アニメーション映画「
アヌシー国際アニメーション映画祭2023で最高賞のクリスタル賞を受賞した本作では、フランスのとある郊外を舞台に、チキンをめぐる母娘のドタバタ劇が描かれる。母ポレットの勘違いで叱られたリンダは、間違いを詫びるポレットに、亡き父が作ってくれたチキン料理が食べたいと懇願。しかしストライキ中でどこの店も営業していない。それでも母娘は警察官、運転手、団地の仲間たちを巻き込みながら、“思い出の料理”を食べるため行動を起こしていく。
マルタは「こうして自分の国から離れた場所で皆さんに作品を観ていただけてうれしく思っています」、ローデンバックは「映画の制作中は洞窟にいるような感じで閉じこもっているので、世界中を回って(観客を)自分の目で見られて感動しています」と挨拶する。片渕は「以前からの友人である2人の素晴らしさを、皆さんに知っていただければ」とコメントした。
本作を制作した動機について問われたマルタは「子供に向けて、子供をきちんとリスペクトした作品を作りたいと思っていました。そして、子供に受け入れられるのであれば大人にも受け入れられるだろうと思って作りました」と述べる。ひと足先に本編を鑑賞した片渕は「人物の線がちゃんとつながっていなかったり、1人の人物が1色で塗ってあったりするけど、観終わったあとに1人ひとりのキャラクターが“生きている人”として記憶に残る。それが本当に素晴らしいと思いました」と称賛した。
通常のアニメーション作品とは異なり、絵・アニメーションの制作よりも先に、学校の教室などスタジオではない場所で役者の声を録音したという。マルタは「ダイレクトにリアルな音を録りたいと考えました。絵があるとそれが制約になって、役者が自由に演じることができないと思ったんです」と意図を明かす。ローデンバックが続けて「そのあと、音だけで編集して映画を作りました。それをもとにアニメーターが作画をしていったわけです。今回の作品で“演技”というのは2段階あって、1つ目は声を収録した役者たち、もう1つは音のみの情報から想像して描いたアニメーターたち。彼らには『脚本に書かれたことをそのまま実行する必要はない』と伝えて、キャラクターごとではなくシーン丸ごと作画・演出を任せました」と説明した。
役者の声とアニメーションの関係性について、マルタは「(劇中に登場する)おまわりさんのセルジュと声を担当したエステバンは、まるで顔も体型も違う。でも彼がとてもいい演技をしてくれたので、収録後、もともとのキャラクターデザインから顔を描き変えました。これはこういう作り方でないとありえなかったこと」とエピソードを披露。続けて「フランス革命の歴史に言及するシーンの“首を切る”というしぐさは、担当アニメーターが発案したもの。それを観たときに『アニメーターたちは役者なんだな』と改めて感じました」と述懐した。
制作に携わったアニメーターは7人ほど。ローデンバックは「働いていたスペースは狭くて、みんな隣の人がどんな作業をしているのか見られるし、すぐに話ができる状態だった。そうした環境も自由さを助長したのだと思う」と分析する。片渕は「技法自体が全体を通して共通しているし、人物像も統一されている。かなり密接にコンタクトしながらやってたんだろうなと。だからこそ色使いに関して大胆な指示ができるし、ある種の理想が実現されていたんだと思う」と口にした。
最後に片渕は「日本のアニメーションとはまた別の新しい感覚。2人が自由を体現する作り方をしているので、観客の皆さんも『こんなことやっていいんだ』と自分の中の興味を広げていってほしい」と呼びかける。ローデンバックは「大量のアニメーションが作られていてグラフィックの文化も豊かな日本で、フランスの映画が公開されることはラッキーだと思っています。今日のように大人のお客さんばかりの前で上映することはフランスではなかったので、とてもうれしかったです」と感謝を伝えた。
「リンダはチキンがたべたい!」は4月12日より新宿ピカデリーほか全国で順次公開される。
massando @koiddon
今晩に催された『#リンダはチキンがたべたい!』の監督トーク付き先行上映会の詳細なレポート。オススメです!
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