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イラン映画「セールスマン」主演女優が初来日、「古い価値観」と記者を一刀両断

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タラネ・アリシュスティ

タラネ・アリシュスティ

アスガー・ファルハディの監督最新作「セールスマン」で主演を務めた女優タラネ・アリシュスティが本日6月9日、東京・日本記者クラブで会見を行った。

本作は夫の留守中、妻が何者かに襲われたことをきっかけに、穏やかだった夫婦の生活が一変していくさまを描くサスペンス。第89回アカデミー賞外国語映画賞のほか、第69回カンヌ国際映画祭脚本賞、男優賞を受賞している。アリシュスティが妻のラナを、シャハブ・ホセイニが夫のエマッドを演じた。

2009年に製作された「彼女が消えた浜辺」以来のファルハディ作品への参加となったアリシュスティは、「初めての日本です。こうして記者の方々とお話をさせていただき、映画を通じてお互いの文化を知ることができるのは、本当にうれしい」と挨拶する。

続いて第89回アカデミー賞の結果が発表されたときのことに話が及ぶ。2017年1月、ドナルド・トランプがイスラム圏7カ国の人々にアメリカへの入国制限を敷いたことに対する抗議として、授賞式には出席しなかったアリシュスティ。「イランは朝方5時で、私はテレビドラマの撮影所にいました。受賞の確率も高いと思っていたし、もちろん女優として行ってみたい気持ちもあった」と回想。そして「私たちが受賞したときに、ほかの国の映画人が喜んでくれた。彼らが私たちのために声を上げ、人として正しい道筋を示してくれたのが喜びだった」と語る。

さらに記者から、ハリウッド映画での暴力的でステレオタイプ的なイスラム系の描かれ方をどう思うか問われたアリシュスティは、「それはよく言われる古い価値観」と一刀両断。「メディアは昔から本来の文化、芸術とは異なるイメージを見せるプロパガンダ。私たちはネット社会を生きている。色んな考え方をシェアできる世の中で自分たちが見たものを信じるか、信じないかはいくらでも選択できる」と述べ、「私も含めイラン人はハリウッド映画をたくさん観ている」と答えた。

さらにイランで映画を製作する際の検閲に関する質問も。一般的に政府からの検閲が厳しいというイメージを持たれるイランだが、「セールスマン」は簡単に許可をもらえたと語る。「今イランで映画を作る監督たちは自分たちが表現できる範囲と社会からの制限をわかっている。脚本に赤が入れば検閲官を納得させるか、こちらが納得するかの話。監督に悪意がなければ赤もとれるし、作り手の良心的な心は検閲官にも伝わる」とイラン映画界の現状を語る。

会見も終盤、日本に対する印象を聞かれたアリシュスティは「日本の方はとてもフレンドリーで、おもてなしの精神がすごい」とコメント。そして「今度は仕事じゃなくて、プライベートでゆっくり過ごしたい」と述べ記者会見を終えた。

「セールスマン」は、6月10日より東京・Bunkamuraル・シネマほか全国で順次ロードショー。

(c)MEMENTOFILMS PRODUCTION - ASGHAR FARHADI PRODUCTION - ARTE FRANCE CINEMA 2016

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