「KING SUPER LIVE 2024」Blu-ray発売記念特集|宮野真守×蒼井翔太×内田雄馬クロストーク

KING AMUSEMENT CREATIVE / SONIC BLADEに所属するアーティストや声優を中心に、キングレコードのアニソンの歴史を彩ってきたアーティストが一堂に会する「KING SUPER LIVE」、通称キンスパ。2015年にスタートしたこのイベントは、2024年5月11、12日に神奈川・Kアリーナ横浜にて約6年ぶり、通算4回⽬の開催を迎えた。2日間を合わせた出演者の数は過去最多となる30組、披露された楽曲の数は100曲。この日限りのレアなコラボも飛び出し、キングレコードが育んできたアニメソングの数々に両日合計で約3万5000人の観客が酔いしれた(参照:「キンスパ2024」レアなコラボや懐かしの楽曲に沸いた初日は「いにしえのオタクの魂が浄化される夜」 / 「キンスパ2024」2日目も貴重なコラボ多数、水樹奈々「アニソン好き魂をこれからも燃やして」)。

この熱狂の2日間から1年。「KING SUPER LIVE 2024」の模様を余すところなく収録したBlu-rayがリリースされた。各⽇約1時間のメイキングも収めた計10時間超、DISC4枚組におよぶ大ボリュームの映像作品だ。音楽ナタリーでは本作の発売を記念して2本の特集記事を掲載。2本目となるこの記事では「キンスパ2024」でコラボを果たした宮野真守、蒼井翔太、内田雄馬のクロストークを掲載する。約10年前に「うたの☆プリンスさまっ♪」で接点を持った3人は、お互いにどのような思いを抱き、「キンスパ」での貴重なコラボパフォーマンスを通してどんなことを感じたのか。じっくりと振り返ってもらった。

取材・文 / 西廣智一

3人それぞれの接点と印象は

──お三方の接点として、一番大きいのは「うたの☆プリンスさまっ♪」でしょうか。

内田雄馬 3人での最初の共演と言うと「うた☆プリ」になるのかなと。それがちょうど10年前の2015年だったと思うんですけど、お二人の接点はもうちょっと前からですよね。

宮野真守 そうだね。翔太はそもそも最初、「オルフェ」(2011年に発表された宮野のシングル表題曲)で僕の仮歌を歌ってくれていたので、最初は声優としての接点ではなくて。とても上手な仮歌で「ハードル上げてくるじゃないか」って思ったのを覚えています(笑)。

蒼井翔太 ふふふ。今でもそうやって関わらせていただいたことを忘れずにいてくださっていることが、僕自身すごくありがたいです。「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレボリューションズ」ぐらいまでは、そのほかのキャラクターソングの仮歌もやらせていただいていました。その中で宮野さんは先輩として僕の仮歌を受け入れてくださっていたので、とても大きな存在です。かつ、声優界において常に先陣を切っていくスターであり、最高の役者ですね。

宮野 そう言われるとうれしいです。そういう不思議な立ち位置から関係が始まったのもあり、翔太には「きっといろんなものと戦って今ここにいるんだろうな」と感じる経歴も含めて興味があって。最初は声優としてやっていくのか、歌い手としてやっていくのかみたいなところが不透明だったと思うけど、その中で常に彼なりに戦い続けて、自分の中の表現を追求してきたんだろうなと感じています。だから、少しだけお兄さんという立場として、応援したいなという気持ちが強いです。雄馬くんのことはちょっとよくわからないですけど……(笑)。

内田 ちょっと!

宮野 (笑)。雄馬は……心配です。

蒼井内田 (笑)。

内田 これ、どう記事になるんですか! どのへんが心配なんですか!(笑)

宮野 ごめんごめん(笑)。だってさ、すぐ混乱しちゃうじゃない。アーティストとしての初めてのステージが前回の「キンスパ」(2018年開催)で、「皆さんは全員内田雄馬です!」と言って会場中を内田雄馬にしちゃったじゃないですか。

内田 MCで言いましたね。

宮野 その言葉を聞いたときに、僕は心配になっちゃって。それ以降も雄馬のライブを観るとMCについて心配になることがあったから、あるときアフレコ現場で伝えたんですよ。「言いたいことはある程度事前に構築しておいて、あとはそのときの気持ちで話したいことを自分の言葉で言えば大丈夫」って。そしたら、今度はその通りのMCになりすぎちゃって(笑)。「ちょっと余計なアドバイスをしちゃったな」と、より心配になっちゃいました。

内田 そうやってチェックしてくれていてうれしいです(笑)。

「KING SUPER LIVE 2024」での内田雄馬のライブの様子。

「KING SUPER LIVE 2024」での内田雄馬のライブの様子。

蒼井 宮野さんなりの愛が伝わりますね(笑)。僕から見た雄馬くんは、レーベルの後輩としてすごく頼もしいし、場の雰囲気を一瞬にして変えてくれる稀有な存在。例えば、ハプニングがあってその場が暗い雰囲気になったとしても、それをパッと明るく陽の雰囲気に変えてくれる、そういう力の持ち主なんです。僕からしたら宮野さんも雄馬も太陽のように明るい方向へ引っ張ってくれる人。逆に自分自身は月側の人間だと思うから、すごくバランスが取れている3人なのかなって、個人的には思います。

