映画ナタリー PowerPush - ナタリー×「龍三と七人の子分たち」

ジジいいね!北野武監督インタビュー

北野武監督の最新作「龍三と七人の子分たち」が4月25日から公開される。元ヤクザの龍三と7人のジジイたちが、オレオレ詐欺の若者集団と戦うさまをコミカルに描いたエンタテインメント作となっている。

ナタリーでは、映画、音楽、コミック、お笑いなど多方面から“龍三応援団”を募集し、映画の公式サイトと連動したインタビュー企画を実施した。7人の応援団がそろったところで、ついに北野武監督本人が降臨。映画ナタリー独占インタビューで、北野節がさく裂した。

取材・文 / 岡大 撮影 / 笹森健一

 
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「俺たちに明日はない」って思ってる年寄りが一番怖い

──「アウトレイジ」のようなバイオレンスの方向に行かず、コメディ要素多めな映画になりましたね。

北野武監督

「アウトレイジ」の1作目から2作目にかけて暴力がエスカレートしてきていたから、ワンクッション入れてストーリー性のあるものを作ろうかと思ってね。ヤクザ映画はまともに撮ったらすごく痛い。でも、反対側にまわってみるとお笑いの要素が十分あるんだよね。緊張するような場面には、お笑いの悪魔が必ず潜んでいるもんだから。

──これまでで一番笑いのボリュームが多い気がします。

笑いは本職だから、入れようと思えばもっと入れられるけど、あんまり笑いばっかしっていうのもね。ストーリーにのっとった笑いじゃないと。ギャグをやりたくて無理やり作ったシーンってのはそんなにない。だけどこれまでに比べたらだいぶ入れたかな。

──本職だからこそ、お笑いの要素を映画に入れることに怖さはなかったですか?

全然。この映画を作る前に、モーガン・フリーマンや(ロバート・)デ・ニーロが出ているハリウッドのコメディ映画を観たんだけど、あれに比べりゃあ面白いものができるだろうって(笑)。今回は、これまでやってないコテコテの正統なお笑い満載映画なんじゃないかと思ってるんだけど、まあ今のところ反応はいいね。それが観客動員にもつながればいいんだけど。

──お年寄りだらけの映画を撮るというのも冒険ですね。

龍三親分(藤竜也)

介護しなきゃいけないようなジイさんが暴れたときのバカバカしさってのが昔から頭にあって、自分で話を書いたりしてたんだけど、最近オレオレ詐欺なんかが増えてきて、ちょうどいいやって(笑)。年寄りは本当に「俺たちに明日はない」って思ってるから、やる気になったら一番怖いんだよ。日本には年寄りがいっぱいいるんだから、「年寄りの党」でも作ればいいのに。

本読みやって、耳が遠い人がいるってのがよくわかった(笑)

──実際に撮影を始めるとどうでしたか?

北野武監督

撮影の前に本読みをやってもらったんだよ。自分の映画で本読みなんかやったことないんだけど、なぜやったかというと、役者さんのしゃべりの感じを知りたかったため。本読みやって、耳が遠い人がいるってのがよくわかった(笑)。カンペの字も小さすぎて読めねえって言うし。カンペの文字がデカくなったら、目線が全然違うところに行っちゃうからこりゃダメだって(笑)。でも、腕は確かなんで。具体的な技術論で説明する必要がない。あまり演技に対しては文句言わなくて済んだから撮影は楽だったね。

──7という数字には最初からこだわったんですか?

「七人の侍」とか「荒野の七人」とかね。自分は黒澤明監督に対するオマージュだって言ってるんだけど、「七人」とタイトルにつく映画が当たってるからそうしただけだよ(笑)。「荒野の七人」なんかもそうだけど、それぞれ得意技を変えるってのはまあ意識したね。

──龍三親分役の藤竜也さんにはダンディなイメージしかなかったんですけど、今回はすごくお茶目でした。

演出する北野武監督。

藤さんの存在、芝居に対する姿勢がしっかりしているから、まわりがガチャガチャになってもちゃんとストーリーへ戻してくれるだろうなって思って。「愛のコリーダ」を観たときなんて、衝撃だったよ。あの人は演技に対する思いがすごい。与えられた役に成り切ろうとする努力が普通じゃないんだけど、今回はあんまり真面目に龍三になりきろうとしたら映画の方向性が変わっちゃうから、「藤さん何も考えなくていいですから」って言ったよ。ところが、途中からお笑いだって気付いてきて演技が変わるんだけど、それがまたうまいんだよ。違うとこに行っちゃったら、そう言うんだけど、藤さんだけじゃなくて、みんなピッタリ当ててくるから、大したもんだと思ったね。

「龍三と七人の子分たち」 2015年4月25日 全国公開

「龍三と七人の子分たち」

70歳の高橋龍三(藤竜也)は、「鬼の龍三」と呼ばれおそれられていた元ヤクザの組長。ある日、オレオレ詐欺に引っかかったことをきっかけに、元暴走族で構成される「京浜連合」と因縁めいた関係になる。詐欺や悪徳商法を繰り返す「京浜連合」にお灸を据えるため、博打好きの兄弟分「若頭のマサ」(近藤正臣)や寸借詐欺で生活する「はばかりのモキチ」(中尾彬)、戦争に行ったこともないのに今でも軍服に身を包む「神風のヤス」(小野寺昭)、ほかにも「早撃ちのマック」「ステッキのイチゾウ」「五寸釘のヒデ」「カミソリのタカ」という異名を持つ仲間たちと「一龍会」を結成。次々に「京浜連合」の活動を妨害していくが……。

スタッフ

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一

キャスト

龍三親分:藤竜也
若頭のマサ:近藤正臣
はばかりのモキチ:中尾彬
神風のヤス:小野寺昭
早撃ちのマック:品川徹
ステッキのイチゾウ:樋浦勉
五寸釘のヒデ:伊藤幸純
カミソリのタカ:吉澤健
京浜連合ボス・西:安田顕
京浜連合・北条:矢島健一
京浜連合・徳永:下條アトム
龍三の息子・龍平:勝村政信
キャバクラのママ:萬田久子
マル暴の刑事・村上:ビートたけし

毎週更新!カウントダウン・インタビュー

「龍三と七人の子分たち」オフィシャルサイトにて掲載中
芸人 松村邦洋
モデル 今井華
タレント 武井壮
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監督 北野武
北野武(キタノタケシ)

1947年1月18日、東京都生まれ。1989年、「その男、凶暴につき」で監督デビュー。以降「3-4x10月」「ソナチネ」「みんな~やってるか!」などの作品を世に送り出し、7作目の長編「HANA-BI」が、第54回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。日本映画としては39年ぶりの快挙となった。その後も、日英合作の「BROTHER」、第60回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した「座頭市」、映画への思いを描いた「監督・ばんざい」などコンスタントに作品を発表。近年では、“全員悪人”のバイオレンスエンタテインメント「アウトレイジ」「アウトレイジ ビヨンド」を手がけ、話題を呼んだ。「龍三と七人の子分たち」は、17作目の監督作品となる。