2020年9月にソロでの音楽活動を開始してから3年、anoがついに初のフルアルバム「猫猫吐吐」(ニャンニャンオェー)をリリースした。
我が道を行くざっくばらんとしたキャラクターから、まずはタレント的にブレイクした彼女だったが、その後「ちゅ、多様性。」の大ヒットなどもあって音楽面でも評価されるようになり、ついに「NHK紅白歌合戦」への初出場も決定。もはや日本中で知らない人がいないほどに、この1年でアーティストとしての彼女の存在感は増したと言えるだろう。
そんなanoのこれまでの音楽活動の集大成となるのが「猫猫吐吐」だ。DISC 1にメジャーデビュー以降の配信シングルと新曲、DISC 2にインディーズ時代の音源と、これまでにano名義で発表してきた楽曲がすべて網羅された「猫猫吐吐」は、激しいロックチューンもダンサブルなポップチューンも詰め込まれた、バラエティに富んだアルバム。しかしそんな作品でありながら、どの曲にも一貫した“anoらしさ”がある。それはまさに、テレビで見ない日がないほどの人気者になった今でもなお、社会や人々によって勝手に決められた“普通”に疑問を抱き、器用に生きることに抗い、ひたすら自分の音楽表現にこだわり続けている彼女の姿そのものだろう。
この特集では、DISC 1の収録曲の制作に携わった7人のクリエイターたちから寄せられた、提供曲の解説とanoへのメッセージを公開する。彼らのコメントを読みながら、「猫猫吐吐」のより深い魅力を感じ取ってほしい。
構成 / 橋本尚平
真部脩一(集団行動、進行方向別通行区分、Vampillia)
- 2曲目「猫吐極楽音頭」共同作曲
- 3曲目「ちゅ、多様性。」共同作詞 / 作曲
提供曲について
「猫吐極楽音頭」
もとはデジタルハードコアっぽい楽曲デモだったのですが、anoちゃん、TAKU INOUEさんがすごくいい感じに引っ掻き回してくれてポップな奇天烈チューンになりました。歌詞は総てあのちゃんの手によるものですがめちゃくちゃ巧いなと思います。
「ちゅ、多様性。」
anoちゃんには自分の楽曲を歌ってもらえたらなとずっと思っており、念願叶った曲です。自分にとっては、過去に書いた楽曲へのセルフパロディ的な意味合いもあり、挑戦だったんですが、結果的に大きなブレイクスルーになりました。感謝です。anoちゃんでないと成立しなかったと思います。メロディを導いてくれるボーカリストというか、共同制作者を刺激するアーティストですね。アイディアが豊富で、非常にクレバーな人でした。
anoへのメッセージ
居るだけで正義みたいなところがあるので、ありのまま、楽しみながら浮世を渡っていってください。
プロフィール
真部脩一(マベシュウイチ)
相対性理論のベーシスト、進行方向別通行区分やVampilliaのギタリストとして活動。2012年に相対性理論を脱退し、自らが中心となって齋藤里菜と西浦謙助とともに2017年に集団行動を結成した。
の子(神聖かまってちゃん)
- 4曲目「涙くん、今日もおはようっ」共同作詞 / 作曲
提供曲について
紛う方なき名曲だと思います。
楽曲提供の依頼をもらって、
あのちゃんが歌う曲だからか
不思議とスラスラと、この曲が出来上がった。
この曲は、この歌詞はあのちゃんが歌うからこそ、の作品になってるのは僕が言うまでもないです。
anoへのメッセージ
まさにあのちゃんはアンダーグラウンドから這い上がった「時の人」
死にかけてる人間によるブチギレたシンデレラストーリー。
ずっと見てきてるけどそのストーリーはやっぱり凄い。
そんな運やカオスを引き寄せたそれも
彼女の表現者としてのアーティスト性、
そして何よりそれを普及させる行動力だと思ってます。
なんだかんだで凄く行動力ある人だなア。って昔から思ってる。
1stアルバムに参加できてとても光栄です!
