花澤香菜インタビュー|ジム通い、忍者修行……意外な成果が現れた新曲「やれんの?エンドレス」

花澤香菜が5月14日にシングルリリースする新曲「やれんの?エンドレス」は、自身が声優として出演するテレビアニメ「忍者と殺し屋のふたりぐらし」のオープニングテーマ。ひとクセもふたクセもあるアニメ作品を多数世に送り出すシャフトの最新作ということもあり、花澤は作詞にケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、作編曲にTAKU INOUEを迎え、大いにクセのある楽曲を作り上げた。

7thアルバム「追憶と指先」以来およそ1年ぶりとなる新曲の発売に合わせ、音楽ナタリーは花澤にインタビュー。忍者をモチーフにしたアニメ作品の楽曲を担当するにあたり役に立ったという意外な“忍者修行”のエピソードや、初タッグとなるケンモチ×TAKU INOUEコンビとの楽曲制作秘話、おなじみの北川勝利(ROUND TABLE)×宮川弾コンビとともに作り上げたカップリング曲「クレマティスをあなたに」の話題など、たっぷりと話を聞いた。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 臼杵成晃

修行の成果が表れた新アーティスト写真

──今回、約1年ぶりの新曲リリースということで……。

あ、そっか! そんなに経ちました?

──という感覚ですよね。あまりリリース期間が空いた印象はないです。

ツアーをやってたからですかね。昨年リリースしたアルバム「追憶と指先」で大きめのツアー(2024年9月から10月にかけて全国6カ所で行われた「HANAZAWA KANA Zepp Tour 2024 "Memoirs and Fingertips"」)をやらせてもらって、わりとアクティブに動いてはいましたから。こんなにちゃんとライブツアーをやるのはひさびさなので、体力的に心配なところはあったんですけど……アフレコもしながらだったので、ノド的にも「大丈夫かな?」と思っていたものの、だいぶ健康的に乗り越えられて。

花澤香菜

──そうなんですね。

はい、とてもいいツアーになりました。普段行かない場所に行けたことで、普段会えない人たちに会えたというのがやっぱり一番大きかったですね。その土地土地で北川(勝利 / ROUND TABLE)さんたちと一緒においしいごはんも食べられましたし(笑)。

──前回のインタビュー(参照:花澤香菜×サウンドプロデューサー北川勝利インタビュー、作家陣10名のコメントで紐解く「追憶と指先」)では、「アルバムにアッパーな曲が多いから心配だ」ともおっしゃっていましたが……。

心配通りになりました(笑)。アルバム曲以外にも楽しげな曲を多めに入れたので、アコースティックパート以外はだいぶアゲアゲなセットリストになって。バンドメンバーの皆さんも大変だっただろうなって。かなりフレッシュなライブをしましたね(笑)。

花澤香菜
花澤香菜

──音楽活動以外で、この1年間で印象に残っていることは?

音楽活動以外かあ……。

──花澤さんはいろいろやってらっしゃるので、「どれが1年前だっけ?」という感じだろうとは思うんですが(笑)。

そうなんですよ! 本当に日々いろんなことをやりながらなので。まあツアーを周りながら……そうだ、ちょうど1年前ぐらいからジムに通い始めたんですよ。ピラティスと並行して週に2回運動するということを続けていたら、わりとムキムキに……ムキムキではないけど(笑)、いい筋肉を付けた状態でツアーを回ることができたので、すごく達成感がありましたね。プライベートでも疲れにくくなった実感があります。

──修行の成果がちゃんと出るという、少年マンガの主人公みたいなお話ですね。

そうそうそう(笑)。その成果が、実は今回のアーティスト写真にも表れていまして。ちょっと見ていただきたいんですけど……(アー写の鎖骨あたりを指差して)ここ! 胸筋! 私、前はここに筋肉なかったんですよ。すみませんね、見せびらかして。

シングル「やれんの?エンドレス」リリースに合わせて撮影された花澤香菜の最新アーティスト写真。

シングル「やれんの?エンドレス」リリースに合わせて撮影された花澤香菜の最新アーティスト写真。

──それを見せるための肩出し衣装ということですか?

