映画「
「性暴力と心の傷」をテーマとした本作は、三島が向き合い続ける47年前の“ある事件”をベースにしたオリジナル企画。北海道・洞爺湖の中島、東京・伊豆諸島の八丈島、大阪の堂島を舞台に、ストーリーの重要な存在として登場するれいこをめぐる心の葛藤が描かれる。愛する恋人とどうしてもセックスができないれいこを前田が演じた。
三島は「このメンバーの顔を見ると感極まっちゃって……。映画の力を信じてここまで生きてきて、監督になり、映画を作ってきました。映画を愛しているキャストの皆さんと、映画を信じてくださっているお客様と、今日という日を迎えられて本当に幸せです」と涙をにじませる。前田は「すごく濃い時間を過ごして1年ぐらいが経ちましたが、監督の安心している顔を見られてうれしい」と笑顔に。彼女は完成した映画について「洞爺湖のパートから始まったとき、海に飛び込んでいくような気分になりました。そのまま泳いで行って最後はすごく気持ちよく息継ぎができるような映画。1つひとつのパートが終わって始まる、という感じではなく、どんどん感情が奥に入っていった」と感想を口にした。
トランスジェンダーのマキ役で出演したカルーセルは、洞爺湖での撮影について「初日は大雪でストップして、マイナス20℃の中で移動も大変だった」とぼやきつつ、「舞台挨拶のために先日また洞爺湖まで行ってきました。そしたら、まあピーカン! あまりにきれいでした」と述懐。カルーセルと共演した片岡は「私は偶然、カルーセルさんのことを気にしている時期があったんです。その半年後にもらったオファーにカルーセル麻紀の名前があって『このタイミングで会えるの!?』って」と興奮したことを明かす。この2人に関して三島が「物語上は複雑な関係なのに“相思相愛”になってしまった」と話すと、カルーセルは「2人でしゃべっていると、監督から『仲良くしないで! カルーセル麻紀に戻らないで!』って怒られたの」と笑い交じりにエピソードを披露した。
八丈島のパートに出演した、“自然とマナー。八丈島 大使”でもある哀川は「本当によく行きますし、すれ違う人が知り合いだったりするので、芝居以外にも町の雰囲気が出ているんじゃないですかね」と述べる。原田も負けじと「僕も八丈島で温泉大使をやらせていただいておりまして」と伝えてキャスト・観客の驚きを誘い、「温泉は7カ所、いいところにあるんですよ。ぜひ八丈島へ」とアピール。哀川・原田と共演した松本は「最初に監督とお会いしたときに、セリフにも出てくる『人間は全員罪人だ』っていう言葉について、どういう背景があるのかなど深く話し合いました」と回想し、哀川は「実際そのセリフのときは、どんと胸に刺さりましたよ」と称賛した。
イベント後半には、キャストが本作の見どころを語る場面も。前田は「ベッドの上でダンスをしたところ。シリアスなシーンが多い中『突然……踊るの?』と思ったけど、唯一れいこが笑顔だったり、自分の気持ちと向き合い始める大事なシーンでした」とコメント。片岡は「おせちを食べるシーン。本当においしくて、美しくて」と振り返るも、カルーセルが「なますを何回も食べてすごいかわいそうだった。でも本当においしそうに食べるから、すごい女優さんだなって」と声を張った。なお、このシーンで使われたおせち作りは、伊丹十三監督作「たんぽぽ」にも参加したフードスタイリスト・石森いづみが担当している。
最後に、本作がイタリアの現地時間4月24日から開催される第26回ウディネ・ファーイースト映画祭のコンペティション部門に出品されることが発表されると、会場には拍手が起こる。三島は「私たちの手から離れて、皆さんのもとへ旅立っていきました。誰だってきっと傷みたいなものがあるかもしれませんが、人生は続いていくんだなと思っています。また映画館で会いましょう」と呼びかけ、舞台挨拶は終了した。
「一月の声に歓びを刻め」は全国で公開中。
おおとも ひさし @tekuriha
前田敦子「一月の声に歓びを刻め」は「すごく気持ちよく息継ぎができるような映画」 - https://t.co/G9DkAIKNZp