第28回高松宮殿下記念世界文化賞受賞者による記者会見が本日10月17日、東京・ホテルオークラ東京にて行われ、演劇・映像部門で受賞した
1988年に創設された高松宮殿下記念世界文化賞は、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で、世界的な業績を残している人物に毎年授与される賞。本年度はスコセッシのほかに
合同記者会見に出席したスコセッシは「非常に多くのインスピレーションを日本から受けてきた。溝口(健二)監督の『雨月物語』や黒澤(明)監督の『生きる』といった映画のほかに文学、風景などからも影響を受けた日本で賞をいただけて光栄に思います」と挨拶した。
その後、スコセッシは個別懇談会に参加。受賞した心境についてスコセッシは「まるで違う現実に来たような気分」とコメントする。また過去に同賞を与えられ、ともに2016年に逝去したアンジェイ・ワイダとアッバス・キアロスタミに触れ「アンジェイとは友人で、亡くなったことに心を痛めている。彼の『灰とダイヤモンド』は深く記憶に残っている。アッバスも15年来の友人。彼の作品は映画を再定義した。そして人間としても素晴らしい人物だった」と哀悼の意を表す。
同じく高松宮殿下記念世界文化賞の受賞者で、自身が敬愛する黒澤明の監督作「夢」に出演しているスコセッシ。記者から出演の経緯を聞かれたスコセッシは「友人のフランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカスが(プロデューサーとして)『影武者』の作業をしていたとき、ちょうど『夢』の準備段階だったんです。黒澤監督がフランシスに『スコセッシって言ったっけ、すごい早口でしゃべって、目がきょろきょろ動く彼、ヴァン・ゴッホ役で出てくれないかな』と聞いたら彼が『イエス』って答えたらしくて」と語り、笑顔を見せる。
2012年に日本公開された「ヒューゴの不思議な発明」で3D映画に挑戦したスコセッシは、日々進歩していく現在の映像技術について「ビジュアルエンタテインメントの新たな黎明期、新しい時代に入ったと感じています。私はこの歳だし、あとは皆さんに任せようと思っています」とコメント。また記者から、ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞について聞かれたスコセッシは「驚いたが、大変うれしい。彼をミュージシャンと捉えたことはない。彼の仕事は歌詞、詩の部分だと思う。彼の音楽は、私たちの文化をかたどったものであり、歌詞の一部が私たちの人生、生き方を表しているのではないかと思っています」と答えた。
遠藤周作の小説を原作にした監督作「沈黙-サイレンス-」について質問を受けたスコセッシは「この映画は27年以上撮りたいと思ってきたもので、やっと最近手がけることができた」と述懐。また「2009年に調査のために長崎県の外海を訪れました。その際に地域に住むカトリックの方々のお話を聞くことができたんですが、彼らの信仰の強さに触れ、まるで17世紀の隠れキリシタンの人々と会っているような思いになりました。彼らと会ったことで映画のインスピレーションが湧きました」と製作時を振り返った。
第28回高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式は明日10月18日、東京・明治記念館にて開催。なお「沈黙-サイレンス-」は2017年に全国公開され、キャストにはアンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシらが名を連ねる。
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- 「沈黙-サイレンス-」公式サイト
- 高松宮殿下記念世界文化賞 公式サイト
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