A24が北米配給権を獲得したオーストラリア発のホラー映画「
本作は高校生のミアが、呪物の“手”を使った降霊術のスリルと快感にのめり込んでいくホラー。同級生たちの間では、その不気味な手を握り「トーク・トゥ・ミー」と唱え、霊を体内に招き入れる“憑依チャレンジ”が流行していた。90秒以内に手を離さなければ自身の中に霊が居座り、支配されてしまうという降霊術。母を亡くした痛みを抱えるミアは体験したことのない高揚感を覚え、たちまち降霊術の虜になっていく。
ホラーコメディ動画を投稿するYouTubeチャンネル「RackaRacka」のクリエイターとして知られるフィリッポウ兄弟。本作で劇場用長編映画デビューを果たした理由をダニーは「もともと長編映画を作りたかったんだ。YouTubeは映画を作るための準備段階。自分たちのスタイルを探すための手段だった。そして2018年に映画に集中していこうと決めて、脚本を書き始めました」と振り返る。さらにYouTubeでの活動と映画制作の関連については「YouTubeは、いろんなテクニックを学ぶ場所。スタントを試したり、エフェクトやセットを作ってみたり。ちょっと実験的にトライする。この映画では、もっと自分たちのことをより深く表現したかった。YouTubeではなるべく派手に注目を浴びようとして、深く自分を表現することはできない。できるだけカオスに、物を壊して、血を出すから、やり方が違いますね」と説明した。
観客からはYouTubeの動画と映画の演出を比較する質問も。YouTubeは「暴力的でゴアな演出が多い。映画には静かに怖がらせる演出もあった」と指摘されると、ダニーは「ホラー映画でありつつドラマ映画を作ることを目指していました。そのバランスを考えました。実はもっとバイオレントで、かなり削除したシーンも多いんです」と明かす。ミアが目撃する、ある少年が陥る残酷な描写については「映画では15秒ですが、もともとは2分30秒もあったんです。ヒドすぎるということになって減らしました。ホラーのためのホラーというよりは、キャラクターの視点から観ていて怖いと思わせることを目指しました」と説明。マイケルもうなずき「スプラッター映画を作りたかったわけじゃないんです」と補足した。
重要なモチーフに手を選んだ理由を問われると、ダニーは脚本の執筆時を回想。「初稿では呪われた物を何にするか決められていませんでした。書き終わってから読み返してみると、脚本の中には、手や触れること、人間同士のつながりがたくさんあった。そこでホラーのシンボルを何にするか考えたとき、手を思い付いたんです」と答える。灰色の手は文字のようなもので埋め尽くされており、ダニーは「この手の歴史を表したいと思いました。世界中のいろんなところを回って、今は映画の子供たちのところにたどり着いたんです」と話した。
Q&Aでは映画のラストに触れる質問も。詳細は伏せるが、ダニーは「自分の悪意の犠牲になっていく話を書きたかった。僕がホラーを書くときは、自分が怖いと思うもの、恐ろしいものを広げていく。自分にとって最悪な結末を書いた」と構想時の原点を振り返り、マイケルは「ミアは最初から父親とのつながりを拒絶している。彼女はずっと間違った決断をしているんです」と語る。影響を受けた作品として、映像のトーン面で「殺人の追憶」、ホラー映画におけるキャラクター性という意味で「ぼくのエリ 200歳の少女」などのタイトルを挙げる場面もあった。
「ミッドサマー」や「ヘレディタリー/継承」を抑え、A24のホラー作品史上最高興行収入を記録した本作。すでに続編「Talk 2 Me(原題)」の製作が決定しているが、これとは別にすでにファウンドフッテージ形式の前日譚も撮影済みだそう。観客からその内容について聞かれると、ダニーは映画の冒頭に登場するダケットという人物の話になることに触れ「ソーシャルメディアにフェイクのアカウントでアップしたんですが、あまりにもバイオレントですぐに削除されてしまった(笑)。これからどうしようかと考えているところです。携帯に入ってますけどね。そのあたりに座って、みんなで一緒に観ようか」と冗談交じりに語っていた。
「TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー」は12月22日より東京・丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国でロードショー。
今成夢人Yumehito Imanari @yumehitoimanari
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