内田 僕から見たマモさん(宮野)は、常にアンテナをめっちゃ張っている人という印象があって。「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」の舞台挨拶で3グループ(ST☆RISH、QUARTET NIGHT、HE★VENS)のキャスト18人が勢ぞろいしたことがあったんですけど、僕が挨拶をしたときに何か怪しいことを言ったみたいで、それをマモさんは瞬時に察知して、拾ってくれました。

宮野 全然覚えてないんだけど(笑)。

内田 そういう意味でも、心配されている後輩なのかもしれません(笑)。

宮野 レーベルの中でもお兄さんという立ち位置だから。僕がいないほかの現場では、もしかしたらしっかりしているのかもしれないけど(笑)。僕も若手の頃は先輩方に助けてもらってきたから、同じことをしているだけなんだよね。

内田 ありがたいです。マモさんの印象って初めてお会いした頃からずっと変わらないですし、なんならそのイメージを常にブラッシュアップし続けているんですよね。初めてお会いしてから10年くらいになりますが、そのアップデートし続けられる姿勢は本当に尊敬しています。それにしょーたん(蒼井)も、自分のオリジナリティや世界観を常に持ち続けている。それって誰にでも真似できることでもないですし、近くで見るたびに刺激をもらっています。

「キンスパ」は生きるためのエネルギーを補充できる場所

──ここまでのお話だけでも、お三方の関係性や絆みたいなものがしっかり伝わってきましたし、そういうファミリー感が凝縮されたイベントが「キンスパ」なのかなと思いました。

宮野 森口(博子)さんが「『キンスパ』にはキングレコードのアーティスト間の絆がすごくあるね」とおっしゃられていて。森口さんのような大先輩の方がそういうことを言ってくださると後輩の我々もうれしいですし、感激もしますし、「キンスパ」をここまで続けてきて本当によかったなと思います。僕は2015年最初の「キンスパ」から参加していますが、このレベルのライブを定期的に作るのって本当に大変なことじゃないですか。我々にアニソンやレーベルメイトに対する愛があるからこそ、みんなで力を合わせてやってこられたんだと思います。

蒼井 僕にとって「キンスパ」は、レーベルの先輩方や新しく入ってきた後輩も含め、みんなが一堂に会してお客様の思い出のアニソンや大好きなアニソンを一緒に振り返りながら楽しむことができるイベントで、さらに現在進行形で一緒に走り続けることができるお祭りですね。僕自身もアニソンが好きでアニソンに救われてきた人間なので、生きるためのエネルギーを補充できる場所だなと思います。

「KING SUPER LIVE 2024」での蒼井翔太のライブの様子。

「KING SUPER LIVE 2024」での蒼井翔太のライブの様子。

内田 昨年は2日間で100曲が披露されましたが、これだけのいろんな世代のアーティストの皆さんが一堂に会してライブを作るのって、もうそれだけで異次元的な話というかミラクルだなと思います。特に今回はライブ全体を通して“流れ”みたいなものがあったような気がしました。自分の出番だけじゃなく、その後ろにつながっていくような感覚が自然と生まれたんですよね。きっとそれは、キングレコードで音楽を制作されている皆さんが誰に何を届けるか、そういうことを常に意識してきたからこその結果なわけで。瞬間だけで終わらずにライブ全体を通して、どういうものを届けるかにこだわった。だからここまでホスピタリティが高い時間になったのかなと、振り返って感じました。

──曲間のMCで前後の出演アーティストのことを話していたり、そういうところにもアーティスト同士のつながりが現れていますよね。いろんなコミュニティが世代を超えてひとつになって大きなものを作っているんだなと感じました。

宮野 わかります。それぞれの時代を作ってきたいろんなコミュニティの人たちが、ちゃんと思いを持ち寄って集結できたのはすごいことですよね。昨年は復活したユニット(やまとなでしこ)もありましたし、いろんな人が各所に掛け合ったことで一堂に会してひとつのものを作ることができた。とても大変なことだったんじゃないかなと思います。

蒼井 アニソンという共通言語があるから実現できたことですよね。ただ、大きなアニソンフェスティバルはほかにもいくつかありますけど、1つのレコード会社がフェスを運営して、関わるアーティストたちが集結するというのは、キングレコードがこれまで作ってきた歴史があってこそ。本当に奇跡の2日間だったと思います。

──披露された楽曲は1980年代のものから最新のものまで非常に幅広いですが、アニメファンならどれも一度は耳にしたことがあるような楽曲ばかり。普通の音楽フェスとは異なり、アニソンというキーワードがあるからこその特徴ですよね。

蒼井 そうですね。お客様はどんな曲が来ても楽しんでくださる。キングレコードというレーベル全体を応援してくださっているんだなと声と表情でわかりますし、自分もこのレーベルに所属するアーティストの1人として盛り上げていきたいという思いがひと際大きくなりました。しかも、国内のみならず海外のお客様も来てくださっていたと聞いていますし、そういうところでもキングレコードはすごい歴史を作ってきたんだなと実感できました。