リム・カーワイの長編デビュー作がデジタルリマスター版で劇場公開決定、予告も解禁

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リム・カーワイの長編デビュー作「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」のデジタルリマスター版が、11月29日より東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開されることが決定した。

「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」デジタル・リマスター版のメインビジュアル

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大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作し、“シネマドリフター(映画流れ者)”を自称するマレーシア出身のリム・カーワイ。大阪大学卒業後、サラリーマン生活に見切りをつけ北京電影学院に飛び込んだ彼が、2009年に北京郊外で撮影したのが「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」だ。

リム・カーワイ ©︎JUMPEITAINAKA

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同作の主人公は、10年ぶりに故郷に帰ってきたア・ジェ。しかし、レストランの店主ラオ・ファンを除き、家族でさえもア・ジェの存在を覚えている者はいなかった。ラオ・ファンに連れられ、秘密の鍵を握る人物に会いに行くア・ジェだったが、彼は殺人の濡れ衣を着せられ処刑されてしまう。死んだはずが再び戻ってきたア・ジェと、空虚な日常を生きるラオ・ファン。彼らは町に起こる奇怪な事件をきっかけに、新しい人生を手に入れようとする。

「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」デジタル・リマスター版の場面写真

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ア・ジェを大塚匡将、ラオ・ファンをゴウジー(狗子)、ヒロインをホー・ウェンチャオ(何文超)が演じた。YouTubeで公開されたモノクロームの予告編には、ア・ジェが拘束される様子や、彼とラオ・ファンが車に乗るシーン、ヒロインの女性が亀を見つめる姿などが収められた。リム・カーワイは本作について「長編デビューから気づけば15年が経ち、この間に11本の長編映画を制作してきました。作品ごとにテーマやスタイルはそれぞれ異なりますが、無国籍/多国籍で根無し草のような原点は、やはりこの『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』にあると思います」とつづっている。

「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」デジタル・リマスター版の場面写真

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「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」デジタル・リマスター版の配給はCinema Driftersが担当する。

映画「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」デジタル・リマスター版 予告編

リム・カーワイ コメント

長編デビューから気づけば15年が経ち、この間に11本の長編映画を制作してきました。
作品ごとにテーマやスタイルはそれぞれ異なりますが、無国籍/多国籍で根無し草のような原点は、やはりこの「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」にあると思います。
これまで劇場公開の機会がなかなか得られませんでしたが、今回こうして初めて劇場で上映できることを本当に嬉しく思います。
これを機に、当時ビデオで撮影した本作の色と音を改めて調整し、デジタル・リマスター版として仕上げました。
この映画が、まだ出会ったことのない多くの方々に届くことを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。

黒沢清(映画監督)コメント

アジアのパワーと混沌が、ヨーロピアンな深い思索をもって構築され、最後にはまるでハリウッド映画のような興奮で観客の心を釘付けにする…世界映画の理想的なカタチがここにある。つまりこの作者はエドワード・ヤンがやったさらにその先を提示しようとしているのだ。彼の名前はリム・カーワイ、是非とも覚えておかねばなるまい。

※2011年に寄せたコメント

筒井武文(映画監督)コメント

第1作にして、この完成度。リム・カーワイの「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」には、心底驚かされた。10年ぶりに帰郷した青年を家族をはじめ、街の誰もが覚えていない。狂っているのは、自分か、世界か。その場の関係性をワンショットで描き切る。それどころではない。世界の陰謀が明かされそうになると、それを超える不条理が見事なモノクロ画面に定着され、今度は内容を映画形式が凌駕していくことになる。15年前に撮られた傑作を遅れてきた観客として発見すること。しからば、リム・カーワイ世界の進展という追体験の愉しみが待っている。

樋口泰人(boid主宰 / 映画批評家)コメント

まるで太古の昔より根を張りそこにあったのだとでも言うかのような振る舞いを見せる登場人物や街の風景に貼りついた、しかし明日はどうなるかまったくわからないといったどこか無責任で限りなく危うい浮遊感。それはおよそ0.12ミリという35ミリフィルムの薄さのもつ頼りない存在感とも言い換えられるだろう。リム・カーワイは初の長編であるデジタル作品で、その半透明の怪しい揺らめきを見事に映し出したのだ。そこでは現在が当たり前のように融解して過去や未来になだれ込み、「今ここ」という現在を形作るいくつもの地層を暴き出すだろう。フィルムの連なりとも言える、見るものすべてをそんな「映画」へと誘うミステリートレインは絶賛走行中である。荒野を走るその長い長い列車を見たら、誰もが「映画」の世界へと連れ去られるに違いない。

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©︎cinemadrifters

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