フィリピン映画「Ang Pagbabalik ng Kwago」が「
2022年のサンダンス映画祭にて、ワールド・シネマ(ドラマ)部門特別審査員賞を受賞した本作。フィリピン映画界の巨匠と言われる映画監督だったレオノール・レイエスは、72歳になり借金や息子との関係悪化に悩みながら暮らしている。ある日脚本コンクールの新聞記事を目にした彼女は、未完のアクション映画のシナリオに取り組むことに。そんなとき、レイエスは落ちてきたテレビに頭をぶつけヒプナゴジア(半覚醒)に陥り、物語の中へ入り込んでしまうのだった。
フィリピン人として初めてロンドンのロイヤル・ナショナル・シアターで公演を行ったことで知られるシェイラ・フランシスコがレオノールを演じる。そのほかボン・カブレラ、ロッキー・サルンビデス、アンソニー・ファルコンがキャストに名を連ねた。YouTubeでは予告編が公開中だ。
監督・脚本を担当したマルティカ・ラミレス・エスコバルは「私は映画を通して人々に貢献をしたいのです。人生をもっと愛おしく思ってもらえるように」とコメント。フランシスコは「レオノールには超能力が与えられましたが、それはとても羨ましい話です。この映画を作る旅は、本当に楽しかったです」とつづっている。
「レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)」予告編
マルティカ・ラミレス・エスコバル コメント
マニラで生まれ育ちました。少し前のことですが、有名なアクションスターが、第13代フィリピン大統領に就任しました。当時6歳だった私は(政治経験のない)有名人が選ばれることに何の疑問も感じませんでした。それから数十年、さらに2人の「アクションスター」が大統領になったとき、私はこの不条理な現実に疑問を感じました。けれどその「不条理な現実」は「映画への愛」と重ね合わせれば、とてもすんなりと理解できました。
私たちがフィクションを愛するのは、フィクションは現実を曖昧にしてくれるからです。私が映画を見るのは、現実には決して存在しないような場所に連れて行ってくれるからです。本作は、自分が書いた映画の中に入り込んでしまう映画監督の話です。フィクションの中にしか存在しない人生に対するロマンチックな想いを形に表したものであると言えるでしょう。なので、もし私が崖から飛び降りる前に1本映画を作らなければいけないのなら「私と映画との関係性」をテーマにした作品を撮りたいです。私をいろんな場所に連れて行ってくれるうえに、私を正気のままでいさせてくれる、そんな映画です。
私たちは、いつも年配のマッチョな人たちに囲まれている、と思い始めたのです。なぜ、私たちの歴史の中で、何百本もの映画の中で、おばあさんのアクションスターがいないのだろうって。アクションというジャンルに、多くの人が影響を受けているように見えるのはなぜでしょう? アクションスターの一人が大統領になるくらいにね。映画の暴力にはドン引きします、しかし面白くもあり、そこが病んでいるところです。フィリピンでは暴力が普通であるかのように思われています。アクション映画は、武器も必要だし、血も必要だし、たくさんの人が死ななければならない。しかしそれは、私が取り組む方法ではないのです。本作では、おばあさんというレンズを通して、彼女を取り巻く問題や葛藤を、優しいアプローチで捉えようとしました。愛を通して、コミュニケーションを通して、ね。私は映画を通して人々に貢献をしたいのです。人生をもっと愛おしく思ってもらえるように。
シェイラ・フランシスコ コメント
レオノールには超能力が与えられましたが、それはとても羨ましい話です。
この映画を作る旅は、本当に楽しかったです。マーティはいつもクールで、周囲を勇気づけ、そしてポジティブでした。彼女の奇抜なアイデアと、オープンで協力的な仕事ぶりが私は大好きです。
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