プロフィール
の子(ノコ)
神聖かまってちゃんのボーカル&ギター担当。バンドの全曲の作詞作曲を手がけ、デモ音源のミュージックビデオも自ら制作して動画サイトで公開している。路上ゲリラライブの生配信などで知られ、現在もライブストリーミングを精力的に行っている。神聖かまってちゃんは2023年11月に最新ベストアルバム「聖なる交差点」をリリース。このアルバムには新録音源として、anoがゲスト参加したリメイク音源「僕は頑張るよっ feat. ano」も収録されている。
尾崎世界観(クリープハイプ)
- 5曲目「普変」作詞・作曲
提供曲について
あのさんの一番の味方はファンだと思っています。自分に救われたと言ってくれるファンに、誰より救われている。世間では急にブレイクしたと思われているかもしれないけれど、昔からずっとコアなファンに支えられて活動してきたし、そのことは本人とファンの方々が何よりよく知っているはずです。
だから今のあのさんの活躍を見て、このままどこか遠くへ行ってしまうんじゃないかと不安になる、そんなファンの方々を安心させたいと思いました。
あと、皮肉を込めて「すぐに一億再生突破」という歌詞を書いたのに、次の新曲ですぐに一億再生突破していて面白かったです。
anoへのメッセージ
まだ一枚目。お楽しみはこれから。
次は「一億再生突破」する曲を一緒に作りましょう!
プロフィール
尾崎世界観(オザキセカイカン)
1984年東京都生まれ。2001年結成のロックバンド、クリープハイプでボーカル&ギターを担当している。クリープハイプは2012年にアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」でメジャーデビュー。2014年、初の東京・日本武道館2DAYS公演を開催し、2018年にも日本武道館公演を成功させる。2021年12月には約3年3カ月ぶりとなるアルバム「夜にしがみついて、朝で溶かして」をリリースした。なお、尾崎は半自伝的小説「祐介」やエッセイ「苦汁100%」「苦汁200%」「泣きたくなるほど嬉しい日々に」を刊行。最新小説「母影」が「第164回芥川賞」候補作品に選ばれた。
TAKU INOUE
- 1曲目「猫吐序曲」作曲
- 2曲目「猫吐極楽音頭」共同作曲
- 6曲目「AIDA」作曲
- 9曲目「Tell Me Why」作曲
ほか、多くのanoの楽曲で作曲や編曲を担当
提供曲について
anoちゃんと2019年に出会い、そこから作曲したり編曲したりしてきた曲がぜんぶ入っているので、本当に感慨深いです。アルバム用の新曲である「猫吐序曲」「猫吐極楽音頭」も気合い入れましたが、ほぼ初対面なのに急に二人きりで渋谷のスタジオに放り込まれて、互いに訳も分からないままに制作した「Peek a boo」がかなり印象に残っています。
anoへのメッセージ
奇妙なご縁で(?)同じレーベル同じ事務所になり、まあまあ長いことお手伝いさせてもらってきましたが、特に今年はanoちゃんのおかげでいろんな景色が見られて楽しいです。来年のツアーも何&卒よろしく!!!!
プロフィール
TAKU INOUE(タクイノウエ)
サウンドプロデューサー / コンポーザー / DJ。「アイドルマスター」シリーズなどのゲーム楽曲を制作し、さまざまなアーティストのサウンドプロデュースや楽曲提供を担当する。2021年にTOY'S FACTORY内のレーベル・VIAより「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でメジャーデビュー。2022年に星街すいせいとのプロジェクト・Midnight Grand Orchestraを始動させた。Midnight Grand Orchestraは12月13日に2ndミニアルバム「Starpeggio」をリリース。
Chinozo
- 7曲目「コミュ賞センセーション」共同作詞 / 作曲
提供曲について
anoさんからご依頼をいただいた際に、コミュ症は世間でなかなか生きづらい中、そういう人も頑張っているからということで「コミュ賞センセーション」という言葉をご提案いただきました。
私は仕事柄言葉のパワーに敏感なので、すごくいいなと思いまして。そこから曲を連想し、タイトルもまさにこの言葉のままになりました。
anoへのメッセージ
アルバムリリース、おめでとうございます。
初めてのアルバムに自身が関われて、本当に光栄です。色んな方に楽しんでいただけますように!