わはははは! そんなことはない(笑)。たまたまなんですけど、やってきたことがちゃんと実になった1年だったな、という印象ではありますね。

キーワードは「ヘンテコ感」

──では、新曲「やれんの?エンドレス」について伺います。まず制作の流れとしては、どういう始まり方だったんでしょうか。

流れとしては、まずアニメ「忍者と殺し屋のふたりぐらし」の主題歌を担当できることになりまして。忍者の草隠さとこ(CV:三川華月)と殺し屋の古賀このは(CV:花澤香菜)という2人の女の子が一緒に暮らすお話なんですけど、ちょっとヘンテコな世界観のコメディ作品なんですね。しかもアニメーション制作をシャフトが担当することも決まっていたので、「これはインパクトのあるものを作らないといけない」と。

──作詞のケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)さんと作編曲のTAKU INOUEさんという布陣は、そのための人選ということですね。

はい。キャッチーであってほしいし、ワードセンス的にちょっと変な感じも欲しいし、忍者っぽい和風のテイストも入れてほしくて。チームのみんなで「こういう曲がいいんじゃないか」とリファレンスを出しながら話し合っていく中でお二人の名前が挙がって、「ヘンテコ感が欲しいです」とお願いしました。

花澤香菜

──ヘンテコ感(笑)。特にケンモチさんは、その専門家みたいなところがありますからね。

ホントにそう! もうドンピシャなものを上げていただいて。リファレンス曲として味の濃いものばかりをお出しして発注してしまったので、正直どうなっちゃうんだろうと思っていたんですけど(笑)。ちゃんとおしゃれにヘンテコに作ってくださったので、すごくうれしかったです。作品にもめちゃくちゃピッタリだし。

──曲のほうも、TAKU INOUEさんだけあってすごくスタイリッシュな音ではあるんですが、やはりそのヘンテコオーダーのせいなのか……。

なんか混沌としてますよね(笑)。そこがすごく面白いです。

──歌う側としても、新しい引き出しを開けた感覚があったんじゃないでしょうか。

開けましたねー。途中の……ここ、何メロっていうんだろう? 「はじめはいいが 行き当たりばったり すでに尽きてる 集中力」のところの入り方とか、私は勝手にあやや(松浦亜弥)の「Yeah! めっちゃホリディ」を思い浮かべながら歌いました(笑)。「すんげぇ すんげぇ」のところみたいにメロディが混沌とし始めるので、視界がぐるぐるするようなイメージといいますか。

花澤香菜
花澤香菜

──なるほど(笑)。全般的には、いわゆるメッセージ性云々の曲ではないですよね。どういうアプローチでレコーディングに臨もうと?

アニメを観ている方には「作品にぴったりだな」ってスッと受け取ってもらえると思うんですけど、曲単体で聴くと「日々のこなさなきゃいけないタスクを淡々となぎ倒していく」歌として捉えられるなと思ったんです。仕事人!みたいな。別にお仕事じゃなくても、例えば家で洗濯物を畳むときとかに「私はこの作業を淡々と完壁にやるわよ!」というような場面でお供になるような曲として歌いました。

──歌詞そのものは、ちょっとキャラソンに近い手触りもありますよね。

そうなんですよ。でも、このはちゃんはすごいローテンションな子なので(笑)、キャラソンとして歌う感じではなかったですね。

──キャラソンっぽい歌をあくまでアーティストとして歌うという塩梅が、ほかにないムードを生んでいるように感じました。

確かにそうですね。ライブでは一発で温度を上げてくれる曲になると思うので、「またブチ上げ曲が増えちゃったな」という感じではあります。レコーディングのときに「息が続かない」という問題があったので、ライブで歌うときはそこが少し心配ではあるんですが……。

花澤香菜

──そこはジムの成果の見せどころでは?

筋肉で補う(笑)。それで言うと、ミュージックビデオで忍者っぽい振付をつけていただいたので、せっかくならライブでも踊りたいんですよね。だから余計に息が切れそうという問題があるんですが、きっと盛り上がるだろうなと。

──手振りが中心ですし、お客さんにも一緒に踊ってもらえそうですよね。

腕を前に突き出す振りがあるので、前の席の方を攻撃してしまわないよう気を付けていただければと思います(笑)。