この映画は、ベルギーの絵本作家ガブリエル・バンサンによる鉛筆デッサンをベースにした名作絵本「アンジュール・ある犬の一日」を、情感豊かにショートムービーとしてアニメ化したもの。1986年に刊行された原作絵本は、日本でも日本図書館協会選定、全国学校図書館協議会選定、産経児童出版文化賞美術賞など数々の賞に輝き、絵本としては異例の26万部を数えるロングセラーとなっている。
アニメ本編は絵本の世界感を生かしたモノトーン映像で、セリフはなくBGMのみ。1982年に逝去したカナダの伝説的ピアニスト、グレン・グールドが遺した珠玉の名曲の数々が作品を彩る。メインテーマ「アヴェ・マリア」は、グールドの演奏するバッハに宮本笑里のバイオリンの旋律を加えたもの。「アンジュール」は12月5日にDVDでリリースされ、これに先駆け10月3日よりiTunes Storeにて先行配信さるほか、サウンドトラックCDも発売される。
2012年はグレン・グールドの生誕80周年&没後30年のアニバーサリーイヤーであり、地元カナダでのシンポジウムのほか、日本においてもカナダ大使館や京都府立府民ホール・アルティでイベントが予定されている。なお「アンジュール」は11月6日にカナダ大使館オスカー・ピーターソンシアターにおいて、宮本笑里によるテーマ曲「アヴェ・マリア」の生演奏とともに特別上映される。
坂本龍一コメント
なつかしい絵本ですが、動画で見るのもよいものですね。犬の疾走感などがよく描かれています。ナレーションなどはなく、サウンドは音楽と効果音だけ、というのもよかったと思います。最後の「アヴェ・マリア」、犬が少年に会えた喜びにとてもフィットしていましたね。さて、この楽曲ですが、「グールドの演奏にダビングする?! そんな不遜なことをしていいのか?」グールドを崇めている僕には、これは驚くべき依頼でした。本当におそるおそる手に触れた、という感じですが、グールドの演奏に顕微鏡で見るように接してみて、改めてその深さや人間味を感じ、以前にも増して彼が好きになりました。宮本さんも、何度も演奏していただき、ご苦労さまでした!
宮本笑里コメント
数年前、姉から薦められて出会った絵本、アンジュール。鉛筆だけのシンプルな白と黒の世界が、ページをめくるごとに今にも動き出しそうな細かい表情やしぐさにとても引き込まれ、私にとって心をゆさぶられた大好きな一冊でした。今回は映像となり、さらに音楽も一体となることで、絵本とはまた違った表情が垣間見えてきます。「詩も文章もない物語だからこそ訴えかけてくるもの」を強く感じ、私の心をつかんで離しません。この作品は、命の大切さや動物への愛情というものを、改めて考えさせてくれました。私が今回演奏させていただいたアヴェ・マリアも、この物語を読んで感じたままに、音で伝えられるよう心がけました。レコーディングでは、グレン・グールドの素晴らしいピアノにできるだけ寄り添うように、そして坂本龍一さんからは、演奏する上でどのような歌い方をすればより感情を音に吹き込むことが出来るかなどを教わり、実際に坂本さんのピアノと一緒に、何度もリハーサルに付き合ってくださいました。映像と音、どちらも魅力がたっぷりつまった作品。ぜひ沢山の方々に観ていただきたいです。
グレン・グールド財団 総代理人スティーヴン・ポーゼンコメント
坂本龍一さんはグレン・グールドの音楽、クリエイティヴィティやテクノロジーに関する進歩的な考え、アーティスティックな人柄に対し、深く優れた理解の持ち主です。そんな坂本さんが自身のクリエイティヴな試みを通じ、グレン・グールドを分かち合うための力添えをくださることに感謝しております。坂本龍一、宮本笑里、グレン・グールドという3人の素晴らしいアーティストが一堂に会したこの音楽的コラボレーションでは、各アーティストの個性が際立つと同時に、一体化したひとつの素晴らしい声としても聞こえてきます。坂本龍一さん、宮本笑里さん、おめでとうございます。犬と自然とシンプリシティをこよなく愛したグレン・グールドが健在だったなら、「アンジュール」の一部となることを光栄に思ったに違いありません。
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- アンジュール UN JOUR, UN CHIEN
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音楽ナタリー @natalie_mu
坂本龍一アニメ音楽で宮本笑里×グレン・グールドがコラボ http://t.co/nn9ZMsZB