プロフィール
Chinozo(チノゾー)
2018年よりボカロPとしての活動を開始。2020年にミュージックビデオを公開した「グッバイ宣言」がTikTokなどで火がつき大ヒット。この曲は2022年7月にボカロ曲史上初めてYouTubeにて1億再生を突破した。奏音、がちゃとのユニット・niKuでも活動している。
ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)
- 8曲目「スマイルあげない」共同作詞作曲
提供曲について
リズミカルなビートに明るく楽しいシンセ、少し毒っ気のあるベースにのせて。「ぼくはニコッとスマイルあげないぜっ!」と力強く歌うことで不思議な爽快感が得られる曲です。
レコーディングでは可愛らしくもしっかりと芯のある声で歌い上げてくれたあのちゃん。ライブでもビックリするほどカッコいいパフォーマンスをしていて思わず魅入ってしまいました。
うまく笑えない、人とコミュニケーションがうまく取れない、そんな悩みを多くの人が持っている昨今。この曲を通して少しでも、いろんな人にやさしい世の中が広がっていったら嬉しいなと思います!
anoへのメッセージ
ライブやフェスなどで度々お見掛けすることはありながら、これまで面識のなかったあのちゃん。今作でご一緒することができて本当に嬉しかったです! 普段ロックのイメージが強いあのちゃんにダンスミュージックを掛け合わせたことで、私にとっても思い入れ深い特別な曲を作ることができました。
この度は待望の1stアルバムのリリース、本当におめでとうございます!
プロフィール
ケンモチヒデフミ
水曜日のカンパネラのトラックメイカー。femme fataleなどさまざまなアーティストのサウンドプロデュースも手がける。水曜日のカンパネラは2021年に初代ボーカリストのコムアイが脱退し、2代目ボーカリストとして詩羽が加入。2022年2月リリースの「エジソン」がTikTokでバイラルヒットを記録した。2024年3月16日に東京・日本武道館で単独公演「METEOR SHOWER」を開催する。
ANCHOR
- 10曲目「ンーィテンブセ」作曲
提供曲について
作曲と編曲を担当した“ンーィテンブセ”は、構成もアレンジも最低限にまで削ぎ落として歌声と歌詞を引き立てるために出来た楽曲です。
初期段階はシンセサイザーやピアノなど派手な楽器を支えに並べていたのですが、anoさんの仮歌と共に聴いた際に常套句的に入れた打ち込み音源が何だか偽善的に感じたことをよく覚えております。
職業としての音楽ですと完成形を求めてしまうことが多いのですが、この楽曲の行方はギターのTAKU INOUEさんとドラムのboboさんとanoさんの歌と歌詞に全て委ねたいなっと。
つまり丸投げです。編曲のクレジットを申し訳なく思っております。大変恐縮です。
サビも一回しか来ないし、Aメロからハモリで武装してるし、音作りもオールドスタイルで変な楽曲ですが、青春なんて無敵なモノと違って一回こっきりの思春期は古臭くて武装してそんなものかなーっと私にとっては他人事みたいなのにどこか寄り添ってくれるそんな楽曲です。
長くなりましたが色々な言葉で着飾るより、聴いた方が見えた景色、感じた気持ちがこの楽曲の魅力だと思います。
anoさんと制作場所でギターを持ってあぁでもないこうでも言いながら作ったあの日の衝動が届きますように。
追伸:
未熟な私はタイトルの発音が未だに出来ないので、何方か教えてください。
よろしくお願い申し上げます。
anoへのメッセージ
アルバムリリースおめでとうございます。
また一緒に音楽してください。
プロフィール
ANCHOR(アンカー)
テレビアニメ「地縛少年花子くん」のオープニングテーマ「地縛少年バンド(生田鷹司×オーイシマサヨシ×ZiNG)」や、育成ゲーム「A3!」のキャラクターソングなどを手がけたことで知られるサウンドプロデューサー。2017年にはピエール中野(凛として時雨)、Nob(MY FIRST STORY)、滝善充(9mm Parabellum Bullet)とクリエイターユニット・ZiNGを結成した。2022年5月よりトイズファクトリー内のレーベル・VIAに所属。同年8月公開の映画「サバカン SABAKAN」で主題歌を担当した。
プロフィール
ano(アノ)
2020年9月に「ano」名義でソロアーティストとしての音楽活動を開始し、2022年4月にアニメ「TIGER & BUNNY 2」のエンディングテーマ「AIDA」でメジャーデビュー。2022年11月にリリースした、アニメ「チェンソーマン」第7話エンディングテーマ「ちゅ、多様性。」が大ヒットを記録した。2023年12月13日に初のCD作品となる1stアルバム「猫猫吐吐」をリリース。同年放送の「NHK紅白歌合戦」への初出場が決定した。またソロとは別軸で、4人組バンド・I'sのボーカル&ギターとしても精力的に活動。さらにアーティスト活動の傍ら、映画やドラマ、バラエティ番組などさまざまなフィールドでマルチに活躍する。