映画ナタリー PowerPush - ナタリー×「龍三と七人の子分たち」

ジジいいね!水曜日のカンパネラ・コムアイが同世代に教えたい、チャーミングな“ジジイ”の魅力

過激な暴力描写で話題を呼んだ「アウトレイジ」シリーズに続き、2015年、北野武が放った監督最新作「龍三と七人の子分たち」。平均年齢73歳のベテラン俳優たちが、元ヤクザを演じて暴れまわるコメディ要素満載の痛快エンタテインメント作だ。R指定など年齢制限がなく老若男女楽しめる内容となっており、北野作品史上、「アウトレイジ ビヨンド」を超える歴代2位の興行成績を収めた。

映画ナタリーでは、本作のBlu-ray / DVDの発売を記念し、音楽ユニット・水曜日のカンパネラでボーカルを務めるコムアイのインタビューをお届け。現在23歳の彼女だからこそ感じる、パワフルでチャーミングな“ジジイ”たちの魅力を語り尽くしてもらった。

取材・文 / 金須晶子 撮影 / 笹森健一

行くのか!? 行かないのか!?にドキドキ

──北野武監督の前作「アウトレイジ ビヨンド」に続き、「龍三と七人の子分たち」もアウトローなキャラクターがたくさん登場しました。いかがでしたか?

コムアイ

実は私、けっこう怖いのが苦手で……ヤクザ映画はあんまり観ないんですよ。ホラー映画も苦手で。人が銃とかナイフ持ってるの、生命の危機を感じて普通に嫌です。

──ちょっと意外です。ホラー映画も好きなのかと。

なんて言うか……行くのか!? 行かないのか!?っていうのにドキドキしちゃうんです。アイスピック持ってウロウロするのとか、ホントにやめてほしい! (悶えながら)「ああ、もう! いらいらするなあ!」って。

──(笑)。ハラハラするのが苦手なんですね。

そうなんです。でも「龍三と七人の子分たち」は、ポスタービジュアルを見たときに「私は嫌いじゃない作品だ」って確信しました。だって、ヤクザだけど、背景真っ黄色ですし!

──これまでの北野監督作品とはまったく違う雰囲気で。

意図的に明るく見せてるんだなって思いました。あと、この黄色が懐かしい夕日っぽい色で。昭和の柔らかさを感じます。

「親分なんか決めないでがんばろうぜ」って思う

──では、ヤクザ映画が苦手なコムアイさんでも「龍三と七人の子分たち」は楽しく鑑賞できたと?

龍三親分と子分たち。左からカミソリのタカ(吉澤健)、五寸釘のヒデ(伊藤幸純)、ステッキのイチゾウ(樋浦勉)、龍三親分(藤竜也)、若頭のマサ(近藤正臣)、はばかりのモキチ(中尾彬)、早撃ちのマック(品川徹)。

全然大丈夫でした。なぜかと言うと、凶器はたくさん出てくるけど、テンポがいいから怖くないんですよね。龍三が自分の指を切り落とそうとするシーンも、ジリジリ見せるんじゃなく、スッと終わる。そのヒヤヒヤが効果的に一瞬現れて去る。私が嫌いだったのは、凶器の緊張感で画を持たせようとする映画でした。

──日頃からたくさん映画をご覧になるというコムアイさんにとって、やはりテンポは大事ですか?

以前は、ストーリーがよくて、整っていて、いい芝居をしていればOKだと思ってたんです。でも音楽を始めてからですかね……MVとかの影響かな? カットのつなぎやテンポの歯切れがいい映画がよく感じるようになりました。「龍三と七人の子分たち」は、会話劇のテンポがよくて。特に巻き戻して観ちゃったのが、焼き鳥屋さんのシーン。

──元ヤクザの“ジジイ”たちが再結集して、新たな親分を決める場面ですね。

そもそも、「なんでこの歳になって親分とか決めないと行動できないんだよ!」って思うんですけど(笑)。私がこの歳になったら、「親分なんか決めないで、兄弟でうまく立ち回ってがんばろうぜ」ってなると思うんです。でも、そういうのがまったくないのが、やんちゃだなあと思って。映画のタイトルから“子分”て言ってますから、まさか親分決めから始めるとは思わなかった。

──親分の決め方もユニークでしたよね。

コムアイ

もう、あれがめっちゃ面白くって! 決め方をいろいろ提案するじゃないですか。「ジャンケンで決めるってわけにはいかねえしなあ」「撃ち合いで決めるっても、みんな死んじまうしなあ」とか、しょうもないくだりを……。みんなブツブツ言い合いしてるのに、結局、悪事を点数換算して納得するなんて!(笑) 焼き鳥屋の大将が、その点数計算を伝票にメモさせられてるところのテンポとか最高。「ハツが殺し、ナンコツが懲役で……」って。

──笑いどころ満載の本作ですが、コメディ映画はお好きですか?

