「よこがお」「波紋」の
同作は“生きづらさ”を抱える思春期の青年と、彼の叔母による対話を描いた物語。山のキャンプ場を営む典子のもとに、少年院を1年前に出た甥っ子・ユウキが訪れる。母親を探しているというユウキをアルバイトとして雇う典子は、「私にできることは、あなたの話を聞くことだけ」と彼に寄り添うのだった。
生まれながら他者とのコミュニケーションに困難を抱える典子役で筒井、複雑な家庭環境や過去を持つ18歳のユウキ役で高田が出演し、典子の理解者である明夫役ににしやま由きひろ、ユウキのいとこ・健二役に徳永智加来が起用された。
監督・脚本を担ったのは「HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話」で知られる
「もういちどみつめる」の配給は、渋谷プロダクションが担当する。
佐藤慶紀 コメント
本作は、18・19歳の厳罰化を目的とした、2022年の少年法改正に対して抱いた疑問から制作を始めました。
この改正には、多くの専門家から「更生の機会を奪い、少年法の理念に反する」といった倫理的な批判や、「統計的に少年犯罪は減少傾向にある」といった実証的な批判もあり、私もそうした指摘に同意します。ただ同時に、「なぜ、厳罰の対象となるような事件が起きてしまうのか」「未然にそれを防ぐことはできないのか」という根本的な問いに向き合いたいと思いました。
その過程で、「生きづらさ」というテーマが浮かび上がってきました。
本作では、生きづらさを抱えているのは少年院を出所したユウキだけではありません。彼が訪ねる叔母・典子もまた、異なるかたちで生きづらさと向き合っています。ユウキの場合は、家庭環境や社会との関わりのなかで生まれた心理的な要因によるものです。一方で典子は、持って生まれた感覚や行動の傾向が、日常生活の中で周囲とずれてしまい、それが生きづらさにつながっています。
そうしたふたりが、相手の「生きづらさ」にどう気づいていくのか。そして、そのなかで「対話」はどのような役割を果たしうるのか描きたいと思いました。
また本作では、自然をただの背景としてではなく、出演者と同等の存在として捉えたいと思いました。絶滅に瀕した原始植物を探す由香理の姿には、言葉にならない違和感や感覚に導かれるもうひとつの対話を重ねています。声なき自然の道理に触れることが、何かを見つめ直すきっかけになればと思いました。
主演の筒井真理子さんはもちろん、高田万作くんも、非常に感受性が豊かで、繊細な表現ができる俳優です。特に、ふたりの対話シーンでは、お互いの「私」がふっと消えているように感じる瞬間がありました。それはふたつの存在の響き合いのように感じ、素晴らしかったです。
本作では、夕闇や夜明け前の、景色と輪郭が溶け合い、一体感を感じられるひとときを大切に撮影しました。ぜひ、劇場でご覧いただけたら嬉しいです。
※高田万作の高は、はしご高が正式表記
筒井真理子の映画作品
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渋谷プロダクション @shibuyanokobaya
配給作品です。
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