1999年生まれの新鋭監督・
神奈川県出身、現在25歳の平田は日本大学芸術学部映画学科監督コースを卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に進学。大学院の教授であった映画監督の
「ピクニック」は、第72回サンセバスチャン国際映画祭NEST部門に出品された20分の作品。ピクニックに出かけた文乃、恋人の修一、その娘・湊を軸に、それぞれが抱える過去の記憶や幻想と現実が交錯するさまを描く。
第18期修了制作作品として完成させた「ロスト・イン・イメージズ」では、映画の撮影中に女優が失踪を遂げたことから、フィクションによって現実が侵食されていく映画監督の混乱が映し出される。
特集上映の開催にあたり、平田は「まったくジャンルの異なる2作品ですが、どちらにも、この不確かな世界で、それでも何かを信じようとする人々の姿が映っています。ご覧になった方々の中にも、何か共鳴するものがあれば嬉しいです」とコメント。また批評家・蓮實重彦は「ふと目にした『ピクニック』のショットの連鎖に強く惹かれた。厳密なのに緩やかだ。緩やかなのに厳密である。『ロスト・イン・イメージズ』も、撮れている。平田雄己はまぎれもなく未来の映画作家だ」と称賛している。
YouTubeでは特集上映の予告編が公開中。上映は東京藝術大学大学院映像研究科の協力のもと、イハフィルムズの企画・主催によって実施される。
「平田雄⼰監督特集上映《Lost in Images》」予告編
平田雄己 コメント
このたび、大学院時代に制作した作品を、より多くの方にご覧いただける機会をいただき、大変光栄に思います。
おそろしい速さで社会が移り変わり、フィクションと現実の境界が曖昧になっていくなかで、映画には何ができるのか。もしかすると、そのどちらも描き出せることが、映画の魅力なのかもしれない。そんなことを考えながら、取り組んだ作品です。
まったくジャンルの異なる2作品ですが、どちらにも、この不確かな世界で、それでも何かを信じようとする人々の姿が映っています。ご覧になった方々の中にも、何か共鳴するものがあれば嬉しいです。
蓮實重彦 コメント
ふと目にした「ピクニック」のショットの連鎖に強く惹かれた。厳密なのに緩やかだ。緩やかなのに厳密である。
「ロスト・イン・イメージズ」も、撮れている。平田雄己はまぎれもなく未来の映画作家だ。
塩田明彦 コメント
マホガニーに囲まれた探偵事務所に瞳に光のない女が現れ、失踪者の捜査を依頼する。案の定、事件は錯綜していくのだが、これは映画内映画の話で、実はこの映画の出資サイドは女優を変え、新たな映画を創ろうとしている。
これに猛反発する監督だが、瞳に光のない女優がどこかへ失踪し、新たな謎が、彼の私生活を覆い始める。イメージは増殖し、謎もまた増殖していく。そうこうするうち突如、天地の軸と水平の軸が交錯し、突発的で同時多発的なアクションが画面の上を駆け抜けていく。映画とはなによりもまず“活劇”なのだと知る者のみに可能な、見事な映画的瞬間がそこにある。
諏訪敦彦 コメント
「フィルム・ノワール」という失われたジャンルを映画化するために、映画を作るというメタフィクションを導入することで虚構と現実の対立が仕組まれるが、現実の物語もまた虚実を往復する女の謎の失踪によってフィルム・ノワールと化してゆき二つの世界は相互に侵食してゆく。その外側にさらに国家的な陰謀を進行させることで世界を調停させようとするが、それもまた虚構の内部に織り込まれてしまうことに変わりはない。自ら仕掛けた二重三重の罠に自分で嵌まり込むかのように物語は錯綜し、出口などないように思えるが、その混沌に身を呈する決意によって映画は冒頭に現れる子ども=自然という圧倒的な他者との回路を模索する。このような挑戦をした映画が他にあるだろうか。
筒井武文 コメント
平田雄己の「ロスト・イン・イメージズ」は、失踪した夫の探索を依頼される探偵という、陰影を強調したフィルム・ノワールとして始まるが、主演女優の失踪で物語が中断し、女優を探して撮影を再開しようとする監督とシナリオを変更しようとするプロデューサーの対立の物語になっていく。しかし、そこでも不条理な陰謀の世界が展開され、作る主体が解体されていく。フィクションは宙吊りされ、時間が消滅していくような映画体験をもたらすのである。
おおとも ひさし @tekuriha
蓮實重彦が“未来の映画作家”と称賛、平田雄己の特集上映がポレポレ東中野で開催 - 映画ナタリー
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