

──制作スタイルも変化している?

福永 そうですね。このバンドを始めた頃は生楽器で録ることが多かったんですが、その後、打ち込みの要素が入ってきて。その時期は生楽器の割合がかなり少なかったんですが、今は両方が混ざってきて、いいバランスになっていると思います。

大澤 打ち込みの割合が多かったときは、私がレコーディングに参加しないまま完成した楽曲もあったんですよ。それについて葛藤したこともあったんですけど、自分でリズムを組んだり、そこに生のドラムを重ねたりして、人間味も出せるようになってきて。キャリアを重ねるごとに「自分の曲です」と胸を張って言えるようになってきました。

山崎 打ち込みの音に関しても、テクノロジーの発達や自分たちの知識も含めて、かなり高いクオリティで作れるようになってますからね。最近はギターやドラムの音をいかに生っぽく録れるか?ということも考えていて。ギターはプラグインで(コンピューター上で)作ることが多いんですが、アンプで鳴らして録るのもいいなと。実際に音を鳴らしたときの空間を内包したサウンドにも興味があるし、自分たちでレコーディングまでやれるようになりたいなと思ってます。打ち込みにも生にも、それぞれのよさがありますね。

山崎康介(G, Syn)

山崎康介(G, Syn)

──アルバムにはゲストミュージシャンとして永井隆泰さん(B)、MELRAWさん(Sax, Flute)、ちゃんMARIさん(Key / ゲスの極み乙女)、タブゾンビさん(Tp / SOIL&"PIMP"SESSIONS)が参加しています。特に4曲も参加しているMELRAWさんの存在はかなり大きいと思います。

福永 自分がやりたい表現に近道で到達するためにも、MELRAWに参加してほしいなと思いました。さっきも言いましたけど、僕はブラックミュージックが好きで。そのコード感の中で歌える楽器が大事だし、それができるプレイヤーはなかなかいないんですよ。

──MELRAWさんはジャズとブラックミュージックを行き来できるプレイヤーですからね。福永さん自身も最近のジャズはチェックしてますか?

福永 そこまで掘っているわけではないですけど、ロバート・グラスパー界隈だったり、テラス・マーティン、カマシ・ワシントンあたりは大好きですね。Dinner Party(ロバート・グラスパー、テラス・マーティン、カマシ・ワシントン、9th Wonderなどが参加しているグループ)もめちゃくちゃ好きだし、ジャズではないかもしれないけどHiatus Kaiyoteだったり。そのあたりの影響はアルバムにも出ているかもしれないです。

──なるほど。福永さんの歌詞、ボーカルも印象的でした。トラック、サウンドに対して、フロウの乗せ方がすごく自然で。

福永 以前に比べると肩の力が抜けてるかもしれないですね。前はディレクターと密にやり取りして「こっちの表現のほうが届きやすいんじゃないか」みたいなことをすごくやっていたんですよ。自分としては「このほうが響きがいいんだけどな」という気持ちもあって。今は気ままにやってます(笑)。

大澤 浩平が苦しそうに言葉を絞り出していた時期もあったから、そのときに比べるとリラックスできてるのかもしれないですね。デモを作るときも適当な言葉をメロディに乗せて、それを生かしながら歌詞を書いたり。

大澤実音穂(Dr)

大澤実音穂(Dr)

福永 まあ、それはずっとそうだけどね(笑)。でも、確かに言葉は出てきやすくなってるかも。

山崎 自然体な言葉になっているというのかな。詩的な表現がそのままピュアに落とし込まれてる気がするし、本人の色がより濃く出ているんじゃないかなと。

──本来のクリエイティビティが発揮されている状態なのかも。ファンの皆さんの反響はどうですか?

福永 そうですね……バンドを続けてるといろんな時期があると思うんですけど、僕らもそうで。最初の頃に聴いてくれてた方も、いろいろ変遷がある中で、離れる人もいたり。レーベルを移籍してからは、本来の僕らを好きでいてくれた人たちが徐々に戻ってきてくれてる感覚もありますね。

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ライブの人間味