この夏、ユニバーサルミュージックからメジャーデビューする“男性版清純派ボーイズグループ”・THE SUPER FRUIT。彼らにとってインディーズ最後の作品となるベストアルバム「BEST FRUIT BOX」が4月9日にリリースされた。
「BEST FRUIT BOX」には、2022年にTikTokを中心に話題を集めグループの名が広く知られるきっかけとなった「チグハグ」や「どーぱみんみん あどれなりんりん」「ちょいドンマイ」などの既発曲に、新曲やボーナスラジオ音源「フレッシュ全開!THE SUPER FRUITの7つのミックスジュースタイム!」を加えた計14トラックが収められている。
このインタビューではメンバー7人に、「BEST FRUIT BOX」の収録曲にまつわるエピソードを軸に、メジャーデビューを果たすまでの歩みを振り返ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦撮影 / 梁瀬玉実
メジャーデビューの発表を終えて
──先日、メジャーデビューの発表がされたばかりですが、周囲の反応はいかがでしたか?
田倉暉久 みんなは「家族からLINEがあった」とか「友達からひさしぶりに連絡がきた」と言ってたけど……今のところ僕にはなくて、悲しい気持ちになってます。
阿部隼大 日常的に家族や友達と顔を合わせているから、わざわざLINEとかで連絡しないんじゃない?
田倉 そうかも。ちょっとホッとした。
小田惟真 僕はつば男(つばさ男子プロダクション)の後輩から「おめでとうございます」って連絡が来て……。
田倉 ちょっと待って。そういうのが来てないんだよ!
一同 (笑)。
小田 つば男の後輩たちから「おめでとう」と言ってもらえたし、自分のことのように喜んでくれる後輩もいました。
松本勇輝 僕の場合、メジャーデビュー発表の配信が終わって家に帰ったら意外と家族が無反応で。「あれ、配信観てくれなかったのかな?」と思いながら過ごしてたら、お風呂上がりにケーキをサプライズで出してくれてびっくりしました。ちゃんとお祝いしてもらえたーって。
星野晴海 メジャーデビューの発表は家族にも言えなかったから、家に帰ったらお母さんが「なんで言ってくれなかったの!」って、最初は不満そうな顔をしてました(笑)。でもすぐに「本当におめでとう」と言ってくれて、すごくうれしかった。
鈴木志音 僕はひさしぶりに中学、高校時代の友達から連絡が来て祝ってもらいました。そこから毎日のようにメッセージのやりとりをしているのがうれしくて。昔の友達にも伝わるくらい、大きなトピックスだったことを実感しています。
──皆さん自身はメジャーデビューというものをどう捉えていますか?
小田 意外だったのは、いろんな方に「まだメジャーじゃなかったんだ」と言われたことでした。インディーズでもそれなりの存在感を放てていたことが自信につながったし、メジャーデビューをするからにはもっと上を目指せるようになるはずなので、ワクワクしています。
田倉 僕らの先輩であるCUBERSさんは華々しくメジャーデビューを飾って、メジャーシーンで活動されていたので、スパフルとしてもいつかはそのステージに行かなければならないと考えていました。僕らにとって1つ大事な節目がやってくるぞ、と背筋を伸ばしています。
堀内結流 個人的にはユニバーサルさんからメジャーデビューというのも意味があるように捉えていて。本社がアメリカにあってワールドワイドに展開しているレコード会社だからこそ、スパフルも世界に向けて発信できたらいいなと思っています。
どよめきが起こった「Seven Fruits」
──メジャーデビューを目前にして、インディーズ時代の楽曲を総まとめにしたベストアルバム「BEST FRUIT BOX」がリリースされます。今作はリリース順に楽曲が収められているので、収録曲をもとにこれまでのスパフルの歩みを振り返られたらと思っています。1曲目に収録されているのは、2022年4月にリリースされたプレデビュー曲「Seven Fruits」です。
田倉 僕らが研修時代によく立っていたJOL原宿での最初のライブのとき、「Seven Fruits」が始まったら歓声ではなくて、どよめきが起こったんですよ。初見のグループ、初見の曲でそういう反応があることってなかなかないので、この曲には特別な力があると今でも感じています。
星野 スパフルのプレデビューアルバムのリード曲としてリリースされた曲なので、はる(星野)たちと一緒にいる時間が最も長い曲ですよね。なのに、一度も聴き飽きたことがない。それはパフォーマンスをしてても一緒で、まったく飽きないんですよ。ライブでも最初に披露することが多い、スパフルの名刺代わりの1曲です。
松本 僕がボーカルを務めた中でも「Seven Fruits」はダントツで一番歌った回数が多い曲ですね。歌い込むことでプレデビューのときと今では歌詞に対する印象が変わってきているのに、今でも変わらず僕らのことを的確に表しているから、本当にすごい曲。
小田 メジャーデビュー発表の配信をしたときのBGMとして「Seven Fruits」のピアノアレンジが流れてて、それにすごく感動しちゃいました。
星野 「この譜面ください」ってなった!
