短編オムニバス映画「LABYRINTHIA/ラビリンシア」が8月15日より東京・テアトル新宿、大阪・テアトル梅田、京都・アップリンク京都ほか全国で順次公開される。
本作は3本の短編からなり、台湾・日本合作の第1話「SWALLOW」、韓国・日本合作の第2話「HANA」、そして日本制作の第3話「告解」で構成されている。監督を務めたのは新鋭・中西舞。これまでに海外映画祭での受賞やノミネートを重ね、米Variety誌では“注目の日本人新鋭監督”の1人に選出されるなど、国際的にも注目を集めてきた。
「SWALLOW」は若さと美貌を求める女優が、ある晩餐会で狂気の渦にのみ込まれていく物語。「HANA」では、ベビーシッターとして訪れた高級マンションで不思議な現象に遭遇する大学生の恐怖体験が描かれる。「告解」では教会を舞台に、ある若い女性の懺悔が神父の平穏を揺るがしていくさまが緊張感を持って展開される。「SWALLOW」「HANA」には、「哭声/コクソン」のサウンドデザインに携わったMonofoley Sound Worksや「哭悲/THE SADNESS」の特殊メイクチームが参加。「告解」ではキャストに
あわせて本作のキービジュアルと場面写真も到着した。2種のキービジュアルには「女たちの迷宮(ラビリンス)へようこそ」というコピーが記されている。
劇場公開の決定にあたり、中西はステートメントを発表。幼少期に観たアルフレッド・ヒッチコックの「サイコ」をきっかけにホラーに目覚めた原体験を明かし、「ジャンル映画、なかでもホラーという“視点”を通して作品をつくるという行為は、私たちが普段つい目をそらしてしまう現実や、社会で見過ごされがちな感情やテーマに光を当て、それを語るための一種の闘いだと考えています」と伝える。そして「このジャンルの持つ可能性を信じて、誰もが抱える内なる闇に静かに光を当て続けたいと考えています」とつづった。
また本作を鑑賞した画家・上田風子は「細部への美術のこだわりと緊張感のある演出に、深く共感しました。ホラー映画は刺激を追求しがちなものですが、中西監督の作品は、私たちを繊細で心地よい不穏な雰囲気に包んでくれます」とコメントしている。
中西舞 ステートメント
幼い頃、ホラーの魅力に初めて触れた瞬間がありました。小学校低学年のとき、父のVHSで観たヒッチコック監督の「サイコ」に心を奪われ、その衝撃は今も鮮明に残っています。同級生たちを家に招いて鑑賞会を開き、彼らの悲鳴を聞きながら密かに喜んでいたあの瞬間こそ、ホラーというジャンルが私の創作の核となった始まりでした。
私がホラー映画に惹かれるのは、平穏な日常の陰に潜む恐怖や不安を映し出せるからです。一見穏やかに見える日常の裏側にも、言葉にできない恐れや抑え込まれた声がひそんでいます。ホラーというジャンルは、そうした沈黙を打ち破り、見えないものや封じ込められた叫びをあえて浮き彫りにし、強く響かせる力を持っていると私は感じています。
ジャンル映画、なかでもホラーという“視点”を通して作品をつくるという行為は、私たちが普段つい目をそらしてしまう現実や、社会で見過ごされがちな感情やテーマに光を当て、それを語るための一種の闘いだと考えています。
「SWALLOW」では、女優たちの競争を通じて浮かび上がる弱肉強食の世界、美と若さに囚われた執着心、そして終わりなき成功と名誉への欲望の連鎖を描いています。「HANA」では、精神的にも肉体的にも交わることのできない、切なく歪んだ親子関係と、その陰に潜む深い絶望を静かに見つめました。そして「告解」では、社会の中でこぼれ落ちた弱者が、逃げ場のない不安と消えぬ過去に呑み込まれていく様子を描きながら、その終わりなき悲しみの螺旋をすくい上げています。
ホラーという“視点”は、単に恐怖を与えるだけでなく、私たちが普段は目をそらしがちな真実をそっと照らし、新たな理解や共感を生み出す力があると感じています。だからこそ私は、このジャンルの持つ可能性を信じて、誰もが抱える内なる闇に静かに光を当て続けたいと考えています。そして同時に、ジャンルが秘める力を信じながらも、その創作の根底には、みんなをちょっと怖がらせて楽しみたいという、あの小学生の頃の私が今も変わらずひょっこり顔を出して、こっそり笑っている気がします。
監督 中西 舞
映画ナタリー @eiga_natalie
女たちの迷宮へようこそ…新鋭監督・中西舞の短編集「LABYRINTHIA/ラビリンシア」公開(コメントあり)
https://t.co/6F2LPi3MDd
ホラーに魅せられた監督が韓国・台湾・日本で撮った心理スリラー3作品
#ラビリンシア https://t.co/qEdsnjX7jO