うーん、どうだろうなあ……。“笑い”だけが目的になっているような映画は、あまり進んで観ないかも。私、たくさん笑いましたけど「龍三と七人の子分たち」はコメディだとは思いませんでしたよ。コメディのために作ってないというか……。

──北野監督も、インタビューで「演じている本人たちはコメディだと思ってない。でも真剣なのが逆におかしい」とおっしゃっていました。

やっぱり! カッコいい姿を見せる合間の“笑い”が、テンポよく見せる役割を果たしているなと。ヤクザを真剣に演じると、こんなに笑えるんだなって(笑)。役者さんたちも、演じていてきっとすごく楽しかったと思います。

Blu-ray / DVD「龍三と七人の子分たち」2015年10月9日発売 / バンダイビジュアル
スペシャルエディション特装限定版
[Blu-ray Disc+DVD] 7560円 / BCXJ-1030
[DVD2枚組] 6480円 / BCBJ-4715
通常盤 [Blu-ray Disc] 5184円 / BCXJ-1029
通常盤 [DVD] 4104円 / BCBJ-4714
特典映像

特報 / 予告編(ロングver.&ショートver.) / TVスポット / 特別映像「ジジイ映画の楽しみ方」

特装限定版特典

特典ディスク(メイキング映像、キャストインタビュー、完成披露試写会、初日舞台挨拶、ミニ特番「俺たちに明日なんかいらない ジジイが最高スペシャル!!」、海外版予告編)/ 解説書(24P)/ 特製ブックケース付きスペシャルパッケージ

共通特典

特報 / 予告編 / テレビスポット / 特別映像「ジジイ映画の楽しみ方」/ 日本語・英語字幕付き

あらすじ

70歳の高橋龍三(藤竜也)は、「鬼の龍三」と呼ばれおそれられていた元ヤクザの組長。ある日、オレオレ詐欺に引っかかったことをきっかけに、元暴走族で構成される「京浜連合」と因縁めいた関係になる。詐欺や悪徳商法を繰り返す「京浜連合」にお灸を据えるため、博打好きの兄弟分「若頭のマサ」(近藤正臣)や寸借詐欺で生活する「はばかりのモキチ」(中尾彬)、戦争に行ったこともないのに今でも軍服に身を包む「神風のヤス」(小野寺昭)、ほかにも「早撃ちのマック」「ステッキのイチゾウ」「五寸釘のヒデ」「カミソリのタカ」という異名を持つ仲間たちと「一龍会」を結成。次々に「京浜連合」の活動を妨害していくが……。

スタッフ

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一

キャスト

龍三親分:藤竜也
若頭のマサ:近藤正臣
はばかりのモキチ:中尾彬
神風のヤス:小野寺昭
早撃ちのマック:品川徹
ステッキのイチゾウ:樋浦勉
五寸釘のヒデ:伊藤幸純
カミソリのタカ:吉澤健
マル暴の刑事・村上:ビートたけし

水曜日のカンパネラ(スイヨウビノカンパネラ)
コムアイ

1992年7月22日、神奈川県生まれ。水曜日のカンパネラの主演・歌唱担当。高校生時代はNGOやNPO活動に力を注ぎ、キューバで同世代100人のスナップ撮影とインタビューを敢行した。2012年、ケンモチヒデフミとDir.Fに出会い、水曜日のカンパネラへ加入。同年に初のデモ音源「オズ」「空海」をYouTubeに配信し、本格的に活動開始する。2013年よりライブ活動をスタートさせ、「クロールと逆上がり」「羅生門」と立て続けにアルバムを発表。全国各地のイベントやフェスへ精力的に参加しているほか、MVの多さも話題に。2015年、コムアイ単独で「ヤフオク!」のCMに出演を果たした。11月11日にはニューアルバム「ジパング」がリリースされる。

水曜日のカンパネラ「ジパング」
2015年11月11日発売 / つばさレコーズ
水曜日のカンパネラ「ジパング」
[CD] 2500円
TRNW-0150
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2015年10月9日更新