小田 こういう大事なタイミングで「Seven Fruits」が鳴ると、「この曲がなければ僕らは始まってなかったんだろうな」としみじみ感じます。
──同じく2022年発表の曲の中で欠かすことができないのがCDデビュー曲の「チグハグ」ですね。TikTokを中心に大きなバズを引き起こし、グループの知名度を一気に引き上げた1曲です。
田倉 いろんなミラクルがあって、たくさんの方に知っていただくきっかけになった曲なので、THE SUPER FRUITという存在を語るうえでは外せない曲ですね。正直に言うと、流行しているときの僕らは曲だけが一人歩きしてしまって、置いていかれている感覚があったけど、今ではちゃんと胸を張って「『チグハグ』を歌っているTHE SUPER FRUITです」と言えるようになりました。僕らの成長スピードを上げてくれた曲だと思っています。
堀内 「チグハグ」の影響は本当にすごくて。大学の友達とスパフルの活動の話になったときに「チグハグ」の曲名を出すと、「え? あの『チグハグ』?」って言われることがめちゃくちゃあったので。なんならお母さんが出張先で息子の話になったときに、出張先の人が「チグハグ」のことを知っていたこともあったみたいです(笑)。てるが言ったように「楽曲が1人歩きしている状態」ではあったけど、知られないよりは100倍よくて、「チグハグ」にはめっちゃ感謝してます。
鈴木 僕、実は曲をもらうまで「チグハグ」という言葉を聞いたことがなかったんですよ。なんだか響きはかわいいけど、噛み合ってないという意味の言葉と知って、日本語って面白いなと。おそらく僕の年代かそれより下の世代も、そう感じた人がいるのかもしれないです。
松本 今の話と似たようなことを僕のおばあちゃんに言われました。「『チグハグ』って昔はよく悪い意味で言ってたけど、今ではこんなポップな言葉として曲になるもんなんだね。こういう時代にもっとこれからなればいいね」と言われて、おばあちゃん世代にも素敵な受け取り方をしてもらえてすごくうれしくなったのを覚えています。
小田 楽曲としてはスパフルのキャッチーさが定まったのが「チグハグ」だと思います。歌詞の内容を的確にダンスで表現する手法だったり、曲に込められている多様性みたいなメッセージ性だったり。名実ともにスパフルにとって重要な曲ですね。
「チグハグ」後の重圧
──「チグハグ」による追い風を受けて迎えた2023年には「サクラフレフレ」「サマー☆★げっちゅー」といったシングル、そして1stアルバム「青い果実」がリリースされました。2023年はどんな1年でしたか?
田倉 2023年……メンバーもいろんな壁にぶち当てっていた時期でした。
小田 うん。そうだったね。
田倉 今になって思えば、「チグハグ」でスパフルの方向性が示されたわけですが、当時の僕らはスパフルの方向性と自分たちの方向性が、まさに“チグハグ”してた。「Seven Fruits」のように落ち着いたおしゃれな曲調の楽曲にも、それはそれで自信を持っていたし。
小田 「チグハグ」の反響がありがたいことにすごかったので、次のシングルではさらに上を目指してがんばらないとってプレッシャーを自分たちにかけちゃって。がむしゃらに全力疾走をしていたけど、少しから回っていたのが2023年かもしれないです。
──「チグハグ」後の音源としては、2ndシングル「サクラフレフレ」でボーカルを担う松本さんへのプレッシャーもあったのでは?
松本 メンバーカラーにも合っているし、「サクラフレフレ」では絶対にボーカルを担当したいと思っていたから、それが叶ったのはうれしかったけど、「チグハグ」のように「サクラフレフレ」を押し出したいという自分の思いと、イベントとかでは「チグハグ」が求められているというギャップに不安になることはありました。顔に出やすい性格だから、きっと周りも不安にさせてしまうと思い、あるときからは自分の原点に返って「シンプルに聴いてくれる人を応援するために『サクラフレフレ』を歌うんだ」という気持ちを大事にしてがんばりました。
堀内 次のシングル「サマー☆★げっちゅー」のボーカルは僕で、やっぱりプレッシャーはありましたね。ただ、この曲はスパフルにとって初めての“夏曲”だし、「チグハグ」や「サクラフレフレ」とも方向性が違って「みんなでコール&レスポンスをして楽しもうぜ」という曲だったので、違う土俵で戦うように意識してました。ここまで本格的にコーラスを歌う曲はなかったし、この曲のおかげで現場の歓声が大きくなった感覚もあるから、僕個人にとってもグループにとっても大事な曲だったと思います。
──「チグハグ」「サクラフレフレ」「サマー☆★げっちゅー」とシングルリリースを重ねたあとの1stアルバム「青い果実」は、メンバーの皆さんにとってどんな意味合いの作品になりましたか?
星野 アルバムを出せることの高揚感があったし、曲数が一気に増えることでライブの引き出しも増えたのがすごくうれしかった。それまでけっこうな回数のリリイベをやってきましたけど、セトリのパターンが限られていたことに悩んでいたので。「青い果実」が出ることでいろんなライブができるようになったのは、すごく大きいことでした。個人的にはこの頃から1曲1曲にちゃんと向き合って、「チグハグ」で少し感覚が狂ってしまった部分をこのアルバムで取り戻せてきた実感があります。
松本 どこか大人っぽい雰囲気のある「青い果実」、昭和チックな「Juicy Smile」、色気のある見せ方ができる「叫べない僕らの」など、表現の幅が広がったのは、僕らパフォーマンスする側も楽しくて、新しい曲が届くのがすごく楽しみになりました。
田倉 それと「青い果実」という曲は、そのタイトルの通り“僕らの未熟さ”を表した曲でもあって、この曲のメッセージ性に僕ら自身も救われた気持ちになりました。
──フレッシュさを歌った「Seven Fruits」とどこか共通したメッセージが込められた曲ですよね。
田倉 はい。「Seven Fruits」にちょっとだけ戻ったみたいな感覚は僕らもありました。「チグハグ」が広まって、それに続けとシングルをリリースし続けていた時期、いろんな壁にぶち当たっていました。でも「青い果実」のような曲、もっと言えば「青い果実」というアルバムを出すことで、2023年は最終的には僕たちにとってグループとの向き合い方を見つめ直すきっかけにもなったので、今思うと大切な時間だったなと思います。
次のページ »
「どーぱみん」で